14 炎の道を行く(完)
「お母様! アリスちゃんがお母様は本当に男爵夫人なのって言っていたわ! お姫様みたいだって」
「えっ!? ……お、お母様は正真正銘の男爵夫人よ!? しかも、へ、平民上がりの!」
ぽかぽかと温かい陽気な昼下がり、私は娘のアナスタシアとともに庭で小さなお茶会を開いていた。
先週の伯爵令嬢のお茶会で、娘が意地悪を言ってきた王子に熱いお茶をぶっかけるという事件を起こしたので、お淑やかに過ごす訓練の一貫なのだ。
「これからは子爵夫人だけどな」
その時、突如アレンスキー家の家長が姿を現した。
「セルゲイ!?」
「お父様っ!!」
アナスタシアは大好きな父親に勢いよく駆け寄ってぎゅっと飛び付く。彼は嬉しそうに目を細めて愛する娘を抱き上げた。
「どういうこと?」
「あぁ、この前の魔物討伐の功績が認められて陞爵が決まった」
「凄いじゃない! おめでとう!」
「しょうしゃくって、なぁに?」
「爵位が上がるってことだよ。うちの家門は今は男爵だろう? それが一つ上がって、子爵になるってことさ」
「アナも、男爵令嬢じゃなくて、子爵令嬢になるのよ」
「すごぉい!」娘の瞳がキラキラと煌めく。「わたしも、お姫様になれる?」
「お姫様は……もっと先かしら?」と、私は困り顔で肩をすくめる。
「これからも頑張って、いずれはアナを皇女様にしないとな。……あの生意気な王子よりも上の身分だ」
「なに冗談を言ってるのよ、もう。王家に対して不敬だわ」
セルゲイと結婚して5年がたった。
彼はリーズ国の魔法騎士団として数々の功績を上げて、私は王立魔法研究所で魔道具の開発に勤しんでいる。
そして、私たちには大切な宝物ができた――娘のアナスタシアだ。
この子は、アレクサンドル皇家よりもストロガノフ家の血を濃く受け継いだみたいで、僅か4歳にして常に同年代の殿方たちの視線を独り占めするという恐ろしい子だ。
年頃になった時のことを考えると、今から恐ろしい……。
「俺は半分本気だ。お腹の子のためにも、もっと広い屋敷に引っ越したいしな」と、セルゲイはそっと私の大きなお腹をさする。
来月、新しい命が生まれる。
私たち幸せな日々を過ごしていた。
「私、窮屈な宮廷生活はもうこりごりだわ」私も自身のお腹に手を当てた。「それに、この子たちには自由に恋愛して欲しいから」
「いや……アナは絶対に嫁に出さねぇ……!」
「もう! いつかは覚悟を決めなさいよ!」
「はぁ…………」と、セルゲイは深くため息をつく。
愛娘の未来のことを今から憂いている彼がおかしくて、私はくすくすと笑った。
彼の腕の中で、なにも知らない無垢な娘が、なにやら落ち込んでいるらしい父親の頭を撫でて慰めている。
これが、私たちの平凡で平穏な日常。
それは、これからもきっと続いていくはず。
子爵夫人の私、その子供たち……時が流れても、皆がずっと幸福な生活を送れたらいいな。
元皇女なのは、ここだけの秘密だけどね。
以上でセルゲイのif編は終わりです。
長く間が空いてしまった中、最後まで読んでくださって本当にありがとうございました!!
あとは時間があれば本編終了後の登場人物たちの姿とか書きたい…!
こちらの作品は元気なキャラが多いので書いていて楽しかったです。
ちなみに作者が特にお気に入りのキャラは、グレースとアメリアでしたー!笑 ツンデレ好き(・∀・)ノ




