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だがナジルにはまだこちらに言いたいことがあるようだ。


俺に対し、この件で頭を下げ言うことを聞くということが、


なぜか彼には非常に我慢ならないことだったようなのだ。


「先輩、あんた今の件で、俺に言うこと聞かせたぞヤリイとか思ってるんだろうけど、


一つあんたに言っておくわ。


俺はそのへんの連中と違って選ばれた人間なんだ。


あんたにはわかんないんだろうが…


まあ、あんたにわかるように、その証拠を、特別に見せてやる!」


ナジルはそう言い放つと、ポケットをゴソゴソやりはじめた。


なんだろうな。ポケットに入る程度の証拠なんかな…


ナジルが手の平を上にしてなにか差し出したので見たら、


小さな金属の四角い板に、文字や模様が刻まれているものだった。


「読めるか?」


いや、読めるどうこうの問題じゃあない。ナジルが差し出しているのは、子供用菓子のおまけについてくる玩具だった。


なんだ?コレクターか?レアものでも見つけて自慢したいとか?


「目をかっぽじってよく見ろ!これは俺の家の近くに隠されていたのを発見したんだ、この俺が、この手で!


これは、『伝説の勇者の印』そう書かれているプレートなんだ。


プレートの裏には、これを見出した者は勇者となる運命である、とそう刻まれているんだあ!


わかるか?この意味が。


そう、この俺は、勇者となる運命なんだ!」


…これ、数年前、俺がここで勤めはじめる前の食玩だな。


確か、当時、勇者がこの世にあらわれた、そういう噂が流れた。


勇者はいつの間にか魔王を倒し、人知れず世の中を救った。噂の内容はそう続く。


そして便乗した勇者関連のグッズものは、結構流行っていた。この食玩はその時のものだ。


当時、別に魔王なんかいなかったし、魔物なんかも、この界隈には出なかった。


だが噂は噂を呼び、なぜか勇者とやらが大人気となったのだ。


なんというか、人々が娯楽に飢えていたのかもしれない。


少し離れた町の冒険者ギルドに、やたらに強い新人があらわれた話が膨らんだのだ、と言ってる連中がいるが、おそらく本当のところは、そのあたりが正解なんだろう。


ナジルだってその当時は、勇者の話は聞いたりしたんだろうが、


この食玩は、きっと見たことなかったんだろうなあ。


ナジル、子供がポイしちゃってたのをそのまま拾ったんだろう。


でも普通、これが玩具なのは、どう見てもわかるはずだよな?


俺をからかっているんだよな?ナジル、そうだよな?


これ、笑いを取るつもりなんだよな?


だがそのナジルを見ると、なんとも言えない得意そうな幸せそうな表情を浮かべているのだ。


「今のうちに俺に取り入っといた方がいいと思いますよ、レイオ先輩!」


…嘘だろ?まさか、本気だと…言うのか…


そこまで常識や判断力が無い人間が存在するとでもいうのか?この世の中に…


混乱しながらも、俺は、ついつい聞いてしまった。


「勇者目指すなら、なんでここに来てるんだ?


その場合、行く先は商業ギルドじゃなくて、冒険者ギルドなんじゃないのか?」


ナジルは怒鳴った。


「俺が間違って商業ギルドに来たとでも言いたいのかあ!


勇者みたいになりたいなら、冒険者ギルド!


そんなことは当然知っとるわ!


冒険者ギルド行って、このプレート見せて説明したら、馬鹿にされて追い出されたんだ!


俺は勇者なんだが冒険者ギルドには縁が無いらしいんだ!


もう変なこと聞くな!」

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