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いつしかフードを深く被った男が立てば、そこへ国民が集まるようになった。
演説に賛同し、「そうだ!」「その通りだ!」とあちこちから怒声に似た声があがる。集まった国民たちは徐々に国への不満を表し、怒気をはらむ集団となる。
国民たちは、フードの男がいなくてもあちこちで集まり、不満の声をあげる。
「王族は今の政治を見直せ!」
「民衆をバカにするな!税金を無駄遣いしやがって!」
「戦争から帰ってこない、旦那を返して!!」
このままでは国民が暴動を起こすだろう。
国は兵をあげて、国民の鎮静化を図ろうとしたときだった。
フードを深く被った男が、国民の前に姿を現した。
「今の国を変えたいと思わないか?」
いつもの演説とは違い、集まった国民に問いかける。
「思うに決まってるだろう」
「変えなきゃ終わりだ!」
国民達は次々に同意する声をあげた。
フードを深く被り、今まで口元しか見えなかった男が、集まった国民の前で初めてフードを外した。
宗教画に描かれる大天使のように、息をのむほど美しい顔をしていた。透き通るエメラルドの瞳の奥で闘志を燃やす、若い男性だった。
「俺の名はツヴァイ・ゲイル・イスカリオテ!この国の第4王子であり、革命を起こす者だ!」
その場の人達は皆、突然王族が現れたことが理解できず固まった。
「俺は国王に認知もされてない隠し子だ。次期国王戦の前に徴兵され、魔界へ進軍した。そこで、彼らと出会った」
王子と名乗る男側に、紫の牙の人と羊の角の女の子、剣を携えた青年が並び立つ。
「魔族は人間と和平を望んでいたんだ。魔族の代表として、この2人は俺に協力してくれている。そしてこちらは国王が失敗したと思い込んでいる勇者召喚の儀式で召喚された勇者だ」
「そんな男が勇者だと?」
人々の中からヤジが飛んだ。
王子と勇者は目を合わせ、頷きあう。
「雷神!」
勇者だと言われた男は天に拳を突き上げ叫ぶ。
閃光が視界を奪い、晴天の空に雷鳴が轟く。
「水龍!」
演説をおこなっていた広場の噴水から水の龍が天へと昇り、雨となる。
「フェニックス!」
火の鳥が現れ天高く舞い上がり弾けた。
天には大輪の花が咲く。この世界で初めての花火だった。
「こんな魔法を見たことがあるか?空に雷鳴を轟かせる魔法を。水龍や火の鳥が天へ昇る姿を。空に咲く大輪の花を」
本当に、勇者なのか。
納得せざるおえない魔法を目の当たりにした国民達の胸に、希望の光が灯った。
あの男が本当に王子なら、本当に革命が起こるのか。
あの男が革命を起こし王となれば、誰もが学び、病気を治療出来る国になるのではないか。
事故や病気で働けなくなっても、国が助けてくれるような、そんな夢のような国へと変わっていくのではないか。
「俺はこれより、魔族と勇者とともに王城へ乗り込む!革命に参加する者は俺に続け!だが、決して血を流すな!大切な民が血を流すことは許さない!これは血の流れない革命だ!!」
まるで地響きのような歓声が響き渡る。
国民達は、今の生活が続くことよりも革命を選んだ。
国民を率いた新たな国王を名乗る男は王城へと向かう。
進行を止めようと兵隊が何度もやって来るが、次々と眠りや麻痺といった行動不能に陥り、その場から動けなくなっていく。
国民の進行は誰にも止められない。
「止まれ!城へ入ることは認められない!」
王城の門番は槍を構えて言った。
「聞け!この俺の瞳の意味を知るものはいないか!国王へ息子が会いに来たと伝えろ!」
国民を率いた男が声をはる。
声を聞いて、様子を見ていた男が門へとやって来た。
「・・・これは!この瞳は!!お前たち、この方をお通しするんだ!!」
声をかけたのは国王の右腕とよばれる人間だった。まるで来ることを知っていたかのような、見事なタイミングでの助け船だった。
フードの男と魔族2人、勇者の4人が代表として城へと乗り込んでいった。
勇者と紹介された男、ヨシュアは城へ足を踏み入れ悪どい笑みを浮かべた。
計画通りっ・・・!!
