蛇足でしかない話
本作はフィクションです。登場する地震、災害、避難行動、自衛隊・警察・行政機関などの描写はすべて創作に基づいたものであり現実の事象・組織・人物との関係はありません。
公的機関の対応を批判・揶揄する意図は一切なく、人間ドラマとしての側面を描いたものです。
一花の母親は遺体で発見されたらしい。
正確に言うと、『母親に似た遺体』が確認された。電気も通っていない今、遺体安置所なんてものはなく、その日に発見された遺体は腐って疫病の元になるのを防ぐためにすぐに火葬される。だから、一花が目を覚ました時、その遺体はもう骨しか残っていなかった。
「お兄さん、つらい?」
舞がそう問えば、一花は首を横に振る。
「大丈夫、大丈夫だよ。
俺が見つけてあげられなかったことが残念だけど」
骨壷も全員分は用意できない。だから、明日にでも誰のものかも分からない骨と一緒に埋葬される。それが悲しいようで、でも夫を失い廃人同然だった母親には丁度いいのかもしれないと思う自分がいた。
そう思わなければやって行けない。
「俺は、悲しくないんだ」
噛み締めた歯が、ギチリと音を立てた。
-----
7月14日(水) しずるお兄さんが起きました
お兄さんは落ちこんでいるみたいで、いつもより元気がありませんでした。さみしそうで、声をかけたけど今日は遊んでくれませんでした。
再度申し上げますが、これは妄想の産物です。
実在するなにかしらとは全く関係がありません。