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22 技の遺伝


次の日の朝。

封神龍樹の下でぼーとしていた。鍵のかかっていないこじんまりとした家に入る。普段、番人様が過ごしている家だ。

椅子に腰を掛け、ぼーとする。

そろそろ番人様が帰ってきてもおかしくない時間だ。今日は修行の日程とか、そこらへんで今日打ち合わせをする予定なのだ。


辺りを見渡せば置手紙が置いてあった。


『お土産食べてね』


クッキーが置いてある。たぶん、人族の国で作られたものだろう。彫刻等はドワーフが秀でているが、味覚に関しては人族は強い。菓子類はそうとう技術が発達していると聞く。


おいしそうなクッキーだった。なんどか番人様からもらったことがあるが、めちゃくちゃおいしかった。頬が落ちそうなぐらい、っていう表現がぴったりなぐらいだ。


伸びていく手を抑える。

俺がすべて食べてしまっても、番人様は怒らないだろう。だが番人様と一緒に食べたかった。そういうことを思うと、なんとか自分を抑えられる。


封魔一族はカッコいいものが好きだ。例えば、なにかを食べたくても我慢しなければならないとき、『ここで我慢できたらカッコいいよな。誰かのために我慢するのって素敵だ』なんて思って、それを糧に我慢をする。

仲間思いも『なんかいいよな』という感情が関係していて、それでこんなにも結束力が強い。封魔一族はかっこつけの種族なのだ。


ということでお菓子の誘惑を乗り切り、目を逸らす。


……昨日のことを考える。


両親に会えなかったこと。会わないと決めたこと。

軽率な行動だったのかもしれない。いや、実際軽率だった。

昨日の行動でいったい誰が救われたんだ? 


誰も、なにも救われちゃいない。まるで無意味な行動だった。それどころかなにもしなかったほうがよかったぐらいだ。番人様に止められたのに、わざわざ会いに行って……。


父さんと母さんが、ひょっとしたら許してくれるんじゃないかって思ってた。

絶対大丈夫だ、なんてすら思っていた。……もう、俺は昔みたいな子供じゃないのに。


目を閉じる。

所詮俺は、考えなしの子供だ。親の善意を盲目的に信じて、それに縋った。


もう、二度と間違わないようにしよう。せめて、それぐらいのことはしよう。


「やっほー! カルマ~」

「わ」


突然番人様が現れる。相変わらず陰術は大したものだ。こんな距離まできて気づけないなんて。


「どうしたの~。反応が鈍いよ? いつもならもうちょい早く気づけるはずなのに~」

「あ、うん。ちょっと考え事しててさ」

「たるんでおるな~」


わき腹をつつかれる。

俺は少し、無理に笑った。

くよくよして、いつまでも暗いのは嫌だったから。


昨日のことがなかったかのように、番人様は快活に笑う。

消化は俺に任せるのだろう。番人様らしいと言えば番人様らしい。


「さてカルマ。君の成長は順調だ。凡人じゃいくら努力しても到達できない域には入ってる。でも問題は――」

「ヘクトール、だな」


忌み子のせいもあってか、俺の能力はかなりの水準にある。事実として、同じ学園の生徒の中では圧倒的な存在となるだろう。


本来、これだけの能力に競えるものなどいないはずだった。忌み子と言う特性に加え、番人様による英才教育。これがそろっていて俺に勝てる奴なんてどんなやつだよ、と本来なら言ってやりたい。


最近、ヘクトールの様子を偵察してきた。

奴は明らかにおかしい量の星装気を纏っていた。傍から見れば、強すぎる気が奴自身を壊してしまいそうなほど、異常なオーラ。


星装気は身体能力をあげるがゆえに、もっとも戦闘能力に直結する部分だ。

ヘクトールの移動速度はとてつもないものだった。この目で見たものは、番人様までとはいわない。だけど、第二次成長期を迎えてしまえば……間違いなく、番人様を超える。


身体能力が戦闘のすべてではない。だが、重要な要因なのはたしかだ。俺はこの差をひっくりかえせるだろうか?


「そこでだね~。聞いて驚け、必殺技を編み出してきた」

「必殺技? もうあるじゃん」


すでに一つは持っている。『封魔一閃』と言う技だ。先々代あたりの番人が生み出した武技で、人族のものを封魔一族流にアレンジし、開発したらしい。


第一次成長期にしてすでにこれを使えるのは、俺にとって大きな誇りだ。だが、絶対にヘクトールもいつかは習得するだろう。そうなれば、俺のアドバンテージが消えてしまう。


「ちっちっちっ。甘いな~。いったろ、編み出したって。つまり、これは現段階だと俺にしか使えない。それを教えてやるって言ってんだ。ちょー有利になると思うよ~」


自信満々にそう言う。

それを聞いて、心なしか、わくわくしてきた自分がいた。


「どんなやつなの?」

「いや~これね。まじ覚えるの難しいと思う。封魔一族の弱点を克服する技とか、陰術を俺レベルのやつじゃないと使えそうにない技とか」

「とか? 一個じゃないの?」


にやり、と番人様が笑う。


「そうだね~複数習得してきたよ。完全オリジナルの奥義だ。その名も『三種の絶技』っていうんだ。かっこよくない?」

「別に?」


番人様はしょげた。


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