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「ナジルと申します、これから、よろしくお願いします!」


まだ二十歳そこそこに見える新人の若者が、まわりに頭を下げている。


商業ギルドの室内で朝礼をしているため、日中より職場の人は多い。


場にいる人達の中で、それぞれ順に自己紹介が始まっていた。


…やっと新しく入る人が決まったんだ…


先輩達が相次いで三名も辞めてしまったので、現在、かなり人手不足だ。


自分は二十代半ばをやや過ぎたくらいだ。


冒険者をしていたところ、世話になった人に人手が足りないからと頼まれて、この商業ギルドで働くようになり何年か経つ。


ちなみにその世話になった人物は、この前退職した先輩達のうちの一人だ。


先輩達が辞めた理由は、家庭の都合だとか、体調不良だという。


だがそんなに年ではなく、若い方ばかりなのだ。


まあ、事情はわかる。


人手が足りてるときでも忙しい仕事場だ。


滅多に休みが取れないしわ寄せが、いろんなところに来てしまったと言ったところだろう。


自分には恋人はいない。


仕事がここまで忙しくなければ、出会う機会もあるのかもしれないが、現状無理だ。


辞めた方達の穴埋めは、今のところ全て自分に負担がかかっているので、夜遅くまで残業ばかりしているのだ。


休日も返上なのでいつ倒れるかわからない。


上層部は面接を繰り返したにもかかわらず、採用したのはこの新人一人だけだ。


彼らの言いわけは、どんな人物が来るかわからないから、とりあえず残っている俺に、辞めた人間の仕事はやってもらい、


新人を一人いれるので二人でやるようにしてくれ、ということなのだ。


…三人辞めたんだけどな!

それを二人でやれと言うんだ!


さ・ら・に!


新人の指導も、こちらでしてくれと…


以前からやっている仕事も忙しい。自分は別に暇なわけではない。


新人には、こちらが抱えている仕事で、できそうな部分から、渡していけと指示されている。


従来の俺の仕事は、もちろん他の人は手伝ってくれたりはしない。


今思えば、これが決定している時点で、上層部には自分は好きに扱っていい人物だと判断されてることに気づくべきだった。


そして先輩達が一度に辞めてしまった真の事情にも、気づくべきだった。


おとなしく働いている人物は、上からしたら好き勝手できる奴と判断される。


しかし、それは後から気づいた話だった。


今思えばその時の対応は後悔しかない。


だがその時点での自分は、新人と共に頑張ろう、


そう思っていたのだった。

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