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勇者として召喚されたなんて知らなかったから異世界で農家になりました  作者: ほげえ(鼻ほじ)
異世界生活 -開拓編-
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6


「次はお買い物ですね、何を買われるんですか?」


「このお金で服と種は買えるでしょうか」


「種ですか?」


アンドリューさんはキョトンとしている。


「はい。野菜を育てたくて」


「ははは!ヨシュアさんは変わった方だ!植物は森にたくさんあるのにわざわざ育てるなんて!種があるかわかりませんが、花屋に行ってみましょうか。その前に服屋のほうが近いですね。お金なら大丈夫、装飾品を買っても半分も使わないですから!」


ああ、そういえばこの人鳥だったな。

鳥に食べるために植物を育てる価値はわからないだろう。


案内された服屋に入ると、シンプルな服が多く並んでいた。

焦げ茶とカーキのパンツとTシャツを3枚、グレーとネイビーのカーディガン、下着がブーメランなのが気に入らないがこれしかないらしいので下着を3枚、お店にあった編み上げのブーツのような登山に使えそうな焦げ茶色の靴も購入した。


トータル4万ルクでお釣りが返ってきた。

他の靴屋にも行って、室内で使う家用のサンダルと農作用の靴も購入。

日本円での買い物と感覚が変わらないようだ。


お花屋さんに入って、野菜の種はないかと聞いたところ取り寄せないと手に入らないと言われた。


この街では毒沼が近くにある影響で野菜は育たないため取り扱っていないらしい。

ガーデニングしようにも、地下のため日光があたらず育たないので需要がない。


「取り寄せられる商品カタログならあるので、欲しいもの言ってくれたら料金半額前払いでもらうことになるけど取り寄せますよ」


花屋のお嬢さんが見せてくれたカタログには、何の野菜か想像つかないものが多かった。

さいわい、野菜の種は1つの200ルクと安かったためカタログに載ってある種で寒冷地向けのもの以外すべて注文した。


「34種類で6,800ルクなので、前払いは3,400ルクになります」


お金を支払い、取り寄せ注文表というのを渡された。


「受け取りのときはこの注文表持ってきてください。取り寄せに10日~2週間かかるので、受け取りはそれ以降にお願いします」


無事に種の注文を終えたあと、アンドリューと昼食を食べに適当なお店に入った。


「いらっしゃーい!今日のランチはタルタロスの煮込みかシードラゴンのステーキでーす!」


「ではシードラゴンのステーキにします!」

「僕はタルタロスの煮込みで」


正直料理が何かよくわかっていないが、2択だったのでアンドリューさんとは別のものにした。


テーブルに置いてあるドリンクメニューにはアルコールやジュースが並んでいる。


「あ、レモーネスカッシュもお願いします」

「かしこまりましたー!もう一人のお兄さんは?」

「水を下さい!」

「はーい!ランチA!ランチB!レモーネご注文いただきましたー!」


ランチタイムでお店は混んでいるが、素早くパンとサラダ、ドリンクが運ばれ、サラダを食べ終わる頃にメインが運ばれた。


シードラゴンのステーキはマグロのテールステーキのようだった。

タルタロスの煮込みは筋のある牛肉を柔らかくデミグラスソースで煮込んだものだ。


数ヶ月ぶりのお肉に感動した。

なにより素材以外の味があることが素晴らしい。

パンにソースをつけて最後まで味わい、お皿が綺麗になった。


レモーネは予想通りレモンのような果物の炭酸ジュースである。

スローライフを送ることに満足しているが、今口のなかで文明開花の味の衝撃を味わっている。


満腹になり、混んでいるお店をあとにして調理器具や調味料の買い出しに行った。調理関係の雑貨屋といった品揃えだった。

フライパンと鍋、ガラスのコップやお皿を購入し、塩と黒砂糖、香辛料の種類が多くいくつか試しに買ってみる。


今の空飛ぶ椅子の収納量では、そろそろ荷物が限界に近づいてきたので、最後に喫茶店で休憩してから帰ることにした。


アンドリューさんは鳥のため水か果物100%の飲物しか受け付けないらしくリンゴジュースを頼み、ヨシュアはアイスティーを頼んだ。

歩き回って気だるい体を休めながら、気になっていたことを聞く。


「そういえば、薬屋の店員さんが憐れむような目になってましたが、あれは何を察してくれたんですか?」


「ああ、魔族で聖域に入れるということは結晶化した魔力を持たない、危険のない魔族であるということになります!つまり、人属と同じレベルの魔力しか持たない魔族として生きていくには難しい子供を親が口べらしか何かのために、放っておけば死に至る毒沼に捨て、ヨシュアさんは生きていくため、身を守るために聖域ではぐれ魔族として自給自足生活をしている可哀想な子だと思われたんですよ!」


