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勇者として召喚されたなんて知らなかったから異世界で農家になりました  作者: ほげえ(鼻ほじ)
異世界生活 -開拓編-
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9


リズとツヴァイの意見をもらいつつ開拓をしているなか、畑にするため耕してきた土が葉っぱもいい感じに養分になっている気がするので種を蒔くことにした。


畑に畝を作りブロックごとに種を蒔き、目印に袋を挿しておく。


買った種をすべて植えたので範囲が広く、水やりに川の水を汲みに行くのも面倒で、かといって泉の水を毎日大量に使うのもいかがなものかということでヨシュアが畑の範囲に水魔法で雨を降らせている。


実験的に一部の植物のみ泉の水で育てている。

もし泉の水で育てた物のほうが味が良ければ雨を降らせるときに少しだけ泉の水を混ぜようと思っているのだ。


木に魔力を込めて抜くことが出来るから、種に魔力を込めて成長させることはできないかと思ったが、どんな野菜が育つのか想像がつかないため成長をイメージ出来ず断念した。

人生は長いから、気長に待つとしよう。


空いた時間にはキノコ狩りをして天日干しし、次の魔族の街へ行くまで保存出来るようにしている。

キノコは菌で育つため、今後も採れるよう根こそぎ採集はせずにわざと何本か残していた。


ツヴァイが森で見つけた草を高価な薬草だと言うのでその薬草もキノコと一緒に干してある。

必ずタケリタケと一緒に売るよう言われた。

どうやらタケリタケと組み合わせることでバイアグラ的なお薬になるそうだ。

治癒魔法師といっても中級までしか使えないから薬の勉強もしたのだという。


努力家である。今からでも性別を女に変更してヒロインになってくれないだろうか。

さすがに異世界で男同士に目覚めるつもりはない。


ツヴァイにヒロインになって欲しい理由はもう1つあり、ここでの生活を続けていくうちに健康的になり痩せこけた頬も普通の細身の少年というくらいになった。


なんといっても温泉が出来て今までの体を拭くだけの生活から風呂に入ったことで清潔感が増し、中性的な美少年になったのである。服装が治癒魔法師らしくローブを好んで着ていることもあり遠くから見れば性別がどちらかわからない程になっている。


肩までのびたサラサラストレートのくすんだ金色の髪にエメラルド色の瞳、どこの王子様だと聞きたくなる。

きっと女の子なら惚れていただろう。


3人の生活にも慣れてきて、生活を向上させるために何が足りないかという話し合いを定期的に行っている。話し合いというよりも、ここでの生活の愚痴に近い。


「ヨシュアさん、寝るところは干し草から別のものに変更する予定はないのか」


「お布団で寝たいのは山々だけど、街からの運搬がなぁ」


「家のなかでは土足で過ごしているのだし、出来ればベッドが欲しい」


「木でベッドを作ることなら出来ると思うよ」


「作るなら俺の分もつくって欲しい。あと、お肉があればレパートリー増えるからお肉が手に入ると嬉しいんだけど」


「僕もお肉食べたい。森の魔物を食べるのはマリーさん達に申し訳ないから街から仕入れるとしても保存方法がないからなぁ」


「ネックなのが保存方法だけなら魔族の街にあるかわからないけど、食物庫の魔道具を手に入れてもらえると嬉しいかな」


「魔道具ってなに?」


「そっか、ヨシュア君のとこは田舎だから無かったのか。魔道具っていうのは、職人さんが魔力を込めて作ってくれた道具のこと。魔力がない人でも、魔物から手に入る魔石で使えるようになる魔法の道具なんだ。王都とかだと飲食店に食物を冷やして保管できる食物庫や、火をつけてって声で指示をするだけで火がついて調理できるキッチンとか、けっこう便利なんだよ」


冷蔵庫と音声で指示できるガスコンロのようだ。今ツヴァイには石で出来たキッチンを使ってもらっているが、薪に火をつけて調理になるので使いにくい。

確かにあれば便利だし、食生活がより良くなりそうだ。


「わかった。食物庫とキッチンは次の買い物で帰るかはわからないけど見てこよう。」


「買い物に行くなら、始めにもらった5万ルクで身の回りの物と短剣は買えたが武器と防具が不十分なんだ。特に弓は職人のものでないと上手く飛んでくれない。お金に余裕があれば買いたい」


