表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

恋愛記録ファイル(学生時代編)

小学5年生の恋

作者: 涼

私が学生時代の頃は女の子にモテないどころか恋愛のやり方も超下手だったといえるだろう。告白してもフラれることが多かったが付き合った女の子もいた。女性に対して屈折した考えを持って見境なく手を出していた頃もあった。また、恋愛で友達に裏切られたこともあった。そういう私の恋愛記録をストーリーとして残しておこうと思う。学生時代の頃、私がどんな恋愛をしてきたのか、どんな出来事に遭遇してしまったのか、それが恋愛記録ファイル(学生時代編)のシリーズで、これから書いていくストーリーである。

■ 初めての告白

小学5年生になってクラス替えになった。初めて話すクラスメイトと新しい学校生活をしていくのは、楽しみもあれば不安もある複雑な心境であった。新しい担任の先生は時々冗談を言ったりしてクラス内は明るい雰囲気だったといえる。私は家族や親類、周りの人から変わり者と言われていたが、このクラスではやっていけそうな気がしていた。


一ヶ月ほど経った時、私はクラスメイトの女の子のことが好きになっていた。それは寺崎弘美という女の子で、背丈は小学生としては普通で、少し大きい目に小顔、見た目は特別可愛いという感じでもなければ、美人というわけでもなかったが、あどけない仕草や表情が私にとってとても可愛く見えた。これまでも可愛いと思ったり、少し好意を抱いていた女の子はいたのだが、今回はそれ以上に好きという感情が大きくなっていた。しかし、こんな私の気持ちを人に知られるのはとても恥ずかしくて誰にも相談できなかった。私の好きだという感情はどんどん大きくなっていき、私一人ではどうにもならなくなってきた。


ある日、寺崎弘美の家の近くに住んでいる野村達也に相談してみようかと考えた。とても恥ずかしくて自分の気持ちを明かすのには勇気がいる。しかし、もう一人で悩んでいることに限界を感じていたので、勇気を出してみようと思った。


「今日、野村の家に行っていい?話したいことがあるんだ」

「別にいいけど、学校では話せないことか?」

「うん。学校では話せないことなんだよ」

「わかった。じゃあ家で待ってる」


授業が終わって家に帰って野村達也の家に行った。部屋に入れてもらい向かい合っている。私はかなり緊張していたが、勇気を出して自分の気持ちを明かした。


「まさか寺崎のことが好きとは思わなかった」

「一人で悩んでたんだけど、もう限界で・・・寺崎の近くに住んでる野村に相談しようと思ったんだよ」

「お前、寺崎のこと相当好きみたいだな」

「うん。どんどん気持ちが大きくなっていってる」


私は寺崎弘美に対する気持ちを恥ずかしがりながらも話していった。野村達也はそんな私の話を親身になって聞いてくれていた。私は自分の気持ちを誰かに打ち明けるのは恥ずかしかったのだが、野村達也に相談して気持ちが少し楽になった気がした。


「お前の気持ちはわかった。このことは誰にも言わないし、この先どうすればいいか考えてみるよ」

「野村に相談してよかったよ。本当にありがとう」


それから数日後、野村達也が「いい事考えたから、今日、家にこいよ」と言ってきた。何を考えたのかわからなかったが、私は授業が終わって野村達也の家に行った。


「お前、寺崎に告白しろよ。もうその気持ちは限界だろ?」

「告白って、そんな・・・寺崎の前で直接言うなんて緊張するし、まともに話せないよ」

「寺崎の前じゃなくて、手紙で伝えるのであれば出来るだろ?ラブレターを書けばいいんだよ」

「ラブレターで告白か・・・それだったら出来るかも」


私は勇気を振り絞って自分の気持ちを手紙に書いた。これでいいかとその野村達也に見せて、修正してもらったりしながらラブレターは完成した。野村達也は「明日、僕がこのラブレターを下駄箱に入れる」と言った。おそらく私だとラブレターを出す前にためらってしまう可能性があるからだろう。次の日の朝、学校に行くと、野村達也がラブレターを下駄箱の中に入れたと言ってきた。それを聞いて私の心臓は破裂しそうにドキドキしていた。授業中、ラブレターを渡した寺崎弘美をちらちらと見るが、特に変わった様子はなかった。休み時間中も何事もなかったかのように普通に過ごしている。ラブレターを既に読んだのか、まだ読んでないのかわからなかった。結局、その日は何の変化もなかった。


