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5.タタカウ

リア:主人公。兄を探すと決め、RPGにログインすることを決めた。


カトルシア:カトル。

ログインしたリアを最初に見つけ、街に連れ帰る。

樹上の街ラシュラン出身。

リアを守ると決め、共に旅立った。


ルーシア:オレンジの髪、ルビーのような紅い瞳。

とあるカプセルを探して旅をしている。

男しか産まれない、風の街サンドラ出身。


ダグラス:過去にカトルの父エルシア、母ユリと旅していた。娘をカプセルに襲われたことが原因でカプセルを嫌うようになった。


次の日目を覚ますとカトルがいなかった。

…お風呂にでも行ったのかな?

じゃああたしも行こうかな、せっかくだし。

そうとなれば早速。

いそいそと温泉に向かう途中、あたしは村長さんに出会った。

「あ、おはようございます!」

「おぉ、これはこれは、おはようございます。どうでしたかの、よく休めたかの?」

「はい!ありがとうございます」

「朝食は部屋に運ばせておくからの。…おぉ、そうじゃ」

村長さんは懐から何かを取り出した。

何か…封筒のようなものだ。

「先程、カトルシアにダグラスの話を聞いての。もし良かったら、これをダグラスに届けてもらいたいのじゃ」

「ダグラスさんに…」

「おぉ…その傷はダグラスがつけたそうじゃの…恐いかの?」

「いえ。大丈夫です。任せて下さい」

あたしは封筒を受け取った。

「あの、ダグラスさんとは…?」

「おぉ、カトルシアの父エルシアがまだ若い時から、あの二人は仲が良くての…カプセルが飛来するようになって街同士が行き来しやすくなると、よくここにも来ておったんじゃ。つい数日前も泊まっていったんじゃが、帰りは寄らなかったようじゃな」

あ…あたしを迎えにくる時のことだ。

帰りは寄らなかったってことは、急ぎ足でここを過ぎたのだろうか?

「よろしく頼む。きっと君ならダグラスも心を開くじゃろう」

「村長さん…はい、あたし頑張りますねっ」



…ちゃぷ。

はぁ、温泉はやっぱり気持ちいい。

あたしは胸元の印を指でなぞった。

カプセルの印…あたしはこの先、カプセルであることで罵られたりするのかな。

こっちにきてから半月が過ぎたけど、未だに酷い扱いをした人はダグラスさんだけ。

そのダグラスさんも、理由があってカプセルに怒っていた。

でもこの先、どんな人がいるのかはわからない…。

じゃぶじゃぶっ。

「!」

水音に顔を上げる。

岩の向こう、誰か来たようだ。

カトルかな…それともルーシア?

「で、ルーシアはどうするんだ?」

「んー、俺としては…そうだな、リアちゃんに着いて行きたいかなー?」

「なっ…だ、駄目だからなっ!リアにちょっかい出すのは許さないぞ!」

「あー、ちょっかい出さなかったら一緒に行っていいんだー?」

「だって…お前、会いたい人がいるんだろ…?リアもそうだし…そりゃ、どっちも会わせてやりたいよ…」

「…うわ、カトル…!」

「な、なんだよっ」

「か、かわいいな!お兄さんは感激したよー」

「うわぁ!やめろよっ…く、くっつくなよ!」

「だってさーリアちゃんは駄目なんだよねー?じゃあリアちゃんにくっついたカトルにくっつけばさー」

「ば、馬鹿っやめろってば!」

「俺だってーホントは女の子がいいけどさー」

…。

どうやら、二人は仲良くなったらしい。

もうルーシアはカトルに話したみたいだ。

あたしはやり取りを聞いて微笑む。

「で、カトルはリアちゃんとどうなのー?」

「え?どうって?」

「告白とかしたのー?」

「えっ…と、それは…」

「え、まだなの!?」

「ち、違うよっちゃんとっ」

あたしは頬がほてるのを感じた。

それが温泉のせいじゃないのは確かだ。

うう、考えてみたら盗み聞きだよね…。

「リアちゃん可愛いからなぁ。カトルが惚れるのもわかるよなー」

「…守りたいと思ったんだ、そばでずっと。リアが俺を見てくれて、笑ってくれたら俺、幸せかも…」

「うわ、言ってくれるねー!俺、カトルに惚れちゃうよー」

「何でそうなるんだよ…」

うー、どうしよう。

恥ずかしさ全開で、あたしはお湯に潜りたい程だった。

うん、ここはそっと離れておこう。

あたしはそろそろと移動し始めた。

しかし。

カァンカァンカァン!!

