表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/87

81.物語の幕引き



 ルキア達の卒業から二年の月日が流れ、学園にまた春が訪れた。


 校門には色とりどりの花が咲き、卒業生達の笑顔が行き交う。

 その列の中で、静かに存在感を放つ少女がいた。


 淡い紫の瞳は今日も澄み渡り、柔らかな微笑みをたたえて歩いていた。


 孤児院出の特待生でありながら、貴族・平民問わず生徒たちの信頼を勝ち得た存在。

 彼女は手助けを申し出てくれた生徒達から適材を選び、貴族、平民一切関係なく公正に職務を割り振り、周囲に望まれて、二期連続で生徒会長を務めた。


 ――その姿は、ルキアが描いた『実力で未来を掴む世界』を、皮肉にも完全に体現していた。


 彼女の背中は、かつて学園にいた『一人の光』を確かに継いでいた。

 その光を取り戻すために、グレイスはここに立っていたのだから。

 

 

  優秀なグレイスには、卒業後の進路にと数多くの推薦状が届いていた。


 だが彼女が選んだのは、エルミナ地方局の局員になることだった。


 グレイスならばもっと華やかな職場や、王都での仕事もある。彼女ならば上を目指すことも夢ではない。


 周囲の人間はそう言ったが、グレイスは頑として首を縦にはふらなかった。


 アレクと共に育った孤児院のある地方。

 誰も光の物語を期待しない、小さな場所。

 そこで、静かに生きる道を選んだ。


「ねえ、どうしてルノワールじゃないの? グレイスちゃん、ルノワール孤児院にいたんだよね?」


 クラスメイトの純粋な問いかけに、グレイスは穏やかな口調で答えた。


「実は昔お世話になった人がエルミナ自治局にいるんですけど……。人手が足りなくて困っているから、来てほしいってお願いされていまして」

「そうなの?」

「はい。私が小さい頃から何かと気にかけて下さった方なので、微力ながら恩返しがしたいなって」

「そうなんだ! でも少しもったいないね。グレイスちゃんならもっと色んな候補があっただろうに」

「私は表舞台に出るつもりはありませんから。これでいいんです」

 

 グレイスはもう、舞台に立たない。

 立つ必要がないのだから。


 そして、卒業パーティーが始まる直前。

 グレイスは生徒会長としての挨拶をするために、全校生徒の前に登壇する。


「――皆さんの明るい未来に幸があらんことを」

 

 生徒達の温かな視線を浴びる中、彼女はそう締めくくると、皆が憧れるグレイスとしての最後の笑みを見せた。



 まだ朝も早い時間。

 見送りは必要ないとばかりに、グレイスは誰にも告げずに静かに旅立つ。


 風が、長かった物語の幕を閉じるように吹き抜けた。

 グレイスは一度だけ学園を振り返り、本当のグレイスとして微笑んだ。


 その瞳に宿っていたのは、ただ静かな色だった。


 ――そして彼女は、物語の舞台から姿を消した。



学園編は終わりです。

最後は、グレイスとアレク、二人の物語です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