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9/12

心配

「それじゃあ最初は何処に行こっかな。って二人共もっと元気出してよ。」

青葉の大きな声がショッピングモール内に響き渡る。

「そ、そうだよ。普段は二人とも外に出たがらないからこういう時は遊ぼうよ。」

「だってもう疲れたもん。もう少し休憩させてよ。」

雪は人が多いショッピングモールの中、大きな椅子に座ってジュースを飲んでいた。

あれから無事展示会も終わって気づけばお昼になり、それに応じて人もかなり多くなっていた。

「むう、雪ちゃんってばやる気なさすぎだよ。さっきまで休憩してたじゃん!」

「運動部は元気でいいね。僕と雪は限界なんだよ。」

テンションが高くて楽しむ気満々の青葉と梓に対して雪と日向は既に帰りたくて仕方なかった。

「もう!せっかくのお出かけで時間がないんだよ?もっと気合い入れてこうよ。」

青葉はなんとかして雪達にやる気を出させようとする。

青葉や梓は友達も多くて外に出る機会も多いが雪と青葉はほとんど外に出ない為、一日中の外出は苦痛だった。もう足が痛いしお腹も空いた。

そもそも一日中外に出るなんてなんのメリットもないではないか。家の中でジュースを飲みながらゲームした方が絶対に有意義だ。

「僕は疲れたからここで休むよ。行きたい人だけで行ってくればいいじゃん。」

「だーめ、せっかくなんだしみんなで行こうよ。ほら、私は雪ちゃんだけじゃなくてみんなと仲良くなりたいから。」

青葉はそう言ってなんとか雪と日向を説得させようとしていた。

最初こそ、この組み合わせは危険だと思えたがなんだかんだ青葉と梓は仲良くなっており、陽キャの凄さを改めて実感した。

一つ問題があるとしたら日向が未だに青葉を嫌ってそうなところだった。日向も雪と同じく陽キャを嫌ってはいるが日向が青葉を嫌っている理由はまた別にあるように見えた。

「別に僕はそういう馴れ合いとかどうでもいいから。ほら、さっさと何処か行って来なよ。僕はここにいるからさ。」

日向は大きなため息をついてスマホをいじっていた。

日向はいつも人と馴れ合おうとしないし外にも出たりしないが今日の日向はいつもより変に感じた。よく分からないが何かに対して怒ってるようにも見える。

青葉は最初戸惑ったようにしていたが諦めたのか小さく息を吐いた。

「分かったよ、それなら私達だけで行くから。ほら、二人とも行くよ。」

「う、うん。それじゃあ私達は行ってくるから垣根さんもまた後で会おうね。」

「ちょっと、私は別に行くって言ってないんだけど?ねえ黙って連れてかないでよ。ほら日向も何か言ってよ。」

雪はまだ何も言ってないのに無言で青葉に引っ張られる。雪も日向のように椅子に座って休んでいたかった。

雪は青葉に助けを求めるが決して助けてはくれなかった。

「それじゃあ頑張って。僕には関係ないから。」

日向の冷たさに心が締め付けられる。やっぱり今日の日向は何かが変だ。

結局日向だけ置いて三人でショッピングモールを回ることになった。

雪は日向が大丈夫か心配で仕方なかったがそれより今は自分の心配をした方がいいかもしれない。







「よーし、それじゃあ最初はご飯にしよっか。二人は何食べる?」

お昼時で既に空腹だった雪達はとりあえずフードコートエリアへ向かった。フードコートには当たり前のようなたくさんの人がいた。

こんな騒がしい場所でご飯を食べるなんて雪には考えられない。いつもの教室だって隅っこで食べてるのに。

「私はハンバーグを食べたいかな。ほら、あそこのステーキ屋さん。」

「確かに美味しそうだけどちょっと人が多そうだよ?渡瀬さんは待てるの?」

雪が指を刺した所には確かにステーキ屋さんがあったがものすごい人がいてすぐには入れそうになかった。

流石にこの人混みの中で待つ勇気は雪にはなかった。

「うっ、それならハンバーグはやめようかな。もっと人がいない所があればいいんだけど。」

「それならいい所があるよ。雪ちゃんの大好きな鮭料理もあるし。」

「本当に?人が少ないならそこ行きたい!」

青葉の言葉に雪はものすごい勢いで食いつく。好きな食べ物があって人がいないなんて雪にとってはこれ以上ない好条件だった。

ただ何故青葉が雪の好物を知っているのかが分からなかった。

「渡瀬さんがいいなら私もそこでいいよ。」

「オッケー、それじゃあそこでご飯を食べよっか。そこでその後の行動も決めようね?」

青葉は雪の手を掴んで目的地へと向かった。梓までが雪の手を掴んで雪は再び両手塞がった状態になる。

雪達は青葉についていき青葉のおすすめのお店へと入る。フードコートとは別の場所にあるからかそこまで人がいなくてすんなりと入ることができた。

「すごい。いろんな料理があって迷っちゃうよ。どれにしようかな?」

メニュー表を開くとたくさんの料理が載っていて食欲がそそられる。