「そうだね、それも今度買いに行こうか」


それから食事のときはテーブルが欲しいだの、温泉に服を置ける棚が欲しいだのワイワイ話し合いをする。

1人のときは気にならなかったことだが、やはり人と生活するとサバイバルライフから文化的な生活になる。


「ところでヨシュアくんはここにずっと住み続けるつもりなの?」


「気付いたら魔界にいて帰る方法がわからないからなぁ。それに帰れるとしても、もともと家族はいないから、ここでのんびり暮らす今が楽しいよ」


なぜこの世界にいるのかわからないけど、ホームシックにならないのはありがたいことだ。


「そうなんだ」


ツヴァイは目をふせ、それ以上問いかけることはなかった。

ヨシュアと違って、ツヴァイとリズはこの世界の人間界だ。奴隷でさえなければ、帰ろうと思えば帰れるかもしれない。


「お金なくてレンタル契約にしてるけど、購入するとき奴隷商に契約ではなく自由にすることが出来ないか聞いてみるよ。人間界に帰る方法があるなら帰るといい。リズは軍の仲間がいるだろうし、ツヴァイは孤児院で働いてたんだから、家族がいっぱいいるだろう?」


孤児院の子供達を思い出したのか、ツヴァイは優しい笑みでお礼を言った。


「ありがとう。………うん。大事な家族なんだ」


圧倒的ヒロイン力である。


一方リズは話し合いのおともにとツヴァイが焼いてくれていた木の実とドライフルーツのクッキーのようなお菓子を食べてむせていた。


本当に残念だなリズは。


「大丈夫?」


「ゴホッ…、大丈夫だ。いや、軍に戻るなんて考えてもいなかった。せっかくだが、私は一度魔族にとらえられた身だ、死んだことにされてもう帰る場所はないだろうな」


軍隊というのは厳しいところだ。

もしツヴァイが人間界に帰るとなっても、リズだけ残ることになったらどうしようか。

生活が原始時代に逆戻りである。新しい奴隷を買わねば。


話し合い以降ベッドや大物の家具を買うため、日中暇なときにリズから聞いた収納魔法の使い方を練習し、なんとか使えるようになった。

収納出来る限界量はわからないが、物を入れて取り出すことはスムーズになったので魔族の街に買い出しへ出かける。


毎度お馴染みアンドリューさんと、武器防具の購入のためリズをおともに、ツヴァイはお留守番してもらっている。


いつも通り薬屋でキノコとツヴァイに言われた薬草を持って薬屋へ行き、何の薬が出来るか分かるよな?と下品な顔で伝えたら買取り額を上げてくれた。


保存出来るようにキノコと薬草を干していたことも薬作りには好都合だったようで買取り額はさらに上がり、キノコの量が多かったこともあるが130万ルクという大金を手に入れることとなった。

財布に入りきらないので収納魔法で容量を増やした巾着に入れる。


武器防具の代金として30万ルクをリズに持たせ、アンドリューさんと一緒に買い物へ行ってもらう。

高額な買い物になるため、言葉が話せないのをいいことにボッタクリにあってはいけないからだ。

リズが選んだものをアンドリューさんが購入するようお願いして二人で買い物してもらう。


その間にリサイクルショップのようなお店で玄関用と予備の蝶番を購入し、家具屋さんへ向かった。

看板を見て適当(家具屋と思われるお店に入ると、中からスーツのような服装の女性がやってくる。

真っ赤なネイルが素敵な女性かと思ったら、どうやら爪が魔力の結晶のようだ。


「いらっしゃいませ、本日はリフォームのご相談ですか?何かお探しですか?」


どうやらショールーム兼家具屋のようだ。


「キッチンをリフォームしたくて」


「ではキッチンのコーナーへご案内いたします」


案内されたコーナーは、レンガのキッチンや大理石のような綺麗な石のもの、業務用のような鉄でできた武骨なものなど種類があった。


「自分で設置することが出来るものだと、どれになりますか」


「弊社のリフォーム事業部のご利用をオススメさせていただいてますが、ご自身で設置されるとなるとレンガ作りのものがシンプルでよろしいかと存じます。レンガを組み立て、魔道具のコンロをはめ込んでいただくだけですのでリフォーム事業部がリフォームに伺えない地域にお住まいの方にお勧めしております」


魔族って野蛮なイメージだったけれど、文明発展しすぎてない?


「へぇ、いくらくらい?」


「レンガキッチンが20万ルク、コンロは音声で指示できる最新型ですと2口のものが10万、3口13万、4口15万ルクでございます。従来のボタン式の物ですと物によりますが大体4口で8万ルクほどとなっておりますがいかがいたしましょう」


最新型のもので4口の大きめの物にしても35万である。大は小を兼ねると言うし、迷ったら1番大きくいいものがいいだろう。


「じゃあレンガキッチンと音声の4口コンロにします。ついでに食物庫ってない?」


「食物庫のコーナーは裏手にありまして、レンガに合わせて耀煌石の食物庫がオススメです。」


裏手にまわると業者用のような箱型の食物庫がいくつもあった。オススメの耀煌石とやらは焦げ茶にキラキラした線が綺麗なものだったが、値段は書かれていないが一目見てわかる。これ高いやつだ。


