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"跑不掉"

掲載日:2026/02/20

陽は落ち、音も無い

それでいて二階の廊下では、幾つかの首の無い人影が走るように蠢いて居た



着用して居る服から考えれば、これらは僕の父、母、妹であると推測出来る


念の為、妹の部屋の扉を開ける

確かに暗い部屋の中、妹の姿は認められなかった


もう一つ絶望的な事が有る

この頭の中の感覚が嘘でないならば、『僕はこの一日を、最低一回は繰り返して居る』



これが夢であれば

そう思ったのかどうか解らないが、僕は部屋を覗きこんだまま、妹の名前を呼んで居た


よろめき走って居た首無し達が、一斉に僕の側に躰を向ける



足が動かない………!


恐怖によるものなのだろうか

逃げ出す事が出来なかった



三対の腕が僕を掴む─────



─────



目覚まし時計の音は、常に不愉快だ

無論そうであるように造られて居るから、だが


今朝は、うつ伏せで目覚めた

疲れがあるのかも知れない


『昨夜の出来事は』


僕は思った

『現実だったのだろうか』



合理的に考えるのなら、疲れによる悪夢だろう

しかし、家族と思しきものたちが僕を掴む指の感触や、不可解な『時間の繰り返し』の感覚は、ある程度のリアリティを持ったものだった


着替える

顔を洗う

食卓に着く

家族全員の、首元を凝視する


誰一人、首の取れそうな者は居なかった


朝は、皆がせかせかして居る

不信感を拭える程の会話が行えるでもなく、僕は学校に行く時間を迎えた



─────



帰宅する


昨夜、家族に異変が起きたのは夜10時

夕食の時間は問題なく過ぎていく


我が家は特別仲が良い訳ではなく、特別仲が悪い訳でもない

いつものように会話は弾まず、だからといって不審な点は無い


昨晩、僕は夜10時少し前に入浴し、その後異変に出くわした

前後で何があったのかを確認する為、僕は前日より少し早く入浴し、家族の様子をそれとなく視ようと思った



湯船の中で、不意に怖くなる

『もし僕が入浴する事や』『家族から目を離す事が異変の引き金なのだとしたら?』


がたっ、と音がした


風呂場から出る

脱衣場でもある洗面所で水分を吹ききった上で、服を着る

焦りからか、少し濡れたまま服を着てしまったようだった


ドアを開けると、その扉を開ききらないまま様子を伺う

偶然歩いて居た妹が、「何してるの?」と僕に尋ねた

僕は「別に……」と答えながら、リビングの両親を伺う


首は取れて居なかった



時刻はそろそろ10時

僕はリビングでそわそわしながら、最早隠すつもりすらなく家族の様子を監視して居る


玄関のドアが開く音


そうか、昨日はシャワーの音でこれに気付かなかったのか

僕は玄関に向けて歩く

何故か父も母も妹も、それに続くかのように玄関へ向けて歩き始めた



辿り着くと、玄関のドアが開いて居る


人影は無い

『どういう事なのか』と考えて居ると、家族達は次々に玄関から外へと歩いて行き、最後にドアが閉められた


鍵が外から掛けられる音

開けようと試みたが、押さえられてでも居るのか、びくともしなかった



2階で走り回る音がする

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