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勇者として召喚されたなんて知らなかったから異世界で農家になりました  作者: ほげえ(鼻ほじ)
異世界生活 -発展編-
32/41

ツヴァイの野望


なぜ種族が異なるのに人間は瞳が、魔族は魔力結晶がエメラルド色になることが王族の証となるのか。人間と魔族の歴史について知る必要がある。



人間と魔族はもともと同じ種族として暮らしていた。しかし、魔力結晶を持ち膨大な魔力を持つ者と魔力結晶がなくたいした魔法も扱えない者、格差が出来るのは当然であった。




人間の歴史では、魔力結晶を持たない王族が魔力結晶を持たない住人をまとめあげ、魔族を自分達はとても住める環境ではない魔界へ追放し、さらに転移魔方陣を壊して簡単にはこちらへ来れないようにしたとされている。



これは自分達の方が優れた種族であると人間を蔑む魔族達に反旗を翻した王様を讃える英雄譚として語り継がれている内容だ。



魔界へ追放された魔族達は魔力結晶を持つ王族がまとめあげ、魔界に新たな国を建国した。



今ではまるで別の種族である人間と魔族が一緒に暮らしていたが、人間が冷遇され勝利を勝ち取ったかのように語られているが、本来は同じ種族であることを教えてくれたのは、国王になる気はないかと持ちかけてきた貴族だ。



今の無駄な戦争を続ける悪政を止め、魔族と和解する新たな国王になって欲しいと熱弁していた。



もとは同じ種族の王族が決別し二つの国に別れ、人間は瞳、魔族は魔力結晶に親や祖父母から遺伝した特徴があらわれやすい性質があるため、国が別れても王族のエメラルド色の特徴は受け継がれているのである。




王族の人間すべてがエメラルドになるわけではないが、エメラルド色は王族の血を引く証である。




きっと、メルも気づいているだろう。

俺が王族の血を引く人間だということを。



わざわざ魔王の娘が潜入するということは、それだけここが重要視されているということ。


メルは何を調べる目的なのだろうか。

聖域で暮らすはぐれ魔族という設定のヨシュア君が、本当に聖域で暮らしているか確認しにきたのか、それともはぐれ魔族であることさえ疑われているのか、もっと別の理由か。




そもそもヨシュア君は人間離れしているところがある。あまり魔法を使うところは見ないが、扱える属性が多すぎる。

そして、魔力量によって収納量が変わる空間魔法でキッチンやベッド、ソファーといった家具をまとめて運べる魔力量の持ち主だ。



底抜けのお人好しに、多種の魔法が扱え、膨大な魔力を所有する。

もしアイリスの勇者召喚が成功していれば、ヨシュア君みたいな人が召喚されていたのかもしれない。



もしかしたらーーー。



起業のためにギルドへ登録したヨシュア君の話を聞いて、可能性は確信に変わった。



ヨシュア君は勇者だ。

魔族を倒すより仲良くしていきたいという平和主義の勇者だ。こんな人間が一人相撲している馬鹿げた戦争を和解で終わらせてくれる可能性がある。



そしてメルはどうやって情報を掴んだのか勇者であるヨシュア君の様子を探りに来た。



ただの様子見なのか、殺すつもりなのか。


この聖域にいるかぎり迂闊に手は出せないだろうが、監視が必要なのではないか。


いかに自然に監視をつけるか悩んでいると、ヨシュア君はメルと付き合うどころか婚約したと言う。



これは予想外だった。まさか魔王の娘がハニートラップを仕掛けて魔族側に勇者を取り込もうとしてるとは。



むしろこれはチャンスかもしれない。

いっそヨシュア君が魔王の娘と結婚し魔王に君臨すれば、魔族と人間の和解交渉は格段にしやすくなる。



人間が召喚した勇者が和解を提案するのだ。

和解交渉に反発している現状を打破出来るだろう。



それでもある程度の人間は反発する。それを抑えるにはどうするか。



もういっそ、俺が国王になってしまった方が楽なのではないか?



今まで俺を苦しめてきた王族の血を、今度は利用してやればいいんだ。



いつまでもこの聖域で隠れて暮らすわけにもいかない。



唯一の友達の婚約を祝福しよう。ヨシュア君が結婚すれば、きっと次期魔王はヨシュア君だ。

そして俺が人間の国王となり、ヨシュア君と和解交渉を進めよう。



『国王の隠し子』『聖女』『勇者』『人間』『魔族』そんな肩書きに縛られることない、自由な国を作ろう。


自分がなりたいものになり、生きていける自由な国を。



もう肩書きに縛られる必要なんてない。

むしろ利用してやれ。

自分の自由に生きるんだ。



覚悟を決めてから清々しい気持ちだ。



「ねぇアイリス」


「はい!」


「好きだよ」



『国王の隠し子』と『聖女』の肩書きが邪魔して今まで言えなかった言葉を口にした。



「へぇっ!?」



顔から蒸気が出そうなほど真っ赤にして目を白黒させて驚くアイリス。



「俺、国王になろうと思うんだけど、王妃になってくれる?」




「へへェェェェェェ!?」




穏やかな聖域に、アイリスの間抜けな叫び声がこだました。




番外編終了です。


次回からヨシュア物語の最終章

「娘さんを僕にください 結婚編」が始まります。

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