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第2章~託された力~

 茨城県土浦市。日本で二番目に広い湖、霞ケ浦の畔に面した都市である。人口は約14万人の平凡な数字であるが、こう見えても県南の雄となる都市のひとつである。市内にはつくば科学万博の頃に敷設された高架道路が走り、近代的な都市という雰囲気を醸し出している。土浦駅からは上野行の電車が発着し、特急列車も停車する重要な都市だ。しかし県南の主要都市という立場も、近い将来につくばエクスプレス線が開業すると微妙なものになってしまうだろう。

 だがその町の最大の汚点といえるものがある。それは犯罪発生率の高さ。それは4.5パーセントにも達していた。これは茨城県内のそれの平均を大幅に上回る数字であった。もはや警察だけでは対処しきれない。市長と土浦警察署は、一人の少女に応援を託した。

 塩崎ゆうこの正体は、サンガンピュール(Sangimpur)。土浦市のスーパーヒロインのような、魔法少女のような存在だ。誰が命名したかは不明だが、彼女の名はフランス語で「不浄な血」を表す語だ。携帯電話の着信をチェックした彼女はすぐに発信元に折り返し電話した。


 市長秘書「はい、こちらは市長室です」

 サンガンピュール「もしもし、こちらサンガンピュールです」

 察した秘書はすぐに市長に電話をつないだ。

 市長「はい、市長です」

 指示を聞き取り、現場に急行する。今回の現場は、中学校から東へ約500メートル離れた銀行だ。


 彼女は急いで制服から茶色の服に着替えた。パッと見た感じはワンピース。腰の部分にはベルトの役割を果たす縄が結ばれている。手に持つ武器は拳銃と銀色の筒のようなもの。そしてとある装置を身に着け、これで出動準備完了だ。彼女は3階女子トイレの窓から身を乗り出し、とある装置についてあるハンドルを思いっきり引っ張った。すると、まるでロケットの発射のように勢いよく屋内から飛び出した。これはジェットパックというロケット噴射の力で空を飛ぶ優れものである。

 超法規的措置のような感じで校舎を飛び出した後、進路を東へ取る。22度まで気温が上昇していて初夏のような天気の良さだったせいか、

 サンガンピュール「う~ん、気持ちいい!」

 思わずつぶやいてしまった。スーパーマンのように両手をまっすぐ伸ばして空を飛んでいて、しばらくこの体勢でいたい気分だった。だがすぐにハッとした。一瞬任務を忘れそうになったが、すぐに気を取り直す。笑みをこぼしていた口元もしっかり結んだ。左手に亀城公園を見ながら、上空50メートルほどの高さを飛行していく。5分ほどで現場に到着だ。


 現場となったのは四大メガバンクの一つ、四葉銀行の土浦支店だ。既に大勢のパトカーと報道陣が到着しており、物々しい雰囲気だ。

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