次の日、私の下駄箱に手紙が入っていた。きっとラブレターに対する返事だと思いながらすかさず手紙をポケットに入れた。この手紙をいつ読むのかためらっていた。休み時間になりベランダの片隅で周りに人がいないことを伺いながら、手紙を読んだ。その手紙にはこう書いてあった。


---------------------------------------------------

好きになってくれてありがとう。すごくうれしかった。

付き合ってもいいよ

---------------------------------------------------


私の喜びは絶頂に達した。想いは届くもんなんだと思った。私は早速、寺崎弘美に次の土曜日、二人で会わないかと誘ってみた。もちろん答えはオッケーだった。しかし、その時、寺崎弘美の表情はあまり嬉しそうに感じなかった。


土曜日、待ち合わせ時間に寺崎弘美は現れた。私はドキドキしながら「こんにちわ」と声をかけた。寺崎弘美は困ったような顔をしながら「こんにちわ」と言ってきた。私はどこかに行って二人で話をしないかと誘ってみたが、寺崎弘美は「ごめんなさい。今日は早く帰らないといけないから」と言った。私は何のために二人で会ったのかわからなかったが、どうにも困った顔をしていたので「じゃあ、また今度」といってその場を去った。


週明け、いつものように登校すると私の下駄箱に手紙が入っていた。なんだろう?と思いながらポケットに入れた。休み時間、以前と同じベランダの端っこで手紙を読んだ。その手紙には次のように書いてあった。


---------------------------------------------------

好きになってくれたのはうれしかったけど、

付き合うのはやっぱり無理です。

ごめんなさい。本当は別に好きな人がいます。

でもあなたとの思い出をつくるため、

最初で最後のデートをしてあげたいって思います。

---------------------------------------------------


私はこの手紙を読んで好きという感情から怒りに変化した。私の気持ちに対して騙された感じがしたのと、最後の『最初で最後のデートをしてあげたい』という内容が頭にきていた。もはや好きという感情より怒りの感情と化していた。そして、この怒りをどうすればいいのか、一日中考え続けていた。


その日の夜、私の怒りの感情の矛先を好きだった寺崎弘美に向けることにした。手紙を用意して鉛筆を走らせていった。これまでの私の感情と、今の爆発している怒りの感情をぶつけるように手紙に書いていった。かなりキツく酷いことを書いたと思うが、この感情を伝えないと気が済まなかった。その次の日、寺崎弘美の下駄箱に感情をぶつけた手紙を入れた。その後、私の手紙を読んだと思われる寺崎弘美の表情は暗くなっていた。私のことを避けている感じもした。私は少し言い過ぎたかと思ったが、相手もそこまでのことをしたのだと思った。それからしばらく、寺崎弘美と口を聞くこともなくなった。それから私の感情も次第に冷めていって、人生初の告白はこんな結末で終わってしまった。



■ 初めての彼女

季節は10月になりクラス内の雰囲気にもかなり馴染んできた。告白の一件以来、まだ寺崎弘美と口を聞いていない。私はもう好きと言う感情も怒りもなくなっていた。


ある日、突然、別のクラスの女の子達4人が私のところへやって来た。私はその女の子達のことを知らなければ面識すらなかった。そしてその中の一人の女の子が私に話しかけてきた。


「突然だけど、ちょっと相談があるの。学校帰りにそこの公園に来てもらえない?」

「え?相談って僕に?」

「うん。今日の放課後、そこの公園で待ってるから来てほしいの」

「わかった。そこの公園に行くよ」


はじめて会って話した女の子達からの相談とは何なのか不思議に思っていたが、授業が終わって、私は学校近くの公園に向かった。どうやらまだ女の子達はきていないようだ。少し待っていると話しかけてきた4人の女の子達がやってきた。


