最強の組織に所属する私は王都にある学園に通います
ある夜の森の中。道という道が整備されていない森の中で人知れず実験を繰り返す研究所があった。その研究所はとある大国が極秘に運営を行っており、他国に負けない軍事力を手に入れるための実験が日夜行われていた。
しかし、その研究所からは火が燃え上げっており中からは研究員たちの悲鳴が聞こえていた。
「くそ!――どうしてこうなった!」
彼の名前はシュバイという。
彼はこの研究所の研究員であり、とある一大プロジェクトのリーダーを任されていた青年だった。彼は懸命に森の中を走り、なんとか追ってから逃げ切ろうとしていた。
……国が極秘に取り組んでいる研究に参加することにリスクはあるとは思っていた。しかし、国が本腰を入れているプロジェクトなだけあり警備は万全だった。自分でも知ってるような凄腕の冒険者や国が抱える暗部の組織。
そんな連中がたがか数人の集団によって一瞬で殺されてしまった。性格は世間的にいったらクズな奴らもいたが、今までも侵入者を何度も排してきた実績はあった。
「クッ……なんとか街まで逃げなれば……」
シュバイはいざという時の為に作られた脱出口から大事な研究品を持って逃げていた。これを持って逃げれば国からもいい印象を持たられるだろうし、なにより仲間は全員死んだのだから……この研究において俺の重要性は高くなるはず。
もうすぐ森を抜ける!だんだんと森の中から街の光が見えてきており、後10分もあれば街の入れ口に到着するだろう。
「……はぁはぁはぁ」
普段研究所にこもっているシュバイは運動なんてほとんどしていない。しかし、命の危機が迫ることで火事場の馬鹿力が発動したのか、彼は平常時の2倍ほどの速さで森の中を掛け抜けていた。
「はぁ、何とか逃げ切れそうだな」
とシュバイが正面を見てみると真夜の中で若干しか見えないが整った顔立ちの女が立っていた。
「うわっ!!誰だアンタは!?」
「ワタシ?ワタシの名前はカエデだよ」
カエデと名乗る女はよく見ると15歳ほどの少女だった。その少女は近づいてみると、少し垂れた目、薄い桃色の唇、程よく膨らんだ胸に引き締まった身体に美しい銀髪をサイドテールした美少女だった。
「君は何をしているんだい?」
シュバイはこんなところで話し込んでいる場合じゃないと感じながらも、ついついカエデに話しかけてしまった。
「……」
……しかし、彼女からの返事は返ってこない。不審に思い彼女の顔を見ようとしたところで、シュバイの思考はブッラクアウトした。
「うーん?おしゃべりはいいや。……普通に殺らせてもらったよ」
その少女の言葉をシュバイは聞くことが出来なかった。何故なら、彼はもう死んでいるのだから。
※※
「うーん?研究品はポッケの中かな」
どうもカエデです。ただいま、本日襲った研究所から逃げ出した奴を殺し、死体から研究品を探し出しています。
「お!あったあった!」
何でも、この研究所では貧民街とかからさらってきた子供で人体実験を行っていたみたいで、他国を征服するための軍事研究をしていたらしい。まぁ、仲間に聞いた話をそのまま言っただけなんだけど。
じゃ、皆のところに戻ろうかな
※※
「おーい!遅いぞカエデ!」
「ごめんヴェナート!」
今、私に話かけてきたのはヴェナート君。趣味は戦闘、特技も戦闘という超がつく脳筋男だ。しかし、性格と反対に整った顔立ちをしており、街を歩けばすれ違った10人の内8人ぐらいは振り返るだろう。
「お帰りカエデ……例の物はあった?」
「うん。あったよ~!」
「そうか、見せてくれ」
「ほら、これだよ!どうやって使うの?」
と私はさっき研究員の男から奪ったオレンジ色をしたカプセル薬らしき物を彼に渡した。彼の名前ヒューイといい――今回の襲撃を考案した私たちのリーダーだ。私とヴェナートとヒューイの3人は同じ街の出身で幼なじみだ。そんな私たちが旅をしながらメンバーを増やしていき作ったのがFREEDOMという組織だった。一応の目的は世界中のお宝をゲットすることや世界の謎を解明するというものだが……実際の所はそれぞれのメンバーが面白いネタ(これが欲しい、こんなことがしたい)を持ち寄り、3か月に一回の会議でやることを決めている組織だ。現在メンバーは9人で構成されている組織で、会議や任務に参加しなくても特に問題はない。ようは強い奴集めてワイワイ楽しく活動しているのが私たちだ。
今回はヒューイの提案で大国が秘密裏に開発していた軍事用の研究品がどんなものか知りたいということで、こんな森の中の研究所まで来ている。今回の参加メンバーは私とヴェナートとヒューイの3人だ。
「この薬を服用すると身体能力が3倍になるみたいだよ」
「へー!……私も飲んでみようかな!」
「……ただし3時間後に使用者は死ぬみたい」
「いや!?使えなくないその薬!」
「子供とか戦力にならない奴に効果を言わずに使わせるんだろう」
「うっわー、ゲスだね~」
でも戦力にならない人間を強化出来るわけだから、無理やり集めた一般人も戦力としてカウント出来るのか。
「そう言えば……カエデって学校に通うんだろう?」
とここでヴェナートがホットな話題について質問してきた。
「そうだよー!」
「何しに行くんだ?」
「学生生活に興味があっただけ……って言ってもまだ受かってないけど」
「カエデなら受かるだろ」
「まぁね、最悪強引でも入ってやるよ~」
「じゃ、カエデが学生になる記念に打ち上げでもするか!」
「おー!いいね!」
こうして、仲間たちと打ち上げをした私はカザフス王国にある王立シュヴァルツ学園の試験を受けるために、王都デルタに向かうのだった。