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不安

「よお、まさかお前らがここにいるとはな。というか青葉はアタシ達の誘いを断ったのになんでいるんだ?」

「理解できない。青葉は私達と来るべき。」

「そ、それはその何というか色々と理由があって。だからそんな怖い顔で私を見ないで!」

青葉は山尾と木下に詰められて辿々しくしていた。全部青葉の自業自得だ。

何か嫌な予感がする為、雪は今すぐにでもここから立ち去りたかった。しかもさっきから木下がずっと睨んでくる。

「とりあえず青葉は私達と回るから。ほら、行くよ。」

「そういうことなら私達は戻るね。それじゃあまた今度。って服を引っ張らないでよ。」

雪はどさくさに紛れて帰ろうとしたが青葉は離そうとしてくれなかった。

「雪ちゃんはすぐに逃げようとしないで。雪ちゃんも一緒に遊ぼうよ。二人ともいいよね?」

「アタシは構わねえよ。渡瀬とも仲良くなりたいからな。」

そう言って山尾は勢いよく雪の背中を叩く。

青葉と山尾に見つめられてもう既に逃げ場はなかった。さらに梓に助けを求めようと目を向けるが何故か梓は顔を合わせてくれなかった。

「私は認めない。二人がどんな関係かはさておき青葉は私達と遊ぶから。」

「人は多い方がいいでしょ?それに私は雪ちゃんともっと一緒にいたいし。」

青葉が雪の手を握ると同時に少しずつ木下の顔が暗くなっていく。

青葉は厄介ファンが多いと聞くがもしかして木下も青葉のファンなのだろうか。

「そもそもなんで貴方なんかが青葉と。青葉は元気で明るくて人気者で貴方とは釣り合わない。」

「いや、そんなこと言われても困るよ。私だってよく分からないんだから。」

青葉が雪にずっと構う理由は雪自身が一番知りたいことだった。

確かに雪は青葉を助けたがここまで構う理由にはならない。人気者の青葉とクラスの端っこにいる雪では釣り合わないと言われても仕方がない。

「それに釣り合ってないことは自分でも分かるってるよ。だけど私は。って青葉?」

雪が話している最中に青葉は突然抱きついてくる。

なんだか今の青葉は少し怒っている様だった。それと後ろの梓は明らかにキレているし頑張って山尾が止めていた。

「那月ちゃん、これ以上雪ちゃんを困らせないで。雪ちゃん達も一緒に回っていいよね?」

「でも私は青葉と。•••分かった、それなら時間もないし今すぐ行こう。」

木下は少しの沈黙の後、諦めた様に頷いた。

いつも笑顔の青葉しか見てなかったからさっきの青葉は少し新鮮だった。

「よーし、それじゃあ早速行こっか。まずは服屋からだよ。」

さっきまでの冷たさが嘘かと思うほどに青葉の表情が一気に明るくなる。

「渡瀬さん、手を握ってもいいよね?」

「いいというかもう握ってるよね?それになんか力強くない?」

いつも通りの青葉と明らかに雪のことが気に入らなさそうな木下といつもと様子がおかしい梓に雪は大きなため息を吐いた。

「渡瀬も大変だな。何かあったらアタシが止めるから安心しな?」

「うう、ありがとう山尾さん。頼れるのは山尾さんだけだよ。」

山尾の暖かさが心に染みる。

雪にはこの後何事も無く終わることが出来るか不安でいっぱいだった。








「うわあ、雪ちゃんのこの服すっごく可愛い。やっぱり雪ちゃんにはショートスカートが似合うよ。」

「でも、渡瀬さんはロングも似合うと思うよ?ほら、清楚な服装とかどうかな。」

「えっと、二人ともそのたくさんの服は何?私は着ないからね。」

雪はたくさんの服を持って迫る二人から逃げる様に山尾の後ろに隠れた。陰キャの雪にとっておしゃれな服を着ることはハードルが高かった。

「ほら、渡瀬が困ってるぞ。もっとゆっくり話してやれよ。」

「むぅ、蓮ちゃんはいつから雪ちゃんと仲良くなったの?雪ちゃんの方からくっつくなんて羨ましいよ。」

青葉はムッとした顔で山尾を見つめる。

雪と山尾はお互いに顔を見合わせるがなんと言ったらいいか分からず無言になる。山尾が青葉のことをもっと知りたいからとは口が裂けても言えない。

「その何というか屋上で会ったから一緒に色々と話しただけだよ。そうだよな、渡瀬?」

「そ、そうだよ。特に深い理由はないから。」

「ふーん、なんだか怪しい様な。雪ちゃんは私とくっつこうよ。」

すぐに抱きつきたがる青葉にうんざりする。それに木下と梓に見つめられて居た堪れない気分になる。

「ん、そんなに抱きつきたいなら私に抱きつけばいい。」

「そ、それなら私が渡瀬さんに抱きついていいかな?」

「おい、これ以上話をややこしくしようとするな!とりあえず普通に服を見ようぜ。」

周りはものすごいカオスだが山尾のおかげで少しはまとまった。山尾がいなかったらと思うとゾッとする。この三人の中だと山尾が一番やばいと思っていたがもしかしたら二人の方がやばいのか?

