ミートパイの季節
ミートパイの季節が今年もやってきた。
街々の表では鼓笛隊が楽器を打ち鳴らし、その周りを子供たちが駆け回る。
表で大勢の大人たちが飲んだくれ、路地裏では貧民とギャングが瓶のウィスキーを回し飲む。
「ミートパイの季節がやってきた!」
街道では至る所でミートパイを称える歌が聞こえてくる。
街を救った食べ物、偉大なる三人のミートパイ。
何度も繰り返し歌われるフレーズが、耳に木霊して残る。
時刻が正午を過ぎるとき、そんな街々の歌をかき消すように大きな鐘の音が街を包んだ。
人々はグラスから各地を離し、顔を上げると一斉に街の中心へと走り出した。
大人も子供も、公務員にギャングに学生も、我先にと人を押しのけ、かき分けより近い場所へ潜り込もうと必死に足と手を動かす。
彼らが目指す街の中心、パイの広場には、玉ねぎに人参とグリーンピースが大きな釜で煮られていた。
そして、その釜の上、木で作られた足場の上には三人の裸の男女がいた。
彼らは自らの体にバターを塗っており、太陽の光をキラキラと反射させていた。
真ん中の男が多くの群衆に向かって手を振ると、彼らは手を振り返し歓声を上げた。
やがてその歓声は、この祭りの歌、ミートパイの歌へと変わった。
街を救ったミートパイ。
三人の賢者が作ったミートパイ。
玉ねぎに人参、グリーンピースをあめ色に炒め。
少しの水とケチャップを入れたら。
お肉を入れて具を作ろう。
後はお皿に取り分けて。
生地で包めば出来上がり。
街を救ったミートパイ。
三人の賢者のミートパイ。
歌が終わると、広場は物音一つしないほど静かになった。
群衆は、ただただ足場の上の三人を見ていた。
風が強くヒュウと吹いたとき、男が足を前に出した。
そして、釜へと飛び込んだ。
後の二人もそれに続き、釜へと飛び込んだ。
一瞬の静寂の後、また広場は大きな歓声に包まれた。
その歓声は、先ほどと同じようにミートパイの歌へと変わった。
街を救ったミートパイ。
三人の賢者が作ったミートパイ。
おいしく食べようミートパイ。
賢者を食べようミートパイ。
賢者を食べようミートパイ。
賢者を食べようミートパイ。
歌は、いつまでも広場で歌われ続けた。
もうすぐ、今年のミートパイの季節は終わりを告げる。
街の人々は、来年の季節をまた心待ちにして、各々の生活へと戻っていくだろう。
来年こそは、自分が賢者に選ばれると信じて。
賢者を食べようミートパイ。




