後編 親子の絆
そのウェディングドレスの少女は紀恵を見て笑みを浮かべている。
「舞歌ちゃん!下がっててね!ぱっぱとかたずけるから!」
蜩は少女に聞く。
「な、名前は」
少女はウィンクをしながら振り返り答える。
「自然月愛梨!月に輝く自然たちの人間への愛!」
紀恵も疑問な顔をしている。愛梨は紀恵へ向き直るとさっと剣を抜く。剣は緑、青、金、白の色が輝いている。
「植物、水、金、雲」
舞歌はそっと言う。
「愛梨。自然の神よ。この世界を救って。第二の狂気から」
舞歌はそれだけ言ってから蜩と架依を連れ去っていく。
「了解!」
それ以上を見るものはいない。
霊夢達も、舞歌達も。
その結末を知っているのは、自然四姉妹。彼女達だけ。
それから3日。恵利が遊びに来た。
「やっほ。お母さんはあれから寝たまま」
現状報告に来た恵利。ついでにとゲームをやるらしい。後々から来た花乃、天沙、佐江。
「なんでここは溜まり場になっちゃうのよ。まあ謝罪として開いた店なんだけど」
頭を抱えて座り込んだ舞歌。蜩や架依は舞歌のフォロー。
「…ねえ季癒。なぜ今回姿を現さなかったの?」
馴染んでいる風景を一変させ、季癒が現れる。
月陽季癒。太陽の神の母親と月の神の父親の間に生まれた太陽月神であり鬼の存在。片方の髪を縛っているのはツノを隠すため。
「私は私のやるべきことを選んだ。私は出る幕ではないと選んだんだ」
季癒は1つ瞬きをする。悲しげにこう呟く。
「紀恵は私を救った。鬼の力を使いこの世を恨み破壊し続けた私を。紀恵は私の親友だ。罰を与え正しき道へと導く役目を、神である私にも」
それだけ言うと星へ戻ってしまった。
「情が全てを制すとは限らないわ。紀恵」
峰一舞歌は、今回の異変のことを、こう書き記した。
「中にはいろいろな人間のものを特にと大切にする神が多くいる。
四季の神は情を大切にする。愛を大切にする。
人間への愛が、逆に悪の心を生んだ。
人間が心を変えない限り救えない、と。」
舞歌は自分が邪神、その心を忘れない。クトゥルフ神話はこの世界を制している。
「紀恵の心の歪みも、なにかのいたずらなのかもしれないわ。本当人間って愚か。神達の存在に気づかず、戦争を繰り返し」
峰一舞歌は宇宙を眺める。もう2度と戻れない、“私”の故郷。
あの四姉妹は親を持つ。永遠なんて切ない言葉を抱きながら。
「私も…あの時を後悔した…あなた達はどう?今に違和感はないかしら…狂気を歩んでないかしら…」
眠らぬ夜。峰一舞歌は、四姉妹を羨む。親を持つ四姉妹を。
峰一舞歌は、こう書き足した。
「狂気はいつどこにいるかわからない。
神々は順々に忘れ去られていく。」
峰一舞歌は宇宙を眺める。いつかあの四姉妹のように輝くことを信じて。
またいつか。故郷に帰れることを信じる。血の涙を流して。ポタポタと血が流れ落ちる。
自然月完
はい、次回作は「東方三無言〜無を求める者」です。この話はどどんと三つの話をどどんと詰め込みます!詰め込むのは、一つ目は「東方記憶桜〜永遠の綺麗」これは架依が主人公です。二つ目は「東方神鬼絶〜完璧の人間」これは蜩が主人公です。三つ目は「東方道狂気〜運命に逆らう者」誰が主人公だと思いますか?それは見てからのお楽しみ。