封魔一族のこだわり
◇
「この槍、ほんとやばいな。この尖り方はどんなものでも貫きそうだ」
最後まで選ぶ武器を悩んでいたのはライルだった。
俺、ディン、ラタリアは鋼の名門ではないので、武器は大鎌一択となっている。
しかし、彼は鋼の名門なので槍と言ってもいろいろあるせいか、時間がかかった。
槍にも短いタイプと、長いタイプがある。
彼は迷いに迷って、投槍に適したものを選んでいた。
俺はようやく選び終えたライルに、小言を言うべく、肩を叩いて振り向かせる。
「品物選びに迷う女子みたいだったな」
しかし、そんな俺のひとことに抗議が入った。
「私は誰よりも早く選んだんだけど……?」
女子代表、ラタリアがそう言った。
それもそうだな、と思った。
「ていうかカルマ、私とディンよりも選ぶの遅かったわよね?」
……それもそうだな、と思った。
「俺のこといえないのな、お前」
「そんなことないし……。ていうか武器は俺のやつが一番カッコいいし」
そういうと周りの雰囲気が変わった。
なんだか一斉に周囲を敵に回してしまったような感覚。
「僕のが一番ですよ」とディンが言う。
「俺のだろ!」とライルが叫ぶ。
「私のだし!」とラタリアも言った。
そうして突然、武器についての議論が白熱する。
一見落ち着いて自分の武器の良さについて話しているように見えるが、正直自分ものが一番だとしか認める気がない、熱狂した様子。
「私の大鎌の曲がり方とか、敵を切るのに最善な形をしてるわよ! わかる? 『最善』よ!」
「僕に言わせれば大鎌と言っても大きすぎますね。それが最善とは……やれやれ」
「なんですって?」
「まあまあ。そんなことより俺の槍が一番カッコいいから、それでよくないか?」
むろん、俺も例外ではなかった。
とれあえず叫んでみる。
「俺の大鎌見てくれよ! めっちゃカッコいい!」
誰も見てくれなかった。
そんなこんなで議論は続く。
ラタリアは女の子だが大鎌に誇りを持つ辺り、封魔一族なのだなあ、と思った。
封魔一族はカッコいいものがなんとなく好きだ。
それにライルはもちろんとしても、ディンがそこまで武器にこだわる性格だったとは意外だ。法の名門は鎖で戦うから、武器に対する熱意は少ないものだとばかり思っていた。
そんな風に皆を眺めて、少し早く、無駄な議論をしているな、と気づく。
なぜかって俺の大鎌を見てくれる奴が誰もいなかったから。
白熱した雰囲気を抑えるべく、ぱんぱん、と手を叩く。
注目の視線。
「皆良さがあって皆良い。それでいいじゃないか」
我ながらいいこと言った、とちょっと満足。
納得の雰囲気が漂い始めていた。
確かによく見ればいいところがそれぞれある。そんなことを互いに言い合う。
しかし、それをぶち壊す人物がいた、
「でもそれって皆似たような大鎌じゃないか……?」
唯一槍を使う、鋼の名門、ライル。
彼が大鎌派を敵に回した瞬間であった。
「もう一回、言ってくれない?」とラタリア。
俺も大鎌派なので、かばう気にはなれない。
「ほとんど同じ形状の大鎌同士でいろいろ言うのって、おかしくないか?」
「なにいってるのよ。はあ、ほんっとわかってないわね。槍なんかに触れれる時点で頭がおかしいとは思ってたわ」
「なんだと? そうか、お前は槍の美しさを知らないんだろ? ここで、思い知らせてやる!」
そう言って柄の部分をラタリアに押し付け始める。無理やり槍を触ってもらおうというわけか。
封魔一族のほとんどは、大鎌以外の武器に強い拒否感を覚えるので、これはそこそこの嫌がらせだ。あくどすぎないぐらいの、ちょうどいい嫌がらせ。
いや、なにがちょうどいいのかは知らないが。
「ちょっ、やめ、キャ!」
「ふはははは!」
目を閉じて聞いてみるとなんだか地獄絵図見たい会話の内容が聞こえた。
これではライルがセクハラを行う変態みたいに聞こえる。
俺は目を開けてみる。そこは、やっぱり地獄絵図だった。
結構必死の形相だった。それをディンが止めている。
微笑ましいなあ、と蚊帳の外でひとり俺はほくそ笑む。
しかし、このまま放っておくのも夢見が悪いので、とれあえずなにかしようと進み出る。
「あわわわわわ」とわざとらしく慌ててみる。
誰も注目する気配はない。
「もっと俺にかまってくれよ!」
そうして四つどもえの戦いが始まった。
最終的にはほとんどただのじゃれあいだった。




