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「3バズリ」初エンカウントはモンスターじゃなかった

 私は、ダンジョンに突き飛ばされた。

 入り口にはナイフを持った座間さんたちがいる。力づくで通ろうとすれば、配信の内容がグロテスクになるだけでは済まない。──逃げるように、本質的には死にに行く形で、私はダンジョンの奥へと足を進めた。


「……い、今第一階です。特に変わったこととかはありませんね、はい」


 座間さんから渡されたスマホに喋りかけることが、一種の精神安定手段だった。魔物や死体がゴロゴロ転がっているようなイメージを持っていたが、意外とそんなことは無かったのも救いだった。私はとにかく宝箱を探した。宝石を見つければ、取り敢えずは帰れるのだから。


 ──つまんねぇな

 ──魔物いねぇじゃん

 ──そもそもここほんとにダンジョン?


 まずい、このままでは駄目だ。座間さんから「戻ってくる頃にバズってなかったら殺す」って言われてるし……このままじゃ、誰も見てくれなくなっちゃう。


 なんとかしないと、そう思っていた私の目の前に何かが現れる。


「!?」


 驚いた私は仰け反り、腰を抜かしてへたり込んでしまう。スマホを手放さなかったのは座間への恐怖からかそれとも単純に強く握っていたからか……とにかく、コメントが五月蝿い。


 ──魔物か!?

 ──敵襲w

 ──大丈夫ぅ?


「……え?」


 しかし、私は直ぐに平静を取り戻した。なぜなら目の前にいたのは魔物でもなんでもなく、ただの小さな白い子犬だったのだ。


「怪我、してるよね……」


 ダンジョンに入ってから遭遇する生き物が、まさかモンスターではなく犬だったとは……なんともまぁ、ラッキーなものだ。あくまで不幸中の幸い、という意味ではあるけども。


「……」


 ブルブル震えている子犬を抱きかかえ、私はようやくホッとした気がする。この右も左もわからないような空間で、自分以外にも恐怖におののいている存在がいたのだと、思えたのだ。


「一緒に行こう、絶対……生きて戻るんだ」


 私の腕の中が落ち着くのか、白い子犬はそのまま暴れることをやめて大人しくなった。

 ひとまず、この子の傷をどうにかしよう。私は覚悟を決め、ダンジョンの奥地へと足を進めた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] なかなかよいぞ(^^) [気になる点] ナイフは捕まるから駄目。 パンチキックで腹部をねらうのだザマちゃん。
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