さよなら夏の日

この夏、彼は80年の時を超えてやってきた。
深夜の幹線道路を疾走する暴走族の瞬彌《しゅんじ》。
その日常は、ある晩の「奇妙な出会い」で一変する。
警察の追跡をかわす最中、瞬彌と仲間たちが遭遇したのは、見慣れない特攻服をまとい、路上に倒れていた少年だった。彼の名は嘉三郎。驚くべきことに、彼は80年前の日本からタイムスリップしてきた海軍航空隊予科練習生だったのだ。
敗戦の事実も、戦後の日本の繁栄も知らない嘉三郎。そして、戦争の重みを全く知らない瞬彌たち。戸惑い、反発しながらも、彼らは互いの価値観に触れ、やがて世代を超えた友情を育んでいく。
しかし、嘉三郎が現代に留まれる時間はわずかだった。
戦争に命を捧げようとした少年が知った未来の姿。
そして、その過去から託された想いが、現代を生きる若者たちの人生に大きな変化をもたらす。
これは、時代を隔てた二つの「特攻」が交差する、感動の物語。
失われた夏の日と、かけがえのない出会いが、彼らの未来を照らし出す。