彼女との出会い②
***
「ーー、いてっ。」
プニッとした手で顔を殴られて目が覚めた。結構痛い。まるで猫パンチを喰らったかのような感触と痛みだ。いや、実際猫なのだが...飼い猫にしては珍しい黒猫だ。2年前に仕事の関係で海外で暮らすことになった両親が、当時中3だった俺に残した唯一の家族だ。ちなみに名前はヤミで性別はメスだ。そんなヤミに起こされて、俺は顔を洗いに洗面所に向かった。
鏡を見て思うが、俺の黒髪も捨てたもんじゃない。髪質なら昨日の黒髪美女に負けない、と思う。結局昨日は、下駄箱から出て行った後、黒髪美女には一度も会わなかった。普段通りに家に帰って、溜まっていたアニメを観てベットに入った。特に変わった事もない。強いて言えば、下の人が引っ越してきた事と、3ヶ月も前から予約注文していたフィギュアが届いたことくらいだ。
顔を洗い終えた俺は冷凍しておいたパンにバターを塗ってトースターの中に二枚突っ込んだ。あとはトースターに任せておけば朝食は完成だ。部屋に戻って制服に着替えていると、任せきりにしていたトースターに呼び出しされた。こうして朝食をとって俺の朝は終わった。
七階建てマンション、七階在住の俺にはエレベーターは必須だ。というわけでエレベーターに乗ったのだが、珍しいことに六階で止まった。このエレベーターには窓がない。だから俺は本当に驚いた。ドアが開くと昨日の黒髪美女が立っていたのだ。
「...はっ?」
「...‼︎」
目の前の彼女も流石に驚いていた。というより、俺に会ったことに対する嫌悪感の方が強いと思う。えっ?なんで??俺なんかした???とりあえず質問から始めよう。
「えっと、なんで俺のマンションに?」
「引っ越してきたのよ。」
「あぁ。昨日の。」
「そうよ。なんか文句あるの?」
えぇ...。なんでこんなに嫌がられてるの?汗臭くもないし服だって着ている。納得いかないな。美女に嫌われるのは避けたいところだ。
「前に会ったことありましたっけ?」
「ないでしょ?なんでそんな事...。なるほど、気付いてないのね。」
そうだ。気付いてない...そんなわけあるか!こんな美女、俺の脳細胞が忘れるわけがない。今まであった女性の中で1番美人だ。ん?ちょっと待て。今、会った事ないって言った?なんか言ってる事おかしいよな?どゆこと?
「気づいてない...とは?」
「そのうち分かるんじゃない?」
疑問を疑問で返した彼女は、いつの間にか一階に着いていたエレベーターから降りていった。これ以上の問答は無駄だと感じた俺は、カップラーメンが出来るくらいの時間を空けてエレベーターから出て行った。