「ごめん、お待たせ。掃除当番で遅くなっちゃった」

「それで僕に相談って何?」

「このことは内緒にしてほしいだけど、この子がね、河合君のこと好きなの。あなた河合君と友達でしょ?」


それは私が仲良くしていた河合隼人のことで、背丈は小学生にしては少し高く、さわやかな顔立ちにサッカー部のエース候補になっている。他の女の子からの人気もあった。そして、その河合隼人を好きだという女の子は二宮彩美といい、ショートヘアーにクリっとした大きな目、ネガティブで暗い感じだが、仕草があどけなく可愛いらしい女の子だ。


「河合とはクラスで仲良くしてるけど、それで僕は何をすればいいの?」

「河合君と彩美が両想いになれるように応援してほしいの」

「でも河合の気持ちがあるし、それに好きな人がいるかもしれないよ」

「じゃあ、河合君に好きな人がいるか聞いてほしい」

「それは聞いてみるけど、河合に好きな人がいたらどうするの?」

「その時は別のことを考えるから、とりあえずよろしくね」


話が終わったら4人の女の子達は帰っていった。しかし、両想いになれるように応援してほしいと言われても私は何をすればいいのかわからなかった。とにかく河合隼人に好きな人がいるか聞いてみるか。


次の日、私は河合隼人に話しかけた。


「河合って結構モテるみたいだけど、好きな女の子とかいる?」

「なんだよ突然。なんでそんなこと聞くんだよ?」

「いや、ふと思ったから聞いてみただけなんだけどね」

「そうか。好きな女の子ならいるよ。別のクラスだけどな」

「別のクラス?何組の女の子?」

「4組だよ。この前、告白されたんだよ。まだ返事してないけど、あの子だったらいいかなって思ってる」

「そうなんだ。河合がいいなって思うってことは相当可愛い子なんだろうね」

「そうだな。かなり可愛いよ」


私は4組で可愛い女の子ときてピンッときた。河合隼人にそれは誰かとはハッキリ聞かなかったが予想はできた。それにしても両想いになりつつあるという事実を私は伝えるべきなのだろうか。私はあの暗い表情をした二宮彩美のことが気になった。真実を伝えたらどうなるのかわからない。いろいろ考えたが、応援してほしいとまで言われて残念だが、その事実を伝えるしかないと思った。


私は放課後、二宮彩美を含めた女の子達4人を先日話した近くの公園へ呼び出した。そして河合隼人には好きな女の子がいて両想いになりつつあるという真実を伝えた。その事実を聞いた二宮彩美はさらに暗い表情になった。もういつ泣き出してもおかしくない状況だ。他の女の子3人は必死に慰めている。しかし二宮彩美は下を向いたままでかなり暗い表情をしている。それを見ていた私はあまりにも可哀そうに見えたので、慰めたり笑ってもらえるように必死に面白い事を言ったりした。すると少しだけ二宮彩美は笑ってくれた。私にはその笑った表情がとても可愛く見えた。


それから学校内で二宮彩美と会ったら、できるだけ面白いことをやったり話したりし続けた。次第に立ち直ってきたのか笑顔になってきているのがわかった。笑顔を見ると可愛いと思った私は知らないうちに二宮彩美のことが好きになっていることに気が付いた。しかし、以前の寺崎弘美の一件以来、私は女の子を好きになることに何かしらトラウマがあった。またあんなことになるのは嫌だと思っていた。私はいつの間にか二宮彩美のことだけ考えていた。また前と同じように悩んでいたのだ。これ以上は限界だと思った私は二宮彩美の相談をしてきた女の子達3人に相談してみることにした。


「正直に言うけど、二宮さんのことが好きになってしまった。相談に乗って応援してほしいと言われたのに、僕が好きになってしまった。ずるいとは思うけど、どうすればいいかわからないんだよ」

