魂の祠
長いようで短かった旅が終わりを迎える。
あれから、みんなの結束が深まった。
そして、俺はみんなに感謝されている。
確かに、俺はあの時、皆を守ろうとしていたし、実際、結果は出せていた。
しかし、こうも感謝されると……むずかゆいものがある。
ライルなんかは「一生の借りだな、てか二回目だし」と言ってきた。
そういえばライルを助けるのはこれで二度目か。
しかし、そんなことは忘れてくれていい。
なぜかといえば、まあ、単純に気恥ずかしさがあるからだ。
友情のために命をはった! なんていうのは英雄譚や物語でよくある展開だ。
封魔一族なら一度は憧れる様なシチュエーションでもある。
しかし、こうも思い出すと……悶えてしまう。
なんで勝手に俺は黒歴史を作ったみたいになっているんだろうか。間違いなく良いことをしたはずなのに。
途中からは俺の意を汲んでか、ライルがからかいの方向に変えてくれた。
それはそれでなんだかアレだったが、ずいぶんとましになった。
とにかく、すんだことなので忘れることにする。
恩着せがましくなるのもよくない、なんてことも思ったりするので。
『魂の祠』に到着する。
まず感じるのは妙な雰囲気だ。
圧倒的な違和感を感じるとともに、染み込むような、やけになじむような、不思議な雰囲気。
建物は城のように大きかった。
探検とかしたら迷いそうだ。これを作るのは、さぞ大変だっただろう。
『魂の祠』自体はこの城のみたいな建物の地下にあるらしい。そこで実際にソウルウェポンを見て、おおよそどんな武器が合うか決めるそうだ。
それが将来必ず手に入るというわけではないので、これは審査みたいなものだと、ミーファ教官は言っていた。
封魔一族のたいていは、ソウルウェポンとの契約が行えるが、なかにはできないものもいる。
魂の容量、なんかが関係しているらしい。
優秀なものだと一個どころか二個もいけたりするそうだ。
そう言えばソラファもソウルウェポンを二つ持っていたな、と思う。
番人様はいわずもがな。
負けたくないな、という気持ちが沸き上がる。
……なにに張り合ってるんだか。
俺を先頭に、扉を叩く。
ライルたちは期待に満ちた顔だ。
俺もそうだが、やや代表みたいな扱いになっているので冷静なふりをする。こういうのはディンの方が得意そうだ。
「はい、どなたでしょうか」
ひょこっと若い封魔一族の女性が顔を出す。といっても、俺たちより年齢は上だ。
「成績優秀者認定を受けて、審査をしに来た者です」
「わかりました。では、こちらへ」
案内に従う。
入ってみればその外見の豪華さと比べて、中はずいぶんと質素だった。
そこから下の階にはいる。
不思議な雰囲気がひときわ強くなった。
魂、とやらの波動なのかもしれない。
「第二長老がお待ちです。どうぞ」
がっしりとした扉の前へ。
俺はそれを開き、目を細める。
大量の大鎌が壁に立てかけられている。
そこには少量ではあるが、剣や槍もあり、これらはすべてソウルウェポンなのだと、直感的にわかった。
蝋燭が行く先を導くように照らす。
赤い炎を揺らめかせたゴブレットが燃え、大きな椅子を照らしていた。
その光景に、既視感を覚える。
よく似た光景を知っている。轟々と燃える炎。緑のゴブレット。そして――待ち構える様に立っている、おどろおどろしい門。
俺は首を振ってその光景を吹き飛ばす。
「よく来たな若者よ」
その椅子には優しげな老人が座っていた。
白い髭や皺のようなから、ずいぶんと生きてきたことがわかる。これほどの容姿となると四百年ぐらい生きているかもしれない。
どうしようか、と少し迷ってからひざまずく。
この老人からは最高年齢者『貴き長老』と同じような雰囲気がしたからだ。
「お初お目にかかります」
「よいよい。形式やかたばったものは好かん。楽に姿勢をとり、楽に話すがよい」
そのほうがいいのかもしれない。
なにしろ、そこにはこの硬い雰囲気に絶対に似合わないものがあったからだ。
優しげな老人。しかし、厳格で、どことなく姿勢を正させるような、強さがにじみ出る様な年長者。
そう言った要素をすべてぶち壊すような存在が、ある。
「だーだー」
「おおー痛いのう痛いのう」
二歳ぐらいの、子供。
なんでここにいるのかわからない、そういう存在。
顎をさすりながら第二長老は言う。
「あまり、ひひひ孫に、怖いおじいちゃんの印象を与えたくないのでのう」
……微妙な気持ちになった。




