中編 戻ってきた悪の心
ある日、狂羅がいなくなっていた。朱子は現代にいると言っていた。だがどんなに探してもいず、朱子の力は弱まっていた。さすがに裏である狂羅がいないとなると、力が弱まるのも当然だろう。
そんなある日。
「ねえ朱子、狂羅が見つかったわ」
舞歌の突然の報告。舞歌はドサリと狂羅を置く。狂羅は傷が所々にあり、服もボロボロ。かなり力を使ったと見えて、いろいろな症状が出ていた。
狂羅は舞歌に言う。
「すまねえ。紀恵を止められなかった」
少々微笑みと掠れた声。それを言ったことを気づかず朱子はすぐに永遠亭に連れて行く。
空は黒くなり、突然とばかり悲鳴が聞こえる。おそらく恵利の悲鳴だろう。
恵利が落ちてくる。支え合いながら続いて佐江、花乃、莉乃も連れてこられる。
「何があったの?」
舞歌が聞く。声がかすれながら莉乃が説明を始める。その説明を簡潔にまとめると、紀恵が四人を襲った。四人は今死にかけているという。
「運んで!」
四人は舞歌の部屋に運ばれる。紀恵が一体何をしたのだろう。
植物の匂いを嗅ぐと。腐った匂いを感じた。舞歌はこれは幻を見せて枯れていないように見せかけている。そう推測する。舞歌は架依、蜩、恋音を呼びだし、武器とスペルカードを持たせるとどこかに向かった。
向かった場所は天空に浮かぶ神々の住まう場所。一番小さな小島に紀恵はいる。
「紀恵。これはなに」
紀恵は振り返り舞歌達を見るが黙ったまま。
「もうこいつは神というより悪魔と呼んだほうがいい。あの二つの役目はなくなった」
狂羅が後ろで呟く。舞歌はなにがあったのかはわからないまま。
「じゃあ、恵利、なにをしに来たの」
枯れている木に触りゼエゼエと荒い息をしている恵利がいる。
「だって…お母さんとの再会がこれだといやだもん…」
「お母さんがいなくなったらどうするんだよ」
「唯一の親だもん」
「あったかいから…」
紀恵を救いたい、その一心。
光が四人を包む。そしてその光は一つになる。光から現れたのは
ウェディングドレス。ハイヒール。髪は長い。
少女だった。紀恵と同じほどの高さ。
「悪魔さん!私が成敗してあげるよ!」