突如、けたたましい鐘の音が明るくなった空に響き渡った。

「な、何っ!?」

思わず声をあげる。

「り、リア!?いるのか?」

「あぁっ、ご、ごめんなさいっ!盗み聞きするつもりじゃなくてっ…聞こえちゃったっていうかっ」

カァンカァンカァン!

あたしの言葉を掻き消すように、尚も鐘は鳴り響く。

「今は後回しだよ、2人とも。魔物が来た時の警鐘だ!リアちゃん、すぐ着替えて武器を準備して。宿の入口集合だよ!カトル、行くよ」

「わ、わかった!リア」

「は、はいっ!」

魔物が来た?

あたしは脱衣所に向かいながら考えを整理した。

そうだ、ここユーファは周りをぐるりと柵で囲って門を閉じてあった。

それは危険から身を守るためなのだ。

急いで服を着る。

髪からは水が滴るけど、ちゃんと拭いてる暇はない。

ダグラスさんへの封筒をポーチにしまい、あたしは走り出した。


「北だ!森から来るぞ!」

「火を焚け!女子供は避難しろ!」

外に出ると男の人達が武器を取り、忙しく動いていた。

「リア!」

カトルが走ってくる。

「カトル…!」

「魔物の群れみたいだ。俺は一緒に戦う。リアは避難するんだ」

「え…な、何で?」

「訓練したってすぐには上達しない。今リアを群れと戦わせたくない」

「でも…」

「カトル!早く!」

「あぁ!わかった、ルーシア!…リア、お願いだ、避難してくれ」

「……」

そんな…。

あたしは、世界を救うために来たカプセルなんでしょう?

あんなに練習したよ。

この剣は、魔物を倒すためにあるんでしょう?

