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懺悔の心

「ぎ、があぁ……っ!」


 森の中に響き渡った絶叫は段々小さくなり。やがて消えた。



 それを聞いて崖に座っていたアーサーは、星の瞬く空を見上げた。そのアーサーの横には、糸の切れた人形の様に転がるアルフェイガスがいる。彼は雷に焼かれていた。



「はあぁ……」


 大きく溜め息をついてみる。が、それでもアーサーの気分はすっきりしない。

 アーサーは人殺しが好きではなかった(まあ、人殺しが好きというのも、それはそれで問題だが)。アーサーの場合、例え相手が極悪人だったとしても、という感じなのだ。

 アーサーは人の過去を雷の『分身』で読むことが出来る。だから余計に、自分が潰す命の鼓動を感じてしまう。その者の生きた道を。その時感じた想いも、全て。


 しかしそれは危険人物を生かしておいていい理由にならない。要するに、100人の命と1人の命、どちらをとるかと言う話なのだ。100人を助けたいと思うのなら1人を斬るしかないし、逆に1人を生かしておきたいなら、100人の犠牲を覚悟するしかない。なんにせよ、確実に犠牲は出る。


「割り切るしかない……はずなんだけどなぁ」


 と、その時、アルフェイガスが動き出した。


「……まだ生きてたのか」


「今まで生きてこれたのは執念があるからじゃよ」


 そう言いながら、僅かに残る力で体を起こし燃え盛る教会を虚ろに見て言った。


「何年もかけて出した答えは間違っていたのじゃろうか」


「間違ってるとは思うけどな。今回お前を殺したのは負があったからだ。もっと別のものに頼っていれば長生きできたのかもしれない。…ま、その場合俺が個人的に潰しに行くが」


 そう。ここに来たのはあくまでも、情報収集の為。そして、殺すのは証拠隠滅の為。


「でも……もしかしたらこれもこれで正解なのかもしれないな…。弱きは強きに妨げられるもの、それは世界の心理に在るものだから…」


 アルフェイガスはそこで大きく目を見開いた。敵が自分の正当性を認めたことに驚いたのだろう。しかしアーサーはその様子を見ることなく、もう一度アルフェイガスの頭の中に雷を起こした。二度と起き上がれない様に。

 アルフェイガスは再び、地面に倒れた。


 数十秒黙祷を捧げてから、アーサーは再度溜め息をつく。


 世界の為などと言っても、結局自分達のしていることも結局は人殺しに他ならない。どんな正当性を付けたって、それが変わることなど……罪が無くなることなどない。本当は、アルフェイガスに正当性を説く権利すらない立場だろう。

 しかしだからこそ、毎日黙祷を捧げているのだ。せめてもの償いに。死んで償うことのできない自分にできる唯一の償いだと信じて。……例え、これが完璧な自己満足だと分かっていても。




 幸せとは何なのだろうか。大勢の幸せの為に、一人の幸せを奪っても良いのだろうか。



 ―――違う。そんなのは断じて違う。幸せを奪う権利など……




「偉いな」


 突然、柔らかな声が響いた。その出所を見ると、真っ直ぐに腰にまで伸びている束ねた青い髪を揺らしながら歩くロイドがいた。目などの顔のパーツがそれぞれ理想的な位置に付いていて、男女共に羨ましがる顔だ。

 その顔を少し睨むアーサー。


「人の心を勝手に読むな。……てか、偉いって何がだ?」


「ずっと殺す人の幸せまで考え続けてることがだよ。んなもん、俺には無理だ。……まぁ、ぐだぐだと悩み続けるお前は見てて面白いがな」


 そこでロイドは表情を真剣なものに変える。


「だがな、こんな戦闘をしたり、戦争をすることで今まで成り立って来たんだからな。忘れんなよ」


「ああ分かってる……はずだよ」


「………だといいがな」

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