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いつもの日常

「はあ、なんで学校に行かないといけないんだろう。もう帰りたいよ。」

雪は教室の扉の前で一人ボソッと呟いた。

楽しかったゴールデンウィークもあっという間に終わってしまった。今日からまたいつも通りの憂鬱な学校生活が始まってしまう。

今日も本当は学校をサボろうとしていたが流星に無理やり家を追い出されてしまった。

雪はだるそうにしながらも教室のドアを控えめに開けた。

「おはよう雪。遅刻ギリギリじゃん。」

「渡瀬さんってば目に隈ができてるよ。また夜遅くまでゲームしてたの?」

雪が自分の席に座るといつもの様に梓と日向がやって来る。

日向はこの前まで機嫌が悪そうだったが今日はいつも通りだった。もしかしたらこの前は気のせいだったのかもしれない。

「ふわぁ、学校に行くのが面倒くさくてダラダラしてたら遅刻ギリギリになったんだ。本当は今すぐ帰りたいよ。」

「はあ、雪ってば相変わらず面倒くさがり屋だな。どうせ残りの休日もゲームしかしてないだろ?」」

「だって他にやることないもん。それなら二人は何してたのさ?」

雪はみんなとショッピングモールに行った日以降はずっと家でゴロゴロしながらゲームする日々だった。学校に行かないでずっとゲームできるゴールデンウィークは雪にとって至福の時間だった。

「僕も基本的に部屋に居たけど雪ほどだらけてはないさ。プログラミングとかで忙しかったし。」

「そんなこと言って結局外に出てないじゃん!私と何も変わらないよ。」

日向も雪もインドア派な為、基本的には変わらず不摂生である。

「雪ほど無駄な時間は過ごしてないから。ほら、もっと運動しな。」

「だからすぐに私のほっぺをつつくな!梓もそんな怖い顔してないで助けてよ。」

そう言ってほっぺを触る日向を雪はジッと睨んだ。

日向は無駄な時間と言うが雪にとってはこれ以上ない大事な時間だ。おかげで溜まってた新作ゲームを全て消化する事ができた。

「まあまあ、二人とも落ち着いてよ。二人ともそんなに変わらないんだから。」

「むっ、それなら梓はゴールデンウィークに何してたのさ?」

「そうだよ。梓だって部屋の中でずっとゴロゴロしてたんじゃないの?」

日向と雪は笑っている梓を問い詰める。梓が普段どんな生活をしてるか見当もつかない。雪達の様にダラダラしてるイメージはないが。

「うーん、お菓子を作ったり友達と遊んだりしてたかな。それとお母さんのお店のお手伝いもしてたよ。って二人ともなんでそんな暗い顔してるの?」

「やめて、これ以上は私達にダメージが入るから。」

「ああ、僕たちって惨めだったんだなって。」

そういえば梓は雪達と違って普通に陽キャな事を忘れていた。雪と日向は突然の虚しさに襲われるのだった。

「もう、二人とも戻って来てよ!それよりもうすぐ遠足だよ?私は今から楽しみで仕方ないよ。」

「うげっ、そういえばもうすぐ遠足じゃん。どうやってサボろうかな?」

来週は梓の言う通り遠足があった。クラスメイトはみんなはしゃいでいたが雪にとっては苦痛なイベントでしかない。

「だからすぐにサボろうとしないで!私は渡瀬さんと遠足に行くの楽しみにしてるよ。」

「そうだぞ。学校のイベントくらいちゃんと出ろよ。」

「だって遠足にいい思い出はないもん。それに二人とだって学校で普通に会えるからわざわざ遠足に行く理由にはならないよ。」

遠足に行っても周りが騒がしいだけで虚無の時間を過ごすことになるのは目に見えてる。それに遠足まで青葉に絡まれたらいよいよ学校に行きづらくなる。

「それでもやっぱり遠足には行ったほうがいいよ。行ったら絶対に楽しいから。」

「逆に梓はどうしてそこまで私に遠足に行って欲しいの?」

どうしても遠足に行かせようとする梓に雪は疑問があった。梓も雪と絡まず他の友達と一緒にいればいいのに。

「そ、それは私が渡瀬さんといたいから。私は渡瀬さんのことが。」

「おーい、そこ早く席に着けよ。もう朝礼の時間だぞ。」

梓が何か話していたが先生の声にかき消されて何も聞こえなかった。会話に夢中になっていたが気づけば既に朝礼の時間だった。

「ごめん梓、よく聞かれなかったからもう一度言ってくれる?」

「ご、ごめん。そんなに大事なことじゃないから大丈夫だよ。それより私は自分の席に戻るね。」

「あれ、どうしたの?もしかして怒ってる?」

何故か梓は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。大事な話じゃないならどうして顔を真っ赤にしているのだろうか?

「はあ、雪ってば本当に鈍感と言うかタイミングが悪いよね。そういうとこだからな?」

「ねえ、だからどういう意味?やっぱり私が悪かったりする?」

状況を掴めない雪は頭を傾げることしかできなかった。

様子のおかしい梓と呆れたような顔の日向に雪はますます訳が分からなくなる。

どうしていつもこうなるのだろうか?