鉄のものや木で出来たもの、陶器のようなつるんとしたものなど安そうな物もあったので、気に入った見た目のものだけ値段を聞いていく。


木の素材は外側だけ木で出来ており、中は白い石のような素材だった。容量ごとに値段は違うが、4~5人用で10万ルク。陶器のような見た目のものは同じサイズで14万ルクだったため、木の食物庫にした。


「では木の食物庫・冷蔵用のものご用意させていただきます。合わせて木の食物庫・冷凍用や、レンガキッチンに合わせたレンガオーブンなどいかがですか?」


冷凍庫があればお肉や魚の長期保存も可能になるから必要だろう。ツヴァイはパンを焼いているからオーブンも必要かもしれない。


「ああ、喜ぶかもしれないな。見せてください」


「こちらでございます。奥様は幸せ者ですね」


どうやら新婚さんと勘違いされたようだ。訂正も面倒なのでそのまま案内してもらう。

結果、なんだかんだ合計70万ルクとなった。


やけになって寝具がないか聞くと、2階に案内されソファーやベッドのコーナーへ連れていかれ、いつの間にかソファーと寝具も購入していた。

ベッドはクイーンやキングサイズ、お子さん用に小さめのものあると伝えられたが迷わずシングル3つを購入した。


あのお姉さんは売り付けるのが上手すぎる。

値段をみてソファーはやめようかと思ったが、キッチンセット購入割引やらベッドのマットレスと枕とシーツのセット価格やらで気づけば97万ルクをニコニコ現金払いで購入した。お姉さんは終始ニコニコしていた。


買ったあとに持って帰れるか不安に思ったが、すべて収納魔法に入れることが出来たため大丈夫だった。


大きな箱に入った組み立て前のレンガキッチンにレンガオーブン、食品庫の冷蔵用と冷凍用、ソファーに布団3セット。空間にチャックをイメージして開き、そこに押し込んだあとチャックを閉めて収納した。


慣れれば巾着などを用意しなくても空間にしまえるのが収納魔法のいいところである。

受け渡しのときのお姉さんは驚いた顔のまま固まっていた気がするが気のせいだろう。


待ち合わせの喫茶店をのぞくとまだリズとアンドリューはいなかったので、ホームセンターのようなお店をのぞき大量のペンキとハケ、透明な水晶玉のような謎の大きな玉を4つ購入した。


無垢材の自然派ログハウスもいいと思うが、赤い屋根の大きな高床式ハウスも魅力的である。

木材で作り続けたため見飽きたという理由もある。


喫茶店でリズとアンドリューの二人に合流したあと、せっかく食品庫が手に入ったので帰る前に肉屋と八百屋で食材を買い込んで帰った。


帰ってから取り出した食物庫に食べ物をしまい、ヨシュアお手製木製ベッドに一式5万ルクのマット・まくら・シーツでベッドメイクしてダイブすると、すぐ眠りの世界へと連れていかれた。


布団の魔力は恐ろしい。


「買いすぎでしょ!」


おふとぅんで優雅なお昼寝から目覚めてリビングへ行くと、食物庫の中身を見たツヴァイに怒られた。解せぬ。


「僕にはツヴァイのうまい飯を食べられるほうが重要なんだ」


「いや嬉しいけど!そんなにご飯気に入ってもらえて嬉しいけど!」


「帰ってすぐ寝ちゃったから食物庫しか出してないけど、新しいキッチンもあるよ」


「嘘でしょ?」


「本当。食物庫の冷凍用とオーブンも買った。あと二人の寝具もある。キノコを干してあったのと、薬草とのセットにしたのも良かったみたいでかなりの金額になったんだ。今日は疲れたから、キッチンとかは明日組み立てるよ」


「冷凍用にオーブンって、人間界じゃ高級な飲食店か貴族くらいしか持ってないよ。いくらしたの?」


「えーと、たしか70万ルク?ソファーと寝具足して97万ルクだった」


「えぇー………」


脱力した様子のツヴァイ。


「ところでリズは?」


「リズなら武器の感覚掴むって庭で素振りしてるよ」


「どこの剣豪だよ」


「いや王国兵だから。女性で魔法剣士として戦場に出てたなんてかなりのエリートだからね。ずっと体格強化のスキル使い続けて生活なんて無茶なこと普通しないよ」


嘘だろ。次から認識を改めなければ。

リズの胸筋を讃えて雄っぱいと呼ぼう。心のなか限定で。


素振りを終えて温泉に入ったのかホカホカしながら帰って来たリズ。今日も素晴らしい雄っぱいである。

今日買ったばかりの材料を使ったツヴァイの美味しいご飯を食べたあと二人の部屋に入らせてもらい、干し草が乗っていた木製ベッドにマットを設置する。


「助かるよ。やはりマットで眠ったほうが体力の回復が違うからな」


そういう理由だったのかといまさら理解し、脳筋って思っててごめんねと心の中で謝りながらいいんだよと返事をした。


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