「世界を塗り替える色」
「見つけたぞ、薄汚い“灰かぶり”のアンナよ」
感動の対面も束の間、突如として空から舞い降りたのは、純白の法衣を纏った男たち――王都の聖騎士団だった。 その中心に、一際豪華な杖を持った枢機卿が立っている。
「枢機卿……! どうしてここに!」 「貴様が生きていては困るのだよ。我が娘を『真の聖女』として君臨させるためにはな!」
枢機卿が杖を掲げると、空がドス黒い紫色の雲に覆われた。 彼が放ったのは、聖職者にあるまじき禁忌の闇魔法。
「消え失せろ! 【暗黒の・極大消滅波】!!」
津波のような黒い魔力が、俺たちを飲み込もうと迫る。 アンナが俺の前に飛び出した。
「彩人さんは逃げて! 私の魔力じゃ、もう防げない……!」 「馬鹿野郎、SEが納期前に逃げ出せるかよ!」
俺はアンナの背中を抱き留め、迫りくる黒い波を睨みつける。 ――分析(解析)。 視界に大量のウィンドウが展開される。
【対象:暗黒の・極大消滅波】 【色属性:#000000(絶対の闇)】 【脅威度:SS(即死)】
普通なら絶望的な状況だ。だが、俺には視えてしまった。 あの枢機卿の杖、そしてこの魔法の「ソースコード」に潜む脆弱性が。
「黒一色なんて、手抜き工事もいいところだぜ」
俺は右手をかざし、叫んだ。
「【色彩反転】!!」
俺のスキルが「黒(#000000)」の値を瞬時に読み取り、その対極にある色へと強制変換する。
カッッッ!!!
世界が白に染まった。 迫りくる闇の津波が、一瞬にして**「純白の回復光」**へと書き換わったのだ。
「な、なんだとォォ!? 我が闇が、癒やしの光に!?」 「悪いな。仕様変更だ」
降り注ぐ光は俺たちを傷つけるどころか、アンナの傷を癒やし、気力を充実させていく。 だが、枢機卿はまだ諦めない。さらに巨大な魔力を練り上げようとしている。
「おのれェェ! ならば、物理的に叩き潰してくれる!」
俺はアンナの肩を掴み、彼女の瞳を覗き込んだ。
「アンナ、仕上げだ。君の本当の色を取り戻す」 「本当の……色?」 「ああ。灰色なんて地味な色は、君には似合わない」
俺は意識を集中する。 アンナにかかっている呪いの核心、そのカラーコードを編集する。 狙うは、この世界に存在しない、俺だけが知る最強の色。
【対象:アンナ】 【色属性:アッシュグレイ(呪い)】 ▼ 【Edit:プリズム・プラチナ(#Ex.Rainbow)】
エンターキーを、叩き込むッ!
「世界を彩れ! 【覚醒】!!」
その瞬間、アンナの全身から虹色のオーラが噴き上がった。 灰色の髪は、見る角度によって七色に輝く白金へ。 くすんでいた瞳は、星空を閉じ込めたような宝石の輝きへ。
「力が……溢れてくる……!」
アンナがゆっくりと手を掲げる。黄金に変えた杖が、今は七色の粒子を纏って回転を始めた。
「いきます。……【聖極魔法・彩光の断罪】」
アンナが放ったのは、単色の光ではない。 赤、青、緑、黄――無数の極彩色のレーザーが幾何学模様を描きながら空を埋め尽くした。 それはまるで、夜空を焦がすオーロラの暴風雨。
「ひ、ひいいいっ! 目が、目がぁぁぁ!!」
枢機卿と騎士団は、そのあまりに美しく凶悪な光の奔流に飲み込まれ、一瞬で空の彼方へと吹き飛ばされた(※殺生はしていない、キラキラと星になった)。
***
静寂が戻った森。 そこには、元の灰色の髪……ではなく、淡くピンクがかった銀髪へと変化したアンナが立っていた。呪いが解け、本来の美しい姿に戻ったのだ。
「彩人さん……」
彼女は振り返り、涙ぐんだ笑顔で俺に抱きついた。
「ありがとうございます……! 私、生きててよかった……!」
【対象:アンナ(解放されし聖女)】 【色属性:サクラピンク(恋心・極大)】 【好感度:MAX(限界突破)】
ステータスウィンドウを見て、俺は思わず吹き出した。 世界最強の聖女様は、どうやら俺専用のヒロインになってしまったらしい。
「さて、これからどうする?」 「どこへでも! 彩人さんが色を塗ってくれるなら、どんな世界だって怖くありません!」
俺は彼女の手を握り返す。 社畜として灰色の日々を送っていた俺の人生は、この異世界で最高にカラフルな物語へと書き換わった。
俺と彼女の「色」を巡る冒険は、まだ始まったばかりだ――。
どもー、作者です。 最後まで読んでくれてあざしたー。
いやー、完結です。全2話。 スピード感が大事かなと思って、勢いだけで突っ走りました。
今回の主人公の彩人くんですが、「色変えるだけで最強になったら楽でいいなー」という、僕の願望が120%詰まってます。 RGB値いじれるとか、普通に考えたらバグ技ですよね。バランス調整? 何それおいしいの? って感じで書きました。
ヒロインのアンナちゃんも、最後はゲーミングPCみたいに七色に光らせることができて満足です。やっぱり極彩色はロマン。
続きは……まあ、気が向いたら書くかもしれませんし、書かないかもしれません。 とりあえず二人は幸せに暮らしました、ってことで!