『キーンコーン、カーンコーン』

「もうこんな時間か。それじゃあ今日の授業はここまでにするぞ。」

チャイムが鳴ると同時に授業が終わりクラス全体が一気に騒がしくなる。

午前の授業が全て終わって昼休憩になった為、雪は二人とご飯を食べることにした。今日のお昼ご飯は流星が作ってくれた唐揚げ弁当だ。

「雪ちゃん、一緒にご飯食べない?ほら、屋上に行こうよ。」

雪が二人の元へ行く途中に青葉に出会い、いつものように抱きつかれる。相変わらず青葉は雪にべったりだがこれ以上は雪に支障が出てしまう為、丁重に断ることにした。

「ごめん。今日は日向達と食べるからまた今度ね。」

「むぅ、私は雪ちゃんと一緒に食べたいよ。ゴールデンウィークだって一回しか会えなかったし。」

そう言って抱きつく青葉に雪は困ることしかできない。周りに注目されるせいで気分が悪くなってしまう。

「ん、今日は私達とご飯を食べる約束だったでしょ。だから早く行くよ。」

雪がどうしたらいいか迷っていると木下がやって来て青葉を連れて行こうとしていた。今回に限っては木下が救世主だ。

「でも私は雪ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べたいよ。そうだ、それなら雪ちゃんも私達のグループに来なよ。」

「でもじゃない。約束はちゃんと守って貰うから。」

「うぅ、それじゃあまた後で話そうね雪ちゃん。」

駄々をこねる青葉を木下は無理やり運んで行った。木下は最後に雪をジッと睨んで教室から出ていった。

教室内でも雪のことを噂する声が多くて気分が悪くなる。






「ということがあったんだよ。このままじゃ私の体が持たないよ!」

「なるほどな。渡瀬も色々と大変だな。」

昼ごはんを食べ終わって、色々と疲れた雪は屋上に逃げ込んで偶々そこにいた山尾に愚痴を吐いていた。梓も日向もちゃんと話を聞いてくれないせいでこういう時に頼りになれるのは山尾しかいない。

「青葉ってば友達が多いはずなのになんで私にばっかり構ってくるんだろう?」

「それはアタシもずっと疑問に思っていたよ。青葉があそこまで人に懐いてるのは珍しいからな。」

青葉がここまで雪に懐いてる理由として考えられるのが駅前で助けたことだがそれだけの理由ではない気がしていた。青葉とは同じ地元だし雪に記憶がないだけでもしかしたら昔に会ったことがあるのかもしれない。

ただそれも定かではない今はとりあえずこの状況をなんとかするのが先だった。

「青葉が私に懐いてるのはこの際いいとしてこのままじゃ私のクラスでの居場所が無くなっちゃうよ。」

元々教室内で雪の居場所があるかと言われると怪しいが平穏に暮らせれば他はなんでも良かった。

「というか別に青葉と話してもいいんじゃないか?なんでそこまで青葉を避けるんだ?」

「だって目立ちたくないもん。それに青葉のファン達に恨まれたくもないし。」

雪は青葉と話したくないというよりは周りが怖くて近づきたくないだけだ。

青葉は学校内に沢山のファンがおり、青葉との距離が近すぎるとファンに何をされるか分からない。

この前だってそれで木下を怒らせてしまった。

「ああ、確かに青葉のファンは少し過激なやつもいるけど別に渡瀬が気にすることはねえよ。今だって直接何かされてる訳ではないんだろ?」

「それはそうだけど視線が怖いというか。昔からそういうの嫌いだから。」

明らかに雪のことをよく思っていないクラスメイトがいるということは火を見るよりも明らかだった。それにこの前の放課後のようにクラスメイトに直接何か言われる可能性もある。あの時は山尾がいたから良かったが雪一人だったらどうなるか分かったものではない。

「それなら何かされた時はアタシに言ってくれ。アタシが絶対に守ってやるからよ。」

山尾はそう言って雪の手を少し強引に握った。雪の手よりもゴツくてなんだか安心する。

「ありがとう山尾さん。そう言ってくれるとなんだか安心できるよ。」

今までこの学校では日向と梓しか関わる人がいなかったが今日みたいに疲れた時は山尾といてもいいかもしれない。勿論青葉とももっと仲良くしたい。

「まあ、なんだ。アタシ達は既に友達だろ。遠慮なんてしなくていいから。」

「そっか、私達はもう友達だよね。私は友達が少ないから嬉しいよ。」

山尾の友達という言葉に雪はパッと顔を明るくした。

雪のことを友達と呼んでくれた山尾に雪は嬉しくて仕方がなかった。梓とは雪の方から仲良くなった為、こうやって相手の方から友達と言われるのは珍しいことだった。

「よーし、それじゃあアタシと渡瀬は友達になった訳だしアタシのお願いを一つ聞いてくれないか?」

「えっと山尾さん?もしかして私嵌められた?」

ニヤニヤと笑う山尾に雪は既に嫌な予感しかしなかった。

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