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掴まれた心臓

作者: kisk

 

 この世に命を受けてから、

 誰かに心臓を掴まれている。

 総統、

 いかがですか。

 その椅子の心地。

 どこかに弛みはありませんか。

 私は、

 ずっと心筋が強張っているのです。

 あなたの傍にある、何かのスイッチ、

 切り替えるのは誰ですか。

 それとも、

 どことも知れぬ国の総統、

 いかがですか。

 その椅子の心地。

 どこかに弛みはありませんか。

 あなたの心を受けている、

 ハンモックに緩みはありませんか。

 私は、

 ずっと固いベッドの上で寝ていたのです。

 緊張症に苛まれて、不安に体を揺すっている。

 あなたの傍にある、何かのスイッチ。

 切り替えるのはあなたですか。

 心のうたたねが、不意にそれを切り替えませんか。

 誰かに心臓を掴まれている。

 総統、

 あなたですか。

 私の心臓を握っているのは。

 心のうたたねが、不意にそれを握り潰しませんか。

 ずっと固いベッドの上、

 私は病人のように震えている。

 処方箋はありません。

 人は過敏症だと言うのです。

 私には何もできません。

 物陰の悪口に震えて、

 ただ背中を丸めて震えるしかありません。

 なぜ私は違うのだろう。

 なぜ私は心臓を掴まれているのだろう。

 もしかして、これはただの幻想ですか。

 他愛ない白昼夢が起こした偽りの感覚ですか。

 総統、

 あなたですか、私の心臓を掴んでいるのは。

 それとも、これは幻想ですか。

 あなたの手の平は、不意にスイッチを切り替えたりしませんか。

 あなたの手の平は、絶対安全な場所にあるのですか。

 私の心臓が握り潰されることはないのですか。

 教えてください。

 総統、

 あなたはどこにいるのですか。

 あなたの手の平はどこにあるのですか。

 私の心臓ですか。

 絶対安全な場所ですか。

 私は固いベッドの上で怯えています。

 あなたが不意に、間違ったスイッチを入れないことを。

 次に見る夢が、悪夢であることを。

 私は怯えています。

 私が流す涙は無用の産物ですか、

 まだ見ぬ明日に、偽りの恐怖に流す涙は。

 総統、

 誰ですか、私の心臓を掴んでいるのは。

 あなたですか。

 それとも、私ですか。

 いつこの夢は醒めますか。

 それとも夢ではないのですか。

 あなたの心に弛みはありませんか。

 その椅子の心地。

 柔らかいハンモック。

 私は固いベッドの上で震えている。

 総統、

 いかがですか。

 その椅子の心地。

 どこかに弛みはありませんか。

 私の心臓、掴んでいるのは誰ですか。

 どことも知れぬ国の総統、

 教えてください。

 いつこの夢は醒めますか。

 いつ私は柔らかいベッドの上に寝そべられますか。

 教えてください、

 総統。

 教えてください、

 総統。

 私の心臓、

 掴んでいるのは誰ですか。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  不安にとりつかれる思いが強く波のように迫ってくるようです。  心の中を覗かれているような、自分の心臓をも掴まれているような気持になりました。
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