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一 無能が追放されたので暗殺してみた

「ルシファー! お前をここから追放する!」


「うーす」


 あの依頼を受けてから数日後の夜。

 

 ここはとある森。


 俺はある部隊に潜伏していた。


 そして現在、そこから追放されそうになっている。


「全く。我々の協力者として勧誘したのに、この始末とは」


「さーせん」


「魔術は使えない、荷物持ちはろくにできない、すぐに疲れる」


「へーい」


「聞いているのか!」


 部隊のリーダーが、俺の胸ぐらを掴む。


 一方、他の者たちはそれを肴に宴会中だ。


「だいたい貴様は」


 口を開けば無能だの、穀潰しなど言いたい放題だな。


 事実に基づいた正論なので、反論はしないけど。


「聞いているのか!」

 

 これらの不甲斐なさに対し、俺の中に罪悪感が。


 なんてものはない。


 だって


「貴様のような男! 我々、暗殺騎士団の部隊には必要ない!」


 この部隊は皆さんご存知、あの騎士団なのだから。


 どれだけ迷惑をかけようが、どれだけ被害がでようが関係ない。


 こいつらが不利益を被るほど、暗殺ギルドが潤うし。


「さーせん。さーせん」


「なんだその適当な返事は! これだから無能は」


 敵対者をおちょくるのは楽しい。


 仕事でたまったストレスが発散される。


「貴様は一体何をしに来たのだ!」

 

 目的か。


 依頼があったから、この部隊を暗殺する。


 あとは、数日前に受注した暗殺依頼の準備だな。


 依頼のターゲットはマモン。


 どうやら奴は、ベレトという国にいるそうだ。


 そこは厳重な警備があり、簡単に潜入できない。


 奴を暗殺するには、手順を踏む必要がある。


 そのため、まず俺はこの部隊に潜伏している。


 ここには、ベレトに入るための人員が揃っているから。


 こいつらと入れ替わることで、依頼への第一歩を踏み出すことができる。

    

 少々回りくどい。


 いっそのこと、ベレトには強引に攻める。


 という案もあったが、却下した。


 理由は、俺たちがギルドという組織だから。


 無闇に動いて、無関係の人間が傷つけば信用はがた落ち。


 どんな報復や、苦情が来るかわかったもんじゃない。


 よって、入念な準備や、無駄な被害を出さない計画は必要なのだ。


「貴様のような無能は、さっさと出ていってもらいたい!」


「へーい」


 作戦の確認をしていたら、お小言が終わったようだ。

 

 しょせんは騎士団の戯言。


 何も入ってこなかったな。


「……そろそろか」


 この場に闇夜の光が照らされる。


 森が静寂と眠りの風を奏で始めた。


 俺たちとこいつら以外に気配はなし。


 ことを始めるには、良いタイミングだ。


「出ていけ! お前は一人でここから帰るんだ!」


「うーす。あ、そうだ。出ていく前に」


 俺は、部隊の背後にある荷車を指す。


「あの中に忘れ物をしたんだ。取ってきても?」


「糞が! 早くしろ!」


「へーい」


 俺はそこに向かって歩き出す。


「到着と」


 それは大きな箱状。


 外から開けない限り中身は見えない。

 

 これは、ずっと俺が運んでいた物。


 ここには大事な、大事なものが隠されている。


 コツコツ


 それを三回、軽く叩いてみる。


『……』


 中から三回、小突く音。


 この返し。


 準備完了だな。


「おい」 


 リーダー格の男を呼び寄せる。


「なんだあ?」


 気分が良いからなのか、奴はすんなりとこちらにやってきた。


「どうした? 残りたいと嘆願か? ん? それなら頭を下げて」


「いや、これなんだけど」


「これ?」


 男が訝しそうに、荷へと首を伸ばす。


 油断しきってる。


 やるなら今だ。 


「これと、はがっ!?」


 俺は男の口を抑え、


「ご……」


 ナイフで一突き。


「……」


 男は即死した。


「いいぞ。頭は抑えた。あとは好きにしろ」


『『『はい』』』


 荷車から三つの影が飛び出す。


 それらは、他の騎士団へと忍び寄る。

 

 同時に、俺は死体を空間へと押し込む。

  

「さてと」


 振り返り、今の惨状を眺める。


「「「おりゃあああ!」」」


 ラスト、リリス、ウリエルが騎士団を蹂躙していた。


 三つの影の正体は彼女たち。


 俺同様、彼女たちもここに潜伏していた。


 本当は一人でもよかったんだけどな。


 けど、あいつらがどうしてもというから同行を許可した。


「にしても」


 あーあ。


 宴会で酒が回ってるせいで、騎士団は機能停止。


 彼女たちの動きに着いていけてない。


 こりゃ出る幕はなしと。


「んじゃまあ。ニートとして、一休み」


「ひいい! 助け」


「できる雰囲気じゃないか」

 

 俺は、こちらに逃げてきた騎士を斬る。


 あいつら、雑に戦うから討ち漏らしが出てやがる。


 ちらほらここから逃げ出してる奴もいるし。


「まだまだ修行が足りないみたいだな。はー、面倒くせえ」


 俺は散った騎士団の殲滅に取りかかる。


 えーと。


 この仕事が終わったら、お風呂に入って……うわ。  


 マモンの暗殺依頼。明日の朝かよ。


 まともに休める暇がないぞ。


 社蓄ならぬ暗蓄は大変だあ。

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