普段食べない料理もあって気になるがそういったものを頼むのはどうしても勇気が必要である。もし美味しくなかった時に後悔する為、今回は無難に鮭定食にすることにした。

青葉と梓もそれぞれ注文して、みんなで話しながら料理を待つことにした。

「それにしても青葉が一人でショッピングモールにいるなんて意外かも。他の人と行ったりはしないんだ?」

青葉は友達が多いから一人でショッピングモールにいる時はびっくりした。

雪の勝手なイメージだが陽キャは朝から夜までパーティーしてるものだと思っていた。

「ああ、そういえば蓮ちゃん達もここに来てるって言ってたよ。」

「山尾さんもここにいるんだ。それじゃあどうして一人でいるの?」

山尾にはこの前の屋上の件もあってそこまで苦手意識はないがそれでもまだ少し怖いからあまり会いたくはなかった。それに今山尾に会うと何か大変なことが起こりそうな気がした。

雪の嫌な予感はほとんど当たるのだ。

「それが二人共『月の彼方』のこと知らなそうだったから一人で来たんだ。そうしたら雪ちゃんがいたから私もびっくりしたよ。」

「私もびっくりだよ。でも私達以外にも仲間がいて嬉しいよ。」

日向以外に話し相手が増えることはシンプルに嬉しかった。

「えへへ、これからもいっぱいアニメの話をしようね。こう見えて私アニメとか漫画大好きなんだから。」

青葉は食事前だというのにぎゅっと雪の手を握る。

「そっか、私も青葉といっぱい話したいな。楽しみにしてるね。」

雪も青葉の手を軽く握って微笑んだ。

ちょっと前までは青葉のことはただのクラスの人気者としか思っていなかった。しかし青葉は暗いとこがあったりアニメや漫画が好きだったりで実は雪とあまり変わらないのかもしれない。

「もう、二人だけの世界に入らないでよ。私も渡瀬さんと色々と話したいよ。」

「ご、ごめん。それならみんなで話そっか。ほら、この後の予定とか決めようよ。」

退屈そうに頬を膨らませる梓を落ち着かせるた為に雪はみんなで話せる話題へと持っていく。

梓は普段は大人しいが時々めんどくさくなる為、その度に雪がサポートしていた。

三人で楽しく会話していると頼んでいたご飯がすぐにやって来る。

鮭定食にハンバーグ定食にオムライスと全て雪の大好物だった。

「うわあ、すごい美味しそうだよ。それじゃあ、いただきます。」

雪はすぐに鮭定食を食べることにした。

家でもよくお母さんが作ってくれる為、鮭は雪の大好物だった。

「んー、やっぱり鮭は美味しいな。何個でも食べられちゃうよ。」

青葉がおすすめと言うだけあって本当に美味しくていくらでも食べれてしまう。

「雪ちゃんってばいい食べっぷりだね。ほら、私のハンバーグ定食も少しあげるよ。あーん。」

「えっ、いいの?それならいただきます。」

青葉から貰ったハンバーグもとても柔らかくてジューシーだった。

「それなら私のオムライスも食べていいよ。雪ちゃんってオムライスも好きだもんね?」

「もうお腹いっぱいだし流石に大丈夫だよ。」

「遠慮しないでいいよ。ほら、あーんして?」

雪は断ろうとしたが梓に無理やり口に入れられてオムライスを頬張った。うん、オムライスも美味しい。

普段外に出ないから中々食べないが、たまにはこういうのも悪くはない。

「雪ちゃんの食べてる所すっごい可愛いよ!ほら、私のハンバーグもっとあげるね。」

「そ、それなら私もオムライスもあげるから。ほらあーんして?」

「も、もうこれ以上は食べられないから。だからそのスプーンをどけてよ!」

もうお腹いっぱいの雪にはこれ以上のご飯は限界だった。

何故か競うように食べさせてくる二人に雪はうんざりしていた。








「ふう、もうお腹いっぱいで動きたくないよ。」

二人のせいで食べすぎた雪はもうここから一歩も動きたくなかった。

それにスマホを確認すると日向がラインで帰ると言う文字だけ送っていた。何かあるのではないかと思いすごく心配になる。

「だーめ、今からいっぱい遊ぶんだから。次は服屋さんに行くよ。」

「そうだよ渡瀬さん。もっと楽しまないとだよ。」

元凶の二人が何か言ってる。

雪だってこうやってみんなと遊ぶのが嫌な訳ではない。ただ普段外に出ないから慣れないだけだ。

「もちろん最後まで楽しむつもりだよ。せっかく来たからにはね。」

ただそれはそれとして疲れたからもう少し休みたい。これ以上は本当に限界だ。

しかし青葉は強引で無理やり雪を持ち上げた。

「ちょっと?あともう少しくらい休ませてよ。」

「よーし、それじゃあ早速行くよ。って蓮ちゃん達だ。」

青葉に言われて見てみると確かにそこには山尾がいた。

「よお、なんで青葉がここにいるんだ?それに渡瀬まで。」

山尾はじっと雪を見つめていた。

最悪だ、雪の嫌な予感が当たってしまった。こうなったら絶対に変なことに絡まれてしまう気がする。

山尾達とばったり会ってしまい、雪はすでに帰りたくて仕方がなかった。

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