それはつまり、薬屋の店員にヨシュアは物凄く弱いとバラしたようなものではないか。

ヨシュアは頭を抱えた。


もうバラしてしまったものはどうしようもない。

万が一襲われないように暗い路地は通らないよう気を付けよう。


誰もいない家に帰り、街の喧騒を思い出すとなんだか無性に人恋しくなる。

人と関りが欲しい。そして切実に護衛が欲しい。街に買いものへ行くにしても、毒沼のあたりは上空に鳥のモンスターが飛んでいる。


街でも出来れば一人行動は避けたい。

あわよくば護衛兼荷物持ちが欲しい。


せっかく空飛ぶ椅子があるので、岩山に鉱石が採れないか調査に行きたいが、どんな魔物が住んでいるかわからないため怖くて行けない。


残念ながらここは魔族の入れない聖域のため街で魔族を雇っても連れてこれない。

ここで知り合えたのは鳥のみ。しかもノルンがある程度成長すればもともと住んでいた山へ帰るという。


山へ帰るまで街へ買い出しに行くときはアンドリューが付き添ってくれるが、鳥の成長は早く、気づけば幼女が少女になっている。


あの買い出しに行った日の文明開花の味を失うわけにはいかない。


魔力で空飛ぶ椅子の収納量増えれば1度に買える量が増やせるのではないかと思ったがうまくいかなかった。

財布がわりにもらった巾着を四次元ポ○ットのイメージをしたら内容量は増えたが入れたお金を取り出しにくくなり戻した。

意外と不便な魔法である。


せっかくフライパンと鍋を買ったので、ログハウスの中にキッチンを作ろうと試みた。


漢字の「円」の形の石の台を作り、壁側も石のブロックを積み上げ、火が壁に燃え移らないようにする。石なら熱電動も悪く、壁や床まで熱が伝わり傷むことはないだろう。

台には丸い穴を2つ空け、石の台で出来た2口コンロが完成した。


穴の上に調理器具を乗せ、穴の下に薪をくべればキッチンとして充分使える。

キッチンを作れたのはいいが、いかんせんろくに家事をしたことのなかった15歳のヨシュアでは美味しい料理が作れない。


街で食べたような煮込み料理なんて、レシピを見ても作れないだろう。現状、残念なことにシンプルに焼くと茹でるしか出来ない。


料理を作ってくれる人にいて欲しいなぁ。

彼女なんて無理なのはわかってるから、家政婦さん雇えないかな。


必要なのは護衛と家政婦である。

なんとかならないものか。


アンドリューに付き添ってもらい、また魔族の街へ買い出しに出掛けた。目的は取り寄せてもらっていた種の受け取りである。


前回と同じく薬屋でキノコを買い取ってもらい、花屋で種を受け取ったあと、生活が楽になるものを調べに街を散策する。


トイレはどうしているのか、アンドリューに聞いても飛行中に済ますという鳥らしい回答しか得られなかったのである。


調査のため街でトイレを借りると、プルプルした何かがトイレの底に潜んでいた。用を足すと、プルプルしたものに吸収されていく。このお店のトイレは無臭で、芳香剤で誤魔化したような香りもない。


「……これ、スライムか?」


聖域では見たことないが、どうやらスライムが汚物処理に利用されているようだ。


スライムを買える店はないか聞くと、雑貨屋で日用品コーナーで販売されているらしい。ミントの葉を食べて育てられたほのかにミントの色のスライムが人気商品として展示されていた。


異臭がしだしたら寿命でお亡くなりになった目安なので新しいスライムを入れる時期となるようだ。亡骸は次のスライムが食べるためそのまま新しいスライムを入れるだけ。


さっそくスライム小を1匹購入した。瓶に詰められたスライムは瓶詰めのゼリーのようで綺麗だった。


次にドアを作るための蝶番が欲しくて何屋と言ったらいいのかよくわからない店に入る。

前の世界でいうリサイクルショップだろうか、家具やインテリア雑貨など雑に並んでいた。蝶番をトイレ、玄関、寝室、予備として4セット購入する。


雑貨屋で斜めがけの背負える鞄とリュック、財布を購入したあとは聖域に入れる人材を入手する方法はないかアンドリューに聞いてみた。


「魔族は無理ですから、可能性としては奴隷でしょうか」


「……奴隷、ですか」


奴隷なんて虐げられているイメージがあり、買うのは可哀想な気がしてしまう。


「はい!獣人族は魔力もありますし身体能力が高く難しいですが、人族の奴隷なら聖域でも入れると思いますよ!」


ちょっと聞き捨てならない単語が出てきた。


「人族の奴隷がいるんですか……?」


「ええ!大抵戦争で捕虜として捕まって、そのまま奴隷になった者達ですね!」


そうか。捕虜として捕まえても返せばまた戦力として戦場にやって来るし、かといって無駄に殺すわけにもいかない人族を奴隷として利用しているのか。


「興味があるなら見に行きますか!この街にも奴隷商はいますから!」



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