戸惑うあたしを、カトルはぎゅ、と抱きしめた。

「…必ず守るから」

「……」

カトルは離れると、「リアも早く」と言ってルーシアの方へ駆けていく。

あたしは…カトルを守れるようになりたいよ。

呆然と立っていたあたしに、女の人が声をかけてきた。

「大丈夫?脅えないでいいわ、さぁ、こっちよ」

「あ…」

手を引かれる。

カトルとルーシアの姿が民家の陰に消える。

違う…。

脅えてるんじゃないの…あたしは…戦いたい。

足を止める。

女の人は驚いて振り返った。

「どうしたの…?」

「あたし…戦います」

「え…」

「あたし戦います!」

身を捻り、手を払って駆け出す。

途中で少し振り返ると、女の人が背中を向けるところだった。

…お礼、後で伝えないといけないな。



門の横、見張り台の上にカトルが見えた。

弓を構えている。

門の周りにはユーファの男の人達が並び、遠く森の方を見ているようだ。

その中に派手なオレンジ頭を見つけ、あたしは駆け寄った。

「ルーシア!」

「え!ちょ、リアちゃん!?何してるんだよ!ここは危ないよ!」

「あたしも戦う!剣だって使えるよ!」

「でも…相手は群れだよ?まだ剣持ってすぐだって聞いたし!危ないよ!」

「あたしはっ…あたしは世界を守るの!…カトルの守りたい場所だから…だからっ…」

「リアちゃん…」

必死に声をあげるあたしを、ルーシアは少し驚いたような顔で見つめる。

…ルーシアはあたしと似た細身の剣を持っていた。

彼は世界を旅しているんだし、自分の身を守る術を身につけているのは当然だろう。

でもあたしだって…そのために練習したんだから。

あたしが剣を抜いて構えると、ルーシアはため息をついた。

「わかったよ…でも約束して、俺のそばから離れないでね」

「うんっ」





やがて粉塵を上げ、黒い波がこっちに向かって来るのが見えた。

ドドド、と低い地鳴りが聞こえる気がする。

それが何か…犬のような獣の群れだとわかるまで少しかかった。

「矢を放て!」

誰かの合図で火のついた矢が一斉に空に舞う。

一瞬、カトルの姿を確認する。

彼は弓を引き絞りいくつもの矢を放っていた。

ヒョオン、ヒョオンと矢の音が響き、先頭の獣が何体か転げるのがわかる。

「進めぇーー!」

オオォォーー。

地鳴りに負けない雄叫びを上げ、男達が駆け出した。

あたしはその雰囲気に圧倒され、びくりと身を引いてしまう。

「行くよ!」

ルーシアが駆け出すのに一瞬遅れて、慌てて着いていくけど…。

…な、何?これ…。

うまく走れない。

恐怖で身がすくんでいるのだと気付いたあたしは、戸惑った。

目の前で獣の波と人がぶつかる。

犬のような黒い獣が牙を剥き飛び掛かるのを、ルーシアが斬り放った。

「ギャヒンッ」

断末魔をあげ、どさりと地面に落ちたそれが、するすると解けて溶けていく。

どさっ!

「っ!」

後ろに投げ出された魔物に、びくっとして振り返る。

粉塵の中、雄叫びと獣の鳴き声が折り重なってあたしの恐怖をあおった。

「リアちゃん!」

「え…きゃあっ」

「ガォウ!」

飛び掛かられて後ろに倒れ込む。

辛うじて突き出した剣が獣を貫いて、牙が喉元に届く前にそれが解けていった。

「何してるんだよ!早く起きて!」

「…っ」

やだ…何?何なの?

恐い。

…恐いよ。

これが、戦うってことなの?

「リアちゃん!…くそっ」

次にあたしに躍りかかる獣をルーシアが蹴飛ばした。

あたしは何故かそれを映画のような感覚で見ている。

身体が言うことをきかないのだ。

「ルー、シア…」

「リアちゃん?っ…」

ルーシアの背中から獣が飛び掛かる。

あぁ!と思ったのに、声が出ない。

ルーシアが前のめりに倒れ込んだ次の瞬間、白銀のプレートが光を反射してあたしは目をつぶった。

「馬鹿っ!リア、何でここにいるんだ!」

…カトルが腰に挿していた短剣でルーシアの背中の獣を貫いていた。

「立て!リア、リアっ!」

「…あ」

どうしていいかわからない。

ルーシアが立ち上がり、カトルに言った。

「カトル、リアちゃんを連れて下がって」

「…っ、わかった」

カトルはあたしを引き起こし、門の内側まで戻る。

「ここにいろよ、わかったな?」

その時のカトルがあたしを責めている気がして…あたしはさらに動揺し、何も応えられなかった。

門の内側には負傷した人が何人か戻り、応急処置を受けている。

「君は!どこか怪我は!」

「…だ、だいじょ…ぶ…です…」

やっと声を絞り出す。

処置専門の人だろうか。

その人はあたしの様子に気がついて、そっと笑った。

「恐かっただろう?一緒に戦ってくれようとしてくれたんだな。ありがとう。さぁ、もう大丈夫だ、君が無事で何よりだよ」

「…!」

あたしはガツンと頭を叩かれた気持ちになった。

何を…しているんだろう?

