7月11日
本作はフィクションです。登場する地震、災害、避難行動、自衛隊・警察・行政機関などの描写はすべて創作に基づいたものであり現実の事象・組織・人物との関係はありません。
公的機関の対応を批判・揶揄する意図は一切なく、人間ドラマとしての側面を描いたものです。
7月11日(日) 少し天気が悪いです。
ほのかちゃんが、また頭が痛いって。しずるお兄さんもあんまり元気じゃありません。でも、あさやお兄さんが、わたしがいたら2人とも元気になるって言ってました。だから、今日はわがままをいって2人といっしょにいました。わたしが楽しいだけだったけど、しずるお兄さんが少し元気になりました。
ほのかちゃんは、お母さんと会いたいみたいです。
-----
曇り、と言うより、煙っているという天気だった。黄砂か、化学物質かは分からないが、なんとなく晴れきれない天気に気分は重くなる。なのにはしゃいでいる教授を見ていると、本当にこの人は元気だなと関心が湧いてくる。
「その名も『終末調査隊』!
どうだい静流くんも一緒に!」
「いえ、遠慮しときますね」
「ほら、教授。言ったでしょう?
ここの人らは真面目だから頷かないって」
どうやら教授や鹿子は、離別した自衛隊が集まった拠点からここまで歩いて来ていたらしい。そしてその離別した自衛隊の自衛官達を集めて『終末調査隊』だなんて組織を組みしている、と。班長がどういう事だと頭を抱えていたが、家族がどうなっているのかを見て廃人同然になっていたらしい彼らのことを引っ張っていてくれた、と聞いてなんとも言えない表情を浮かべている。「助かった」と「危ないことをするな」の間のような言葉をもごもご口にしていた。
「彼らには世話になったからな、
私としてはきちんとお礼もしたい。
別に彼らを追い出したわけじゃないんだろう?」
班長の言葉を待たない教授が言う。
「それは、…そう、だな。
朝哉、お前は彼らをここに呼ぶのか」
班長は少し躊躇しているようだった。
「嗚呼、バラけていても食料の取り合いになる。
なら仲間として受け入れていた方がいい」
『取り合い』、の言葉に周りは少しざわつく。そうか、そうなるよなと一花は少し納得した。どの道、輸入も生産も出来ない日本じゃ食料は限られてくるのだから群れが違う同士がぶつかれば取り合いになる。
それが、見た事のある元同僚だと少しやり辛い。
「うむ、だが…」
歯切れの悪い班長に教授は眉を顰めて教授をじっと見つめている。言いたいことは分かる。
「俺は、彼らに「出ていけ」と言った。
戻ってきてくれるだろうか」
現場で離脱する人間を相手に、班長は「そうか」の一言で済ませていた。それが彼にとっては「出ていけ」と同意義で。拒絶した彼らがここに、自分の元に戻ってきてくれるのか分からないのだろう。一花は「きっと大丈夫です」とは言いきれない。家族が居なくなったことを直視して不安定になった人間をここに連れて来て、問題を起こさない可能性が絶対にないとは言いきれないからだ。
「歪屋班長」
御子柴も、少し顰めた顔で班長に呼びかける。
「ふむ、禍根がある、と?」
「禍根という程では無い」
班長は真っ直ぐにそう言い切ると、教授はに、と笑う。大胆不敵にも、機嫌がいいようにも見えるその顔は、悪どい、というのに相応しいかもしれない。
「では大丈夫だな!私が案内しよう。
護衛は静流くんでいいぞ!」
「はぁ?」
「静流お兄さん、疲れてる?」
周りをうろうろとしている舞に、一花は疲れた顔を隠すように「そんなことは無いよ」と笑って見せた。
「ほんとう?
あさやお兄さんがつかれてるって言ってた」
「………、あの人、…」
気に入られているのか、なんなのか。
「だからね、今日はわたしとあそぼ!
あさやお兄さん言ってた、
今日はしずるお兄さんおやすみだって!」
やる気に満ち溢れた舞に押されて、一花は「うん」と言ってしまった。そのまま穂花が居る場所へと連れて行かれて、三人でおままごとをさせられた。
割と楽しかった、というのはおままごとで『じえいたいさん』をやった一花談だ。
再度申し上げますが、これは妄想の産物です。
実在するなにかしらとは全く関係がありません。