求める力
サグリアは、孤児だった。お金も、食べ物も無かった。
だから、生きるために物を盗んでいた。別に盗ることを悪いとは思っていない。何せ、自分の周りの者もみな同じようなことをしていたのだ。『無い』なら『盗る』のが当たり前。そんな世界で育ったのだから当然と言えば当然だ。
生きる為、見つからない様にこっそりと盗んで。捕まった者に待つのは、死。
死にたくないと言う死への恐怖、その気持ちが何も無かったサグリアに力を与えていた。
だが、生き物は必ず1回は失敗するものだ。ある時、とうとう捕まってしまった。そして気の狂うような拷問に掛けられて、罪を吐かされた。
嫌だ、とサグリアは牢屋の中で叫んだ。なんで俺が、俺だけがこんな目に合わなければいけないのか、と。他の者だって皆同じことをしていると言うのに。そう思った。
そんなサグリアに、わざわざ保釈金を払い、食べ物を与えて暖かく迎え入れてくれたのが、あの人だった。
アルフェイガスの差し出した食べ物に必死で食らい付いていると、穏やかな声で問い掛けてきたのだった。
『強くなりたいか』、と。
彼は、激しく首を縦に振った。
……それから2週間も経つと、既に力が手に入っていた。誰にも負けない力が。
最初は勿論、嫌だった。森中に体力を削ぐ罠を張り、教会に泊めさせ寝ている間に殺す、それが嫌だった。
だが、彼は何があろうとアルフェイガスに着いていくと決めていたので、ずっとそれを繰り返していた。……そして、気がつけば何も感じなくなっていた。
あるとき仲間に聞かれたことがある。何故そこまでして力を求めるのか、と。その時サグリアは自ら進んで人殺しをしていた。
その質問に対し、サグリアは短く答えた。それは『この世の理不尽に飲み込まれないように』、と。
この世は、どこまでも理不尽だ。力無き者は力ある者に妨げられ、そして死んでいく。
力があれば、力さえあれば。………その思いが彼の正義を追いやった。
だが……
彼は倒れてしまった。アレスとか言う侵入者が作り出す、魔法に。力に。
……そう、あの時の様に。
お前は結局何も変わらないじゃないか。…そんな自分を嘲笑う声が彼の中で響く。
「…違う…それは違う……違う違う違うッ…!」
その瞬間、パチンと弾ける音がした。それは、何だったのだろうか。もしかしたら、それは最後の彼の理性だったのかもしれない。
想いと共に、彼の体中が熱くなって狂気が駆け巡る。有り余る力を、一刻も速く放出したくなる破壊衝動。壊したい。壊さないと気がすまない。
「目の前の存在を消せ消せ、けせケセッ!消せ、消せ、消し去ってしまえぇぇ!!」
狂戦士。一時的に負に体を支配される代わりに、とんでもない程のパワーが貰えるという、悪魔との契約。悪魔に魂を捧げれば捧げる程貰えるパワーは増える。
きっとサグリアは沢山の罪無き人々を殺したのだろう。それが分かるくらい、薄汚い『負』は大きかった。サグリアの3倍は軽くある。それがサグリアの体に炎の様についている。
「……俺は…お前を……殺す!殺してやるッ!!」
「へっ、寝言は寝てから言いな。薄汚い怪物くんよ」
途端、掻き消える二人の影。
次の瞬間、真ん中辺りで衝撃が走った。その溢れる力は真正面からぶつかり、地面を砕く。
「…聞け、狂戦士。力は全ての世界を支配する。だが、力には言葉も含まれているんだとよ…」
「知るかアァァァッ!」