みんな戦ってるのは、本当に命懸けなんだ。

そんな当たり前のことを、やっと理解する。

「あたし…あたしも、手伝います…」

そう言うと、声をかけてくれた人は微笑んであたしにも処置用のキットを分けてくれる。

あたしはよろよろと立ち上がり、負傷した人の傷を消毒し包帯を巻いた。

ひどく腫れた箇所にはポーチから薬草を出して塗り付ける。

それが、あたしに出来る精一杯だった。


…やがて地鳴りは消え、カラァン、カラァンと鐘が鳴らされた。

あぁ、終わったんだ…。

戻ってくる人の中にも負傷者は多かった。

あたしは少しでも力になれればと、処置に走り回っていた。

「リア!」

「あ、カトル…」

あたしを探していたのか、カトルは息を切らせていた。

そして彼はあたしの所にやってくると、いきなり。

パシィッ

「っ!」

頬が熱くなる。

カトルに打たれたのをすぐ理解した。

「馬鹿!何で避難しなかったんだ!」

「カトル!」

後ろからルーシアもやってくる。

「死んだらどうするつもりだった?リアだけじゃなく、ルーシアも巻き込んだかもしれない。わかってるだろ?」

カトルが怒るのも当然だ。

あたしは戦えるだなんて思ったから…ルーシアまで危険に晒した。

「何で戦場に来たんだよ?言っただろ!まだ無理だって!」

わかってる…でも…でもねカトル…。

あたしは堪え切れなくて、カトルを見つめたまま涙を零してしまった。

世界を…カトルを…守りたかったんだよ…。

その気持ちは、今だって変わらない…。

「リア!」

「やめるんだ、カトル」

さらに問い詰めようとするカトルの腕を、ルーシアがぐいと引いた。

「ルーシアっ」

「落ち着けよ!周りが見えてないのはカトルだろ!リアちゃんは応急処置の手伝いをしてるんだよ、今その話をする時じゃない。大体、女の子に手をあげるなんて言語道断!」

「…あ…」

カトルは我に返ったように怒らせていた肩の力を抜き、あたしを見た。

「…お、俺…ご、ごめん」

「…」

応えられなかった。

「俺達は部屋に戻るから、落ち着いたらおいで」

ルーシアが優しくささやいて、カトルを連れて戻っていく。

いつから見ていたのか、声をかけてくれた人があたしの横にやってきて言った。

「もう大丈夫だよ、仲間のところに行っておいで?…君がいてくれて助かった、みんな感謝してる。ほら」

「う…うぅ」

ボロボロと涙が溢れた。

応急処置をした人達が、あたしを慰めてくれるのが聞こえる。

「最初は俺も恐かったさ。いいんだよ、その恐さを忘れないでいたら」

「悪かったなぁ、ここのために恐い思いさせちまって」

「連れには俺達からも言っておくぞ、君はよくやってくれた」

それが温かくて、熱いくらいで…あたしは泣きじゃくった。

涙が枯れるまで、彼らはあたしを見守ってくれる。

あたしが戻ると決めた時、彼らはあたしの背中を押してくれたのだった。



部屋の前まで来たあたしはドアの前で迷っていた。

…中に入る勇気が中々湧いてこないのだ。

どうしようと戸惑っていると、唐突に中でカトルが声をあげた。

「あーっ…俺、最低だ…どうしようルーシア」

「うわ、大人しいと思ったら何、急にー?」

「だって…リアのこと叩くなんて…。それにさっ…何で戦おうとしたのかわからないんだよ…あんなに恐がってまで。おかしいだろ?」

「…カトル、これはさ、俺が言うことじゃないんだけどさ…。リアちゃん、カトルのために戦いに来たんだよ?」

「え?」

「カトルの守りたい場所だから、世界を守るんだって言ってたんだ。俺、驚いたよ。リアちゃんはさ、世界を守るカプセルになろうとしてるんだって」

「……世界を守る?…俺のため…。る、ルーシア…俺、リアに謝ってくる!」

「え、ちょっと待ってよ。リアちゃんが落ち着いたら戻ってくるよ、待ってあげ…って、聞いてないし!」

ばたばた、と足音がして、次いでバタン!とドアが派手に開いた。

「うわぁっ、り、リア!」

「…っ」

あたしはあまりに突然だったのでなんて言おうか迷ってしまった。

ぱくぱくするあたしに、カトルも戸惑っている。

「…」

がしっ。

急にカトルはあたしの腕を取り、部屋を飛び出す。

ルーシアが中で手を振るのが見えた。

カトルは黙ってあたしを引いて人気のない一角まで来ると、手を放してばっと振り返る。

「ごめんなさいっ」

「え、ええーっ」