「私はただ雪ちゃんのいろんな服装が見たいだけだから。だからお願い!」

「私には絶対に似合わないから。それに露出が多い服は恥ずかしいし。」

青葉と梓が持ってきた服はどれも露出が多くて恥ずかしい。雪にとってはハードルが高すぎる。

「じゃあ露出が少ない服にするからお願いだよ。雪ちゃんのいろんな服装が見たいの!」

「私も渡瀬さんのいろんな格好が見たいよ。ダメかな?」

「ま、まあそれなら別にいいけど。でもあまり期待しないでね。」

二人の視線に耐えきれなかった雪は二人から服を受け取り、しょうがなく試着室へと向かった。明らかに変な服も混じっていたがとりあえずマシな服から着ることにした。

「どうかな、変じゃないよね?って二人共固まってどうしたの?」

雪は紺色のワンピースを着て試着室を出たが二人共何も言ってこず不安になる。

「ごめん、雪ちゃんがあまりにも可愛すぎて見惚れちゃってた。やっぱり雪ちゃんはどんな服も似合うよ。」

「すごいよ渡瀬さん。今日は渡瀬さんと遊べて良かった。」

よく分からないが二人が喜んでいるならいいか。試しに自分の姿を鏡で見てみたがやっぱり違和感がある。

ワンピースは露出自体は少ないが清楚な感じが慣れずに恥ずかしい。

「おお、似合ってんじゃん。てか渡瀬って前髪切ってちゃんと前向いてたらモテるよな。」

「そんなの無理だよ。そもそも私がモテる訳ないから。」

みんな褒めてくれるのは嬉しいがやっぱり言い過ぎだと思う。梓や青葉の方が可愛し絶対にモテてる。

「そんなことないよ。雪ちゃんはもっと自信持っていいから。」

「そうだよ。でも渡瀬さんの可愛さがみんなに気づかれるのは少しモヤモヤするかも。」

「はいはい、それじゃあ次の服を着てくるから待っててね。」

二人から褒められて恥ずかしくなった雪は誤魔化す様に試着室の中に入った。

さっきのワンピースが恥ずかしかった為、次はもっとラフな格好にすることにした。

「これとかどうかな?」

次は白色のパーカーを着てみた。少しブカブカだがさっきより露出が少なくて落ち着く。都会とかにいても違和感がない。

雪はスースーするという理由でスカートが苦手な為、普段からズボンが履けるコーデが好きだった。学校でもストッキングを履いてなんとか誤魔化している。

「えへへ、やっぱり雪ちゃんの服はどれも可愛いね。でももう少し露出の多い服も着て欲しいな?」

「それだけはムリ!恥ずかしいから絶対に嫌だ!」

他に二人が持ってきた服を見ると露出が多かったり、派手な服しかなくて雪にはハードルが高かった。お母さんもたまに可愛い服を買ってくるが全部押し入れにしまっている。

「むぅ、雪ちゃんってばもっと自信持ったらいいのに。那月ちゃんもそう思うよね?」

青葉は木下に問いかけるが木下は怒った様子で雪を睨みつける。

「チッ、さっきから渡瀬のことしか言ってなくてイライラする。もう私は帰るから。」

「ちょっと待ってよ!そんなに怒らないでよ?みんなで仲良く遊ぼうよ。」

青葉は必死に木下を説得しようとしたが木下は一切振り向かずにそのまま何処かに行ってしまった。

雪は大きなため息を吐く。この前のクラスメイトの時もそうだが誰かに嫌われてると思うとやっぱり傷つく。