そう、これは無血開城させるために1年かけた壮大な計画である。
まず、時間をかけて 王都で魔族のイメージアップをはかり、国民の意識を改革を望んでデモを起こすよう扇動する。
紫の牙の人は次期魔王であるギルバートに協力してもらった。
今後の外交のためにも、次期魔王自ら人間界と友好関係を築くために出向いたほうがいいだろうと考えたのである。決して現魔王であるメルのお父様では見た目が恐すぎるから次期魔王にしようという理由ではない。
羊の角の女の子はもちろんメルだ。フードの男はツヴァイである。
ツヴァイの街頭演説中にヤジを飛ばしていたのはクリフとアーノルドだった。
ここまではヨシュア、ツヴァイの人間側と魔王、次期魔王が話し合って決めた内容だ。
そして、革命を起こし国王となる俺の補佐になって欲しいと国王の右腕であるアンデレさんを説得し、王城に入るときは偶然を装って手引きして欲しいと頼んでいた。
革命を起こしたあとの貴族の反発はアンデレさんが丸め込む予定である。
国王との交渉では勇者と現魔王の娘、次期魔王をバックにつけた王子の下剋上である。王位継承権があり、国王の座につくことになんの問題もなく、普通に考えて武力では敵わない。どれだけ賢く身を引いてくれるか。交渉するのはその点だけだ。
ツヴァイは実の父である国王と初めて会ったが、親子としての会話は一切せずに交渉した。
「お初にお目にかかります、国王」
「・・・煩わしい。お前に礼節など出来ると思っておらん。何の用だ」
「その国王の座を譲っていただきたく、参上した次第でございます」
「お前のような者が、国民を焚きつけていたとはな。その瞳の色から王族であることは理解できるが、この座は相応しい者でなければ継げぬ」
「ええ、貴方では相応しくありません。譲っていただきたいという言い方が間違えておりました。国王、その座を下りてください。大人しく下りれば一生幽閉などしません」
「国王にそのような無礼が働けるたわけ者が、この座に相応しいとは思えんな」
「悪政を続ける者より、国民に支持される者のほうがよほど良いでしょう。残念ながら器ではありませんでしたが、仮にも国王となった方を幽閉、処刑はしたくないのです。その座を明け渡していただけますか?」
「先程から幽閉、処刑とは物騒な。後ろの魔族共に誑かされたか。魔界で洗脳でもされたか」
「いいえ、これは私の意思です」
「国王として、お前の意思は認められぬ。私の血で、血塗られた玉座にするか?」
お前は私を殺す覚悟はあるか。
「お望みとあらば」
もちろん。
「お前達4人さえいなければ、容易くこの革命は終わるのだろうな」
お前達をこの場で殺せはしないのだろうな。
「ええ。革命は成されることなく、魔族が攻めこんでくるでしょう。和平交渉のために使者として送った現魔王の娘と、次期魔王の2名が帰ってこれなくなれば、人間界へと大軍を率いて魔王自ら出向いてくると思われます」
我々を殺せば、それが引き金となり人間界は滅ぶでしょう。
長い長い沈黙のあと、国王はため息をついた。
「そうか。今日はこれまでとする。次回は一週間後でいいか」
「三日後はいかがでしょう」
「短い。五日後」
「では、そのように」
こうして、主人公であるはずのヨシュアは会話に一度も参加することなく、圧倒的主人公ツヴァイによる話し合いは終わった。
革命は何度も何度も話し合い、進めていくこととなる。
作者の名前を「ヒモになりたい」から「ほげぇ(鼻ほじ)」へ変更しました。
他の候補は「豚野郎(サムギョプサル野郎)」「面皮厚太郎」「次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイター)」でした。




