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「5バズり」考えるよりも先に動いてました

 次々と殺されていく配信者たちは、誰も彼もが折り紙付きの実力者ばかりだったはずだ。しかし、怪力による力任せの一撃も、稀有な才能による魔法も、奇想天外な戦闘スタイルも……あの白いフェンリルには効かなかった。


「く、くそっ……!」


 屍が散乱するその場に残っているのは、『アベンジャーズ』のリーダーのDOMANだけだった。呪いの符も、呪具もすべて使い果たした彼は、目の前の狼との圧倒的な差に震えが止まらなかった。──無論、彼の次は私に決まっている。


『人間よ、殺す前に貴様にもう一度問おう』

(しゃ、喋った!?)


 よっぽど力のある魔物なのだろう、人間の言葉を流暢に操りながら、フェンリルはDOMANに質問をした。


『私の息子を攫ったのは、お前か?』

「しっ、知らない!」


 震え上がるDOMAN。壁に追い詰められた彼を、フェンリルは今にも噛みつきそうな剣幕で睨みつける。それは身を潜めている私でさえも感じ取れるほどの、怒りと殺気に満ちたものだった。


『嘘をつけ、愚かな人間。貴様らは一体何処までやれば気が済むのだ? 私達はただ静かに暮らしているだけだ、ダンジョンの外に出て貴様らの同胞を襲う気など毛頭無い……なのに、貴様らは配信だバズりだ、そんなくだらないことのために我らを殺し、その屍を晒す!』

「ちっ、違う! 俺はお前の息子なんて殺ってない! ただ白い犬を斬っただけで……」


 フェンリルの感情、圧が一瞬消える。

 DOMANは話が通じたのかと一瞬安堵するが。──それは、間違いだった。


『──それは、私の息子だッ!』

「ぎゃああああああああああああ!」


 大顎を開いたフェンリルは、そのままDOMANを頭から齧った。思わず私は叫びそうになったが、仮にも彼は一流のダンジョン配信者だ。顎をこじ開けようと最後の力を振り絞り、未だに生きながらえている……だが、長くは持たないだろう。


(どうしよう、死ぬ、死んじゃう……!)


 ──逃げろ!

 ──DOMANを助けて!

 ──何言ってんだ馬鹿野郎!


 コメント欄が大きく荒れる、どうしようという感情の中に集団の目という要素が付け加わることで、私の心の中はカオスを極めた。どうしよう、どうしようと……そう、考えていた時には、私の身体は動いていた。


「そっ、そこまでだぁああああああああああ!」

『!?』


 私はもう、何がしたいのかがわからない。──でも。


「お前の息子は、私が助けた! ここにいる、今……私の手の中で生きている!」


 私の中の正義が、助けたいと叫んでいた。


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