二話
俺は懐かしい夢をみた。
中学二年生のときの話だ。
俺はいじめられっ子だった。あの時も水の中に突き落とされた。
真冬の寒いプールの中へどぼんっと。
次の瞬間、俺の視界は白に塗りつぶされた。
直後まっかに燃え盛る炎に囲まれた。
ゴウゴウと燃える火ですべての音が掻き消されていた。
突然すぎて何がなんだか理解できていない。
理解できたのは、俺が死にそうなことと、これが夢じゃないってこと。
きっと俺は地球とは違う別のどこかへいると本能で感じた。
っていうか、熱い熱い!!!
俺はこのまま死ぬのか?そんな思考も炎によって燃やされる。
『誰か・・・助け・・て。』
炎の音しか聞こえていなかった俺の耳にしっかりと届いた。
今にも消えてしまいそうな少女の声。
声の主を探してみれば、今にも燃えてしまいそうな程小さな、水色の髪の少女ががれきに足をはさまれて身動きが取れないでいた。
熱いという感情はどこかへ吹きとんだ。
『今助けてやるからな!』
がれきをどけようにも重くてなかなか動かない。俺はもっと力があれば、と心の底から恨んだ。
彼女の左耳のピアスがほのかに光を帯びた。
どこからは分からないが声が聞こえてきた。天の声みたいな。
『力がほしいのか、少年よ。』
ーあぁほしい。この子を助けてあげられる力が。
『そなたはこの娘を暗闇から救えるのか?』
ーそんなのは知らねぇ。でも助けたいんだ。
『承知した。想像を磨け少年。そして輝け、少年。---------。』
最後になんて言ったのかは聞き取れなかった。
だけど何故だか俺はどうしたらいいのか迷わなかった。俺は目を閉じた。
イメージするんだ。イマジネーションをフル活用しろ。余計なことなんて考えなくていい。イメージを膨らませろ。
俺はそっと目を開けた。体中に力がめぐっているような感覚だった。
少女の体の上にあるがれきに手をかけた。
さっきまで苦労していたのがまるで嘘みたいに軽々と持ち上げられた。俺は少女をがれきの下から引っ張り出した。
が、俺と少女の、周りは真っ赤に燃え盛る炎に囲まれていた。
『ウソだろ・・・。どこか炎のない道があれば。』
悔しさに唇を噛みしめる。
『ウォーター・ロード・・・けほっ。』
少女がそう呟けば、彼女の右耳のピアスが輝き、炎のなかに道ができた。
『天の声が聞こえたら次は魔法かよ。なんでもありだな。』
しかし彼女の作った道は五秒もしないうちに炎に食われてしまった。
『まじかよ。』
まじでそれ以外の言葉が出なかった。
いや、ちょっと待てよ。
さっき想像しただけで力が強くなった。ということは、
俺は目を閉じてひたすらイマジネーションを膨らませる。
炎のなかに一筋の水の道が創造される。
目を開けば炎の中に一本の道が開けていた。
俺は少女を抱えて(世にいうお姫様抱っこ)開けた道を駆け抜ける。
俺と少女は燃え盛る炎の地獄から逃げ切ることができた。
どうやら俺は火事にあっている大きな城の中にいたらしい。
某テーマパークにあるような立派な城だった。
~さくちゅ~