表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ミートパイの季節

作者: 東京多摩
掲載日:2014/05/14

 ミートパイの季節が今年もやってきた。

 街々の表では鼓笛隊が楽器を打ち鳴らし、その周りを子供たちが駆け回る。

 表で大勢の大人たちが飲んだくれ、路地裏では貧民とギャングが瓶のウィスキーを回し飲む。

 

「ミートパイの季節がやってきた!」


 街道では至る所でミートパイを称える歌が聞こえてくる。

 街を救った食べ物、偉大なる三人のミートパイ。

 何度も繰り返し歌われるフレーズが、耳に木霊して残る。

 時刻が正午を過ぎるとき、そんな街々の歌をかき消すように大きな鐘の音が街を包んだ。

 人々はグラスから各地を離し、顔を上げると一斉に街の中心へと走り出した。

 大人も子供も、公務員にギャングに学生も、我先にと人を押しのけ、かき分けより近い場所へ潜り込もうと必死に足と手を動かす。

 彼らが目指す街の中心、パイの広場には、玉ねぎに人参とグリーンピースが大きな釜で煮られていた。

 そして、その釜の上、木で作られた足場の上には三人の裸の男女がいた。

 彼らは自らの体にバターを塗っており、太陽の光をキラキラと反射させていた。

 真ん中の男が多くの群衆に向かって手を振ると、彼らは手を振り返し歓声を上げた。

 やがてその歓声は、この祭りの歌、ミートパイの歌へと変わった。


 街を救ったミートパイ。

 三人の賢者が作ったミートパイ。

 玉ねぎに人参、グリーンピースをあめ色に炒め。

 少しの水とケチャップを入れたら。

 お肉を入れて具を作ろう。

 後はお皿に取り分けて。

 生地で包めば出来上がり。

 街を救ったミートパイ。

 三人の賢者のミートパイ。


 歌が終わると、広場は物音一つしないほど静かになった。

 群衆は、ただただ足場の上の三人を見ていた。

 風が強くヒュウと吹いたとき、男が足を前に出した。

 そして、釜へと飛び込んだ。

 後の二人もそれに続き、釜へと飛び込んだ。

 一瞬の静寂の後、また広場は大きな歓声に包まれた。

 その歓声は、先ほどと同じようにミートパイの歌へと変わった。

 

 街を救ったミートパイ。

 三人の賢者が作ったミートパイ。

 おいしく食べようミートパイ。

 賢者を食べようミートパイ。

 賢者を食べようミートパイ。

 賢者を食べようミートパイ。


 歌は、いつまでも広場で歌われ続けた。

 もうすぐ、今年のミートパイの季節は終わりを告げる。

 街の人々は、来年の季節をまた心待ちにして、各々の生活へと戻っていくだろう。

 来年こそは、自分が賢者に選ばれると信じて。

賢者を食べようミートパイ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