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どうしてこうなった?

「この漢字を読めるやつはいるか?そうだな、渡瀬答えてくれ。」

静かな空間でカチカチとシャーペンの音と先生の声だけが響き渡る。

昼休みが終わり今は午後の授業中だったが雪にはそんなことどうでもよかった。今の雪に授業なんて受ける気力はない。

当分は誰とも関わりたいと思わないし今日は授業が終わったら早く帰りたくて仕方なかった。

もう午前の時点で限界だったし国語の授業なんて面倒くさい。

私は現実逃避で窓から見える雲を眺めていた。雲にはいろんな形があって、それを見てるだけで落ち着く。

「渡瀬、聞いてるのか!お前だけだぞ、授業をちゃんと受けてないやつは。」

「すみません、ちょっと考えごとをしていて。次から気をつけます。」

口ではそう言うが行動に移すつもりはない。

だってきついものはきついんだからしょうがない。それに面白くない授業をする先生が悪い。

「はあ、もっとやる気を持たんと赤点取るぞ。赤点を取っても先生は責任取らんからな。」

別に授業なんて真面目に受けなくても八十点くらいは余裕で取れる。 

というかこんなつまらない授業を一時間近く聞いていられるみんながすごいと思う。

周りを見渡すが日向も梓も真面目に勉強を受けていた。梓はともかく日向まで真面目に授業を受けてるのは珍しくてなんだか裏切られた気分になる。

青葉の方を見るとこちらに気付いたのかバレないように手を振ってくる。

雪もこっそりと青葉に手を振ると青葉はとても嬉しそうに微笑んでくれる。青葉とは色々とあったが別に嫌いな訳ではない。ただ結局住む世界が違うからあまり関わりたくないというだけだ。

雪がぼーっとしていると突然後ろから視線を感じる。恐る恐る後ろの方を見るとすごい目つきで雪を睨みつけている人がいた。

金髪のショートで短いスカートに着崩した制服。明らかにヤンキーのような風貌だった。

名前は確か山尾蓮だったはず。青葉と同じグループでよく教室で騒がしくしているから嫌でも覚えている。目つきが怖く口調も荒い為、雪がクラスで一番関わりたくないタイプの人間だった。

もちろん山尾に睨まれている理由は分かっていた。雪が昼休みに青葉と話していたからだろう。

青葉はクラスの人気者だから青葉と話していた雪にヘイトが向くのも頷ける。しかしそれでも雪は気にしないことにした。

そもそも青葉はクラスメイトでなんだから話すことなんて普通だ。それに別に睨まれようが直接絡まらなければいい。どんなに睨まれて陰口を叩かれようが実害さえ出なければいいんだ。

雪は山尾にどれだけ睨まれようが無視してダラダラしていた。








「ねえ梓、ノート取るの忘れたから見せてくれない?」

「ええ、渡瀬さんまたぼーっとしてたの?そろそろ自分でやった方がいいと思うよ?」

午後の授業も全て終わり、後は帰るだけになった雪達は楽しく雑談をしていた。

「だって授業なんて面白くないじゃん。二人ともよくできるね。」

「まあ、ノートだけ取って先生の話聞いてるフリすればいいからな。僕だって別のこと考えてほとんど話は聞いてないし。」

「ふ、二人ともよくそれでテストでいい点数取れるね。」

梓は呆れた様子で雪と日向を見つめる。雪と日向は天才肌なのだ。基本的に努力しなくても大抵のことはできる。

「それよりもうすぐゴールデンウィークだし来週みんなで遊びに行こうよ。『月の彼方』の展示にさ。」

「もちろんだよ。早く休日にならないかな。」

学校がどんなに辛くてもゴールデンウィークがあると思えば無敵になれる。どんなに授業がつまらなくてもクラスメイトに睨まれても雪にはもはやダメージはなかった。

「えへへ、渡瀬さんとお出かけできるの楽しみだよ。渡瀬さんとお出かけなんてほとんど出来ないから。」

普段雪は外になんて出ない為、二人とお出かけするのは珍しいことだった。

「せっかく外に出るなら食事したり他の店を回ったりもしない?」

日向の提案に二人は頷いた。せっかく遊ぶのであればとことん遊びたい。

「それいいね。早く休日にならないかな。」

「それじゃあここでずっと話すや訳にもいかないしそろそろ帰ろっか。」

雪達は詳しい日程を立てながら家に帰ることにした。今日は二人とも部活がない為、一緒に帰れる。基本的に二人の内どちらかは部活があるからこうやって三人で帰れるのはかなり珍しいことだった。

「それでさあ。ってあれ?これはなんだろう?」

雪が靴箱を開くとそこから白い手紙のような物が落ちてきた。

「雪、それラブレターじゃない?もしかして雪にもモテ期が到来した?」

「ら、ラブレター?渡瀬さんそれラブレターなの?一体誰から。」

ニヤニヤしている日向と何故か慌ててる梓を横目に雪は白い手紙を開ける。

まさか雪にラブレターが届く訳なんかない。だって普段、日向と梓以外の人と話すことなんてないからだ。

雪は手紙を読んでいく内にどんどん表情を暗くしていく。

「そんな顔してどうしたの?なんて書いてあった?」

「ま、まずいよ。私死んじゃうかも。」

雪は手紙の内容を二人に見せる。

そこには『屋上で待っている。』とだけ書かれていた。それだけ見るとラブレターにしか見えないがその手紙の差出人は山尾蓮だった。

山尾蓮が雪にラブレターなんて送る訳がなかった。これは絶対に果たし状だ。

「うわあ、雪ってば何したの?山尾蓮って不良でしょ。」

「まずいよ、渡瀬さん。これは一度先生に言ったほうがいいんじゃ。」

「と、とりあえず一度屋上に行ってみるよ。だってこのまま会わずにしばかれても困るから。」

雪は慌てつつも何度も深呼吸してなんとか落ち着かせた。

山尾は授業中にずっと見てきたし何か言いたいことがあるのかもしれない。おそらく青葉関係のことだとは思うが具体的に何を言ってくるかは想像も出来なかった。

「それなら僕たちは先に帰るから何かあったら言ってね。」

「嫌なことがあれば私達が絶対に守るからね。」

二人はそれだけ言って先に帰ってしまった。

そして玄関には雪だけが残った。二人は薄情すぎではないか?

雪はすでに死にたくて仕方がなかった。







「本当にここにいるのかな?」

屋上に来た雪は恐る恐る中へと進む。もしかしたら忘れてる可能性もある。もはや雪には淡い期待を抱くしかなかった。

雪は屋上の真ん中までやって来たがそこには誰一人としていなかった。やっぱりあの手紙は嘘だったのかもしれない。

雪は安堵して家に帰ることにした。しかし帰ろうとした時に誰かの足音が聞こえる。

「よお、ちゃんと来てくれたんだな。」

「ひえっ、山尾さんも来てたんだね。てっきり来ないものだと。」

そこには山尾の姿があり、雪はすでに死を覚悟した。相変わらずヤンキーの様な風貌で怖かった。

「そりゃあアタシが呼んだんだから来ないわけがないだろ?」

「そ、それもそっか。それで私になんの用が?」

山尾の怖さのあまり小刻みに震える。今すぐにでも助けを呼びたい。

「そうだな、アタシは詳しく説明するのが苦手だから単刀直入に言うわ。あたしと付き合ってくれ。」

「え?どういうこと?」

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