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4人の元人間

 空間の中の世界の1つ、ベースガイア。


 そのとある寂れた宿に4人の客がいた。その内の3人は机に突っ伏して転寝状態だが、1人は机の一点を腕を組んで見つめていた。

 彼の名はアーサー・ヴァンスキン。見た目で言うならば、その姿は10代半ばといったところだ。黒いコートを羽織り、細身の剣を腰にさしたその姿はまさに若き王者の風格だった。

 しかし、彼の本当の年齢は2341歳。それは人間ならばありえない歳だ。



…そう、本当に()()であるなら、と言う話だが。



 彼も、元は人間だった。しかも、闇の時代に光を与えんとする生ける勇者だったのだ。しかし彼は世界の命と引き換えに、人間であることを捨て不死の命になった。

 ………ここにいる3人の仲間と共に。




 やがて、突っ伏していた3つの頭は動き始める。



「はあぁあ。昨日はどうだったんだ?アーサー」


「ん?ああ、やっと一匹見つけた」


 金髪の寝癖が強い頭をかき欠伸をしながら尋ねたのは、アーサーの右手側に座る男。彼の名はルギナス。

 背は低め。色褪せた朱の鎧を着て自分と同じ位の大きさの大斧を、苦もなく背負っている。鎧には幾つもの傷が付いており、幾多もの戦を潜り抜けてきたことが分かるだろう。



「やっと引っ掛かったか…」


 次に笑いながらそう言うのはアーサーの左手側、レゴラスだ。一晩中机に突っ伏していたからか、額にはくっきりと赤い跡がついていたが、気にせず人を嘲るように笑っている。そして、その闇に紛れそうな黒装束を揺らして立ち上がった。



「狩りの時間、だな」


 最後に起きたのはアーサーの机を挟んで向かい側のロイド。彼は、蒼くさらりと流れるような、長い髪を後ろで束ねていた。一見すると女にも見えるが、これでもれっきとした男だ。

 彼は机に立て掛けていた樫の杖を手に取り、握りしめる。




 この4人は不死の命と共に、ある使命を授かった。




 それは、世界の管理者になり、世界を監視すること。



 世界の管理者は、この世界系列に30人(人かどうかはさておき)位いる。その内9人の管理者は、創造主たる蒼天柱(そうてんちゅう)がある空間にいるのだが、残りはその9人の部下としてそれぞれの世界で気ままに暮らしていた。

 彼らは、何か危ないことが起こっても、その世界の住民にある程度解決させ、大抵は動かない。しかし、世界が滅びかねないという異常事態が起こった時だけは、別だ。

 その時は、9人の上級管理者の方針のもと、アーサー達などの下級管理者が食い止める。食い止め方は世界の住人に見せつけるようにすることもあれば、影で表沙汰にすることなく行う事もあった。



 どちらにせよ彼らは、世界の危険をいち早く察知しする必要がある。その為に毎日、世界の力の流れを読んで¨監視¨をしていた。


 そして、それがアーサーの最初の言葉に繋がる。反応があったのだ。世界の危機の。



「情報はあんのか?」


「分かってる癖に聞くな、…零だよ」


 やれやれと言わんばかりに、首を横に振るアーサー。


「まっ、いつも通りではあるな」


「確かに…」



 4人は、お互いに拳をぶつけ合う。





 彼らの仕事の始まりだ。


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