いきなり深く頭を下げるカトル。

「馬鹿は俺でしたっ!ごめんなさいっ」

ち、ちょっと…。

予想外な謝り方に困惑する。

いや、なんかあの…申し訳ないっていうか。

「か、カトル…あの、顔上げて…」

「無理」

「えーっ!」

「…ごめん、俺…リアの気持ち考えてなかったのが恥ずかしい…。お前の顔、見れないよ…」

「…ううん、あたしが自分を過信してたから…だからね、カトルは悪くないんだよ」

「…だって俺…避難するよう押し付けて。…そばで守るって言ったじゃんか…?ならさ…最初から一緒に戦って、俺がお前を守れば良かったんだよ」

カトルは顔を上げない。

その口から出るのは、後悔ばかりだった。

「リアに手をあげるなんて最低だ…最悪だ。ごめんリア…ごめんな」

「…」

あたしはそっと手を上げて、カトルの黒髪を撫でた。

カトルが小さく肩を震わせたのがわかる。

…彼は悪くないのに。

あたしは少し体勢を低くして、カトルを抱き寄せた。

「うあ…、り、リア?」

「これなら、顔合わせないでしょう?」

カトルの肩に顔を埋め、ひたすらにその背を撫でた。

カトルが気に病むことなんて何一つないんだよ…?

あたしの気持ちが伝わればいいと思った。

…カトルは最初戸惑っていたけど、やがてあたしの背に腕を回す。

その温もりを、あたしは全身に感じることが出来た。

「…カトル、ごめんなさい…もう我が儘言わないようにする…」

「馬鹿。いいの…俺が悪かった…」

「…あのね」

「うん…」

「あたし、あたしも、カトルを守りたかったの…守れるくらい強くなりたかったの…」

「…!」

言ったら、乾いたはずの涙が溢れてきた。

守りたい。

大切だから、守りたかったの。

なのに、あたしは弱くて、戦うことさえ出来なくて。

「…馬鹿な奴」

カトルは優しく言うと、あたしを強い力で抱きしめた。

「馬鹿な奴…ゆっくり行こうって言っただろ?…これから…これから、一緒に…強くなろ、リア…」

どうしようもなく、弱かった。

そんなあたしを、カトルは放さなかった。

「…好きだ、リア、大好きだよ…」

耳元で囁かれて、あたしの涙はさらに溢れ出す。

愛しい。

こんなに苦しいのにその愛しさは心地よくて、切ないのに嬉しい。

「カトル…あたしも…」

言おうとすると、カトルの身体が少し離れた。

綺麗なエメラルドの瞳が、あたしを映す。

「……」

黙ってそれを見ていると、カトルは微笑んだ。

「続きは?…聞かせて」

「え…ずるい、か、顔見てなんて言えないよっ」

「あはは、お前、可愛いなっ」

!!

あたしは目を見開いた。

カトルの唇が、あたしの頬に触れたからだ。

それは一瞬だったけど…。

…い、今の…。

「戻ろっか…ルーシア待ってるしな」

カトルはあたしの手に指を絡ませ、歩きだす。

今のは、キス…?

う、うわぁ。

あたしは頬が熱を帯びるのを感じた。

か、カトルってば、カトルってば!

斜め後ろからカトルを伺うと、カトルはちらっと振り返る。

「あ、あんまり見ないでくれる?」

「だ、だって!」

「う…リア、か、可愛いから…つい…嫌だったら、その、ごめん…」

「えっ、嫌じゃないよっ?」

「…」

「…」

お互い黙ってしまう。

は、恥ずかしい…。


そうこうして俯いてる間に部屋につき、入るとルーシアが飛び付いてきた。

「リアちゃんー!」

「きゃあ!」

「うわぁ!」

カトルとあたしをまとめて抱きしめたルーシアは、笑って言った。

「雰囲気が初々しいから俺、ヤキモチ妬いちゃうなー!」

「う、初々しいってなんだよ!」

「いいの!仲直り出来た恋人は絆が強くなるんだよー!」

恋人…。

恋人かぁ…。

なんだかぽわっと幸せな気持ちになる。

恋人…えへへ。

「ほーら、リアちゃんは満更でもないみたいだよカトル?」

「ぇっ…り、リア…?」

恋人の絆かぁ…うふふ。

「ルーシア…これ、完全に自分の世界にいるんじゃないか?」

「あー…はは、は。カトル、朝食にしようかー」

「あ、あぁ…」

二人はにやにやするあたしをほって置き、朝食を運んでくれるようお願いしに行くのだった。



お読みくださってありがとうございます。


順次更新しますので、

お付き合いいただけたら幸いです。

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