狂いし剣士
「なんなんだ!モンスターだと!?」
戸惑う男達の声が聞こえる。
男は全員で20人はいるが、全員同じ場所に固まっていた。しかも、全員が燃えやすそうなコートを着ている。それゆえルギナスの青き炎の餌食になったのは当然だと言える。男達の約2分の1は抵抗することもなく、混乱したまま炭と化していった。
モンスターというのは、力で構成された、一種の試練の事だ。彼らは様々な形をしていて、地面から現れては人を襲う。彼らを倒すと力はその者に吸収されていくのだが、ほんの一部だけはお金に代わるシステムになっている。ここでも創造の力が使われているのは、言うまでもない。
で、大事なのがモンスターは建物を襲わないということ。モンスターは、意思というものがないのでなぜ自分たちがいるのかを知らない。だから、人の町に行って壊滅的被害を出すかもしれないということで、その行為が出来ないようになっているのだ。
つまり、男達はこの教会内にモンスター(実際は違うが…)が出現したことが、驚きだったのだ。
近くでルギナスがその光景を見ていたが、後ろから来る皮膚を刺す異様な殺気に気が付いて前に飛び出した。同時に背中から大斧をとる。
それを後ろに振り向きながら振るのと、後ろから来ていたサグリアの大剣が振り下ろされるのは同時だった。
ガキンッと音が鳴る。それと同時にルギナスの『分身』は消えた。二つの事を同時に考えるのが苦手なルギナスは、『分身』には気が回らなくなったのだ。
「貴様は、…アレスだったか?何をしている。」
大剣を上からぐいぐい押しつけらがらサグリアは尋ねた。彼の声には我が家が燃やされたことに対する苛立ちが混じっていた。
ルギナスは斧の柄の部分で防ぎながら、その問いに平然と答える。
「何をしているって、そりゃ燃やしたんだよ。こんな腐った建物なんか要らねえからな」
「なんだとッ!?」
「お前らは、人を殺してんだ!それなら、殺される覚悟は、できてるよなァ!?」
次々とサグリアから出される斬撃を危なげなく弾くルギナス。
「っ!おらあぁっ!」
サグリアは懐に隠していた短剣を纏めて取りだし、投げた。それも一気に6本全て。
魔法によって強化されたその短剣は、ルギナスの鎧同士の隙間に刺さり。
「ありゃ、残念」
ということは無かった。ルギナスが¨何か¨を発散すると短剣は目標に触れることさえ敵わず、地に落ちたのだ。
「くっそ、なんなんだよ!あんたらは!」
「…ほんとにな。何なんだろうってつくづく思うよ。強いて言うなら俺達は化け物かね?あんたらと同じさ」
返ってきた言葉は静かだった。小さくしみじみと悲しそうに呟き、雰囲気を切り替え。
いったんサグリアから距離をとった。そして軽々と斧を、常人ならばありえないスピードで次々に振った。そうして出来た空気の刃は、与えられた魔力によってか上下左右に動きながらサグリアに向かって襲い掛かる。
それを上に大きくジャンプすることでサグリアは避けた。決して軽いとは言えない鎧を着ていたはずだが、そんなこと関係無しとばかりに大きく。
標的を失った空気の刃は、サグリアの後ろにあった教会を切り裂いてどこかへ行ってしまった。が、サグリアは空中からルギナスの口の動きをはっきりと読み取った。
「…『鎌鼬よ、その真価を示せ』」
瞬間、森を突っ切っていったはずの空気の刃が再び戻ってきた。
サグリアは驚き、咄嗟に空中で身をかわすが、地面に足をつけている時より大きく動けない。その為跳ぶ時も持っていた大剣は吹き飛び、サグリアはいくつもの刃に切り裂かれた。辺りに紅い花が咲き、どしゃっ、と言う音を立ててサグリアは墜落した。
「なっ………!」
突然始まった戦闘のせいで、空気同然だった男達の誰かが息をのんだ。今のサグリアは誰が見ても重症だと言えるだろう。
彼らにとってサグリアはアルフェイガスの次に強い、憧れの雲の上の存在だ。そんな雲が、血にまみれて落ちてきたというのが信じられないのだろう。
雲が、落ちた。そんな呟きが誰かから漏れた。
が。
次の瞬間、サグリアは何事も無かったかのように立ち上がった。
怪我は確かにしている。浅いとは言えない切り傷はしっかりと体にダメージを与えているのも確かだ。
ならばなぜかとルギナスは観察し。そしてよく見ると、サグリアが薄汚い黒い気を纏っていることがわかった。めらめらと、静かに燃え上がる、炎の如く。
「狂戦士、ねぇ。…あんた、ほんとに俺達と同類なのかもな」
そんな、呆れたように紡がれたその言葉の意味を、サグリアは知らない。
戦闘って描写が難しい…