「ごめんね雪ちゃん。那月ちゃんは悪い子じゃないんだけどちょっと気難しい所があるから。」

「大丈夫だよ渡瀬さん。渡瀬さんは何も悪くないからそんなに落ち込まなくてもいいからね。」

「二人共ありがとう。ただ木下さんが少し心配で。」

木下はきっと青葉のことが好きなんだと思う。それなのに目の前で見せつけられたら怒るのも無理はない。多分この前のクラスメイトも同じだ。

青葉はみんなの人気者で雪が関わること自体がおかしかった。きっと前みたいに青葉と関わらずに日向と梓と一緒にいるのが一番なんだと思う。

「渡瀬の考えも分からないでもないけどとりあえず今日はこの辺にしとかないか?時間も割と経ったし渡瀬も色々と限界だろ?」

「う、うん。今日はもう帰るよ。疲れたし限界だから。」

今日一日でここまで疲れるとは思わなかった。普段外に出ない自分を叱りたい。

何より日向と木下のことが心配だった。今度二人にも謝罪をしないといけない。

「それじゃあ、私は雪ちゃんと一緒に帰るから。」 

「おう、それじゃあお疲れ様。また学校で会おうな。」

山尾の声かけと共に雪達は解散した。雪は梓と山尾に手を振って青葉と駅に向かった。









「いやあ、今日は疲れたね。それにしても今日はいろんな雪ちゃんが見れてよかったよ。」

「分かったから一旦離れてよ。普通に人が見てるんだけど。」

雪達は電車に乗った後、家に向かって歩いていたが青葉がくっつくせいで歩きづらい。

「だって雪ちゃんとは学校じゃなかなか会えないし今日は貴重な時間なんだから。」

「そもそも何で私だけにくっつくの?恥ずかしいし私なんかと抱きついて楽しくないでしょ。」

雪がそう言うと青葉は人差し指で雪のほっぺたを突いた。

「その私なんかって言うのをやめてよ。那月ちゃんに言われたこと気にしてるの?」

「別にそういう訳じゃないよ。ただ私はやっぱりみんなほど明るくないから。」

いつもとは違って真剣に雪を見つめる青葉にどう答えたらいいか分からなくなる。青葉の言うことは図星で雪はたじろぐことしかできない。

「ほら、やっぱり気にしてるじゃん!雪ちゃんには雪ちゃんの魅力があるんだから気にしなくていいよ。」

「私の魅力って何?自分じゃそんなの分からないよ。」

雪は魅力なんてないと思っていた。みんなより暗くて周りに馴染めない自分が嫌いだった。

「雪ちゃんは優しくて偶にカッコいいヒーローになる所とかかな。私を二回も助けてくれたもんね?」

「あれ?二回も青葉を助けたっけ?」

「と、とにかく雪ちゃんは優しくてカッコいいってこと!だからそんなに落ち込まないでいいから。」

青葉は誤魔化す様に笑った。青葉はいつも明るくてこっちまで少し明るくなる。

なんだかんだいって青葉と話せる時間が好きだった。

「青葉のおかげで少しは元気出たよ。それじゃあ私はここで。」

家に着いた雪はここで青葉と別れた。この一日は疲れたけど本当に楽しかった。

「それじゃあまた今度遊ぼうね。私は雪ちゃんのことが大好きだから。」

「うん、今日はありがとう。私も楽しかったよ。」

雪と青葉はお互いに手を振って笑い合った。

偶になら外に出るのも悪くないなと思った。

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