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五 無能が暗殺ギルドのマスターしてます

「マスター! 休日はどっちの服がいい?」

「マスター! ペンが壊れたので帰ります」

「マスター! なんでもないでーす」


「マスターマスターうるせえ。順番に対応するから待っとれ」


 ここはアガレス城、改め冒険者(暗殺)ギルド。


 俺はギルドマスターとして、職員の少女たちに対応中だ。


 ここでの俺の主な活動は二つ。


 一つは仲介役。


 困りごとを依頼する人間と、それをこなす外部の冒険者。


 その橋渡しだ。


「ギルマスのアンちゃん!」


 俺の前に老人の男性。


 その手には袋。 

 

 依頼人だな。


 どうやら、依頼完了の報酬を持って来たようだ。


「これ!」


「おー、近所のおっさんか。どうも、っておい。足りんぞ?」


「つけで頼む! 酒を買う金が厳しくて!」


「は? おい待て。そんなシステムうちには。はあ……逃げやがった」


 あとで、足りない分は絶対徴収する。


 覚えとけ。 


 とまあ、これが一つ目の仕事だ。


 そこそこやりがいがあるとは思っている。


 けど、これはあくまでイメージアップ。


 隠れ蓑にすぎない。


 本命は、裏の二つ目。


 それは暗殺依頼だ。


 表では冒険者の仲介をしつつ、裏では暗殺を行う。


 それがここの正体だ。


 そんなギルドを立ち上げて数年。


 これらの活動を経て、ここはそれなりの組織となった。


 初めはどこかしらで破綻すると思っていた。


 けど、そうはならなかった。


 ギルド職員。


 昔救助した少女たちが有能で、上手く行き過ぎたのだ。


「「「マスター! マスター!」」」


「押すな。依頼書を破くな、服に落書きするな、勝手に早弁するな」


 俺はギルド職員の少女たちに囲まれていた。


 この状況を見る人間はいつもこう言ってくる。


 ハーレムで楽しそう。


 成り上がれてよかったなって。


 どうもどうも。


 なわけねえだろ。


 大変なのが見えないのか?


 確かにこの仕事を初めてから、生活に困ることは無くなったさ。


 けど、その代償として苦労の連続。


 過労なんて可愛いレベルの重労働。


 まあ裏表で仕事をやってればそりゃな。


 栄光の裏側には犠牲ってやつ。


 正直、ここまで苦労するなら、楽で貧しい方がいいと思ってる。


 こんな死と隣り合わせの生活は望んでない。


 だいたい、俺が目指しているのはニートなんだぞ。


 それがどうして、ギルド運営に携わらないといけないんだ。


 成り行きとはいえ、意味がわからん。


「やっと終わった。仕事やめてー。あーつまんねー」


「ルシファー!」


 ギルド内に響き渡る威勢の良い声。


 目の前に、さっそうと現れたのは銀髪少女。


「ラストか。どうした?」


「緊急依頼!」


 真剣な顔つき。


 どうやら真面目な話みたいだ。


「内容は?」


「……暗殺騎士団が現れたよ」


 ラストが声を潜める。


 ということは暗殺の依頼だな。


 ターゲットは暗殺騎士団、か。


 そいつらはマスターとやらを中心に、世界を支配する秘密結社だ。


 主な本拠地は不明。


 俺とは無関係の存在。


 というわけにはいかない。


 理由は、向こうの目的がうちの職員たちを奪うことだから。


 魔王の一族だからなんだっけ? 


 よくわからないけど。


 まあそれに対抗すべく、うちは向こうと抗戦。


 結果、現在に至るまで争いが続いている。

 

 いつ決着が着くかは見通しが立ってない。


 けど、一つわかることがある。


 それはこいつらのせいで、俺が仕事をやめられない。


 下手にここを去れば、ここにいる少女たちが危機に陥るから。


 そんなの知るか。


 知らん顔して逃げてやる。


 と、一時は考えた。


 けど、俺はそうしなかった。


 まあなんだ。


 こいつらとはそこそこの仲。

 

 悲しい思いをされるのは、色々あれというか。


 ある程度落ち着くまでは、面倒見るのが義務というか。


 とにかくなんだ。


 暗殺騎士団は俺たちの敵。


 それでいい。


「場所は?」


「近くの廃墟だよ。そこに奴らが潜伏してる」


「なら、準備が終わり次第暗殺しろ。俺はだらだらするから」


「いーから! あの二人が待ってるから来て!」 


 あの二人、というと俺の弟子たちか。


 ラストも含め、あいつらは数年で、そこそこやるようになった。


 暗殺者としてはまだまだ未熟だけども。


「断る。俺にはギルマスの仕事が」


「そんなのは帰ってからでもできる! ほら、いくよ!」

 

 ラストから手を引かれる。


 勢い強さから、振りほどくことが出来ない。


「あ、おい」


「ほらほら! 依頼はもう始まってるよ!」


「ったく、お前は本当にしょうがねぇな」


 俺たちは、依頼のあるとされる場所まで向かって行った。


 まあ出る幕はなさそう。


 のんびりと休憩させてもらうか。

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