「あなたが彩美のこと好きになったのはずるいとは思わないよ。でも本気なの?」

「本気だよ。僕は二宮さんの笑顔を見ていて好きだって思うようになった」

「だったら彩美に告白してみれば?素直にストレートに気持ちを伝えればいいと思うよ」

「告白か・・・でもどこで?ラブレターでもいいのかな?」

「ラブレターじゃなくて直接伝えるべきよ。告白する場所はこっちでなんとかするから、頑張って言うんだよ」

「わかった」


女子達3人は親身に私の話を聞いてくれて協力的になってくれた。告白してどうなるかわからないが、以前のようなことにはならないだろうと思った。ラブレターじゃなくて本人を前にして告白するのは私にとって人生初のことなのだ。そう考えるとかなり胸がドキドキしてきた。


ある日の夕方、相談に乗ってくれた女の子達3人から学校近くの公園に来るように言われた。私は言われた通りに公園に行った。すると女の子達は二宮彩美を連れてきていた。そして一人の女の子が口を開いた。


「さあ、ここで正直に気持ちをここで伝えな」

「ここで?みんないるのに?」

「そうよ。彩美、ちょっとこっちに来て」


二宮彩美が私の前に来た。私の心臓は破裂しそうなくらいドキドキしていた。しかも女の子達に囲まれた中で告白するのにためらって言葉がでない。沈黙を続けていると女の子達の一人が口を開いた。


「彩美のことどう思ってるかハッキリ言って!」


私はもうこんな状況はどうすることもできないと思い覚悟を決めた。私は二宮彩美の目を見ながら言った。


「二宮さん、好きです!付き合ってください」


どんな答えが返ってくるのかドキドキしていたが、二宮彩美はニッコリして「はい、お願いします」と言った。

私は二宮彩美がどうして私と付き合ってくれたのか気になって聞いてみた。


「ありがとう。でも、河合のことはもういいの?」

「うん、もういいの。今はあなたのことが好きだから」

「それならいいんだけど」

「あなたは、優しくて面白くてワタシのこと笑わせてくれた。好きっていってくれた。だからワタシも好きになった」


そして周りの女の子達から拍手された。私は小学5年生で人生初の彼女ができたのだ。


それから、二宮彩美とは学校で会うと話をしたり時々一緒に学校を帰ったりしていた。当時、私が仲良くしていたクラスメイトの友達には彼女ができたことを明かしていたので応援してくれていた。小学生同士の恋愛関係ってよくわからなかったが、一緒にいると楽しいと思っていた。ところがある日、私が仲良くしていたクラスメイトの一人から質問された。


「お前、彼女と友達、どちらか選べと言われたらどっちを選ぶ?」


この質問には少し悩んでしまった。彼女と友達を選ぶなんてできないけど、でもどうしてもというのであれば今いる仲間を選ぶべきではないかと思った。


「友達を選ぶと思う」

「あはは、そうか。お前を試してみただけだよ。彼女もいいけど友達のことも忘れないでほしい」


私は彼女に必死になっていて少し友達関係をおろそかにしていたかもしれないと思った。それからは友達関係もおろそかにせず、彼女との関係もうまくやっていくようにした。


二宮彩美と楽しく過ごす日々は続いていたたが、3月になって彼女の表情が少し変わってきた。なんだか暗い感じがしてきた。もう私と付き合うのは嫌なのか、それとも他に好きな人ができたのか、考えられることは色々あったが真実はわからなかった。終業式が終わり春休みに入った。私は二宮彩美と二人でどこか行こうと思っていたのだが、電話をかけても繋がらなかった。連絡が取れないと二宮彩美の友達に相談すると、彼女は既に引っ越しして転校することになっていたという事実を聞かされた。そのことは私には内緒にしてほしいということだったらしい。その事実を知った私はかなり落ち込んだ。どうして転校のことを話してくれなかったんだろうと思った。彼女の友達にその訳を聞いてみたら別れるのが辛いから内緒にしていたという。


二宮彩美はどこか遠くに引っ越ししていって、連絡先も教えてくれなかった。つまり引っ越しと同時に別れようという意味だったことがわかった。今の私が考えると小学生だった彼女が遠くに引っ越しして別れるのは辛いという気持ちはわかる。彼女が悩み苦しんで考えた結論なんだろうと思う。これで私の人生初の彼女との恋愛関係は終わってしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