#31 アライアンスの解散
カルラとダッカスも起きて、エドはお説教を切り上げた。
「アルト君とフィリア君の魔法の腕は確かだし、ティアナ君の剣はまっすぐで軽やかだ。君たちはEランクとは思えないほど実力がある。だから、つまらないところで死に急ぐようなことはやめてくれ。僕からは以上だよ」
俺たちはエドに一礼をした。
フィリアはもちろん、ティアナも真面目に話を聞いていたのは、稽古をつけてもらいたいだけではなく、それほど今回のことを重く受け止めたということだろう。
* ――――――
朝食を取り終えた俺たち6人は、依頼達成の報告をするために町まで向かった。
ちなみに、朝食は昨日仕留めたウルフの肉だ。
朝食を一緒にとるうちに、なんとなくエドとの空気も元に戻っていた――といっても、彼は怒っているというより指導をしている感じで、説教を切り上げてからは通常通りに接してくれたのだが。
俺は、ずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
――カノンの手がかりのこと。
ランクCの冒険者ともなれば、色々な場所に依頼を受けに行っているだろう。
だが、聞き方はどうしようか。
俺がアルカディアから来たということは絶対に伏せておきたい。
歩きながら口に出す言葉を考える。
あまり不審がられないように、エドたちに声をかけた。
「すみません、ちょっといいですか?」
「アルト君、どうしたんだい?」
「俺、ある人を探しているんです。銀色の長い髪で、身長はこのくらいで、このペンダントを持っていた女の子を、どこかで見かけませんでしたか?」
俺は特徴を両手で表現するとともに、首にぶら下げた空色のペンダントを見せながら、カノンのことを尋ねると、エドはその様子――そして、ペンダントをじっくりと見つめた。
「このペンダント自体初めて見るものだ。それに、特徴に合う人は見たことが無いよ」
エドはカルラとダッカスにも聞いてみるが、二人もさっぱりだった。
やはり、簡単にはいかないか……。
とはいえ、仕方のないことだと割り切ることにした。
あと少しで手が届きそうなところに、カノンの日記があったから。今はそれに集中しよう。
* ――――――
町に戻るころには、夕日が街並みを紅く照らしていた。
子どもたちがそれぞれの家に入っていく姿や、金袋を抱える冒険者。街並みは、日中のざわざわしたものとは違って落ち着いた雰囲気が漂っていた。
ギルドに着いたところでエドは俺たちに振り返る。
「あとはギルドへ行って、報酬の取り分け。そしてこのアライアンスは解散だ」
エドは俺たちに背を向けて、扉のノブに手を掛けた。
ギルドに入ったエドたちは受付まで足を運び、依頼達成の報告をした。
受付嬢は――俺にとって初めて見る顔だ。
「お疲れ様でした。こちらが報酬になります」
額は、24万リルだ。
エドはすぐにお金を受け取らず、一度こちらに振り返った。
「魔物の素材もすべて売却していいかい。もちろん、報酬は分配するよ」
俺たちが頷くと、エドは素材の売却もお願いした。
素材の査定待ちをしている間、エドは自分のパーティ3人で依頼の感想会議を始めた。
別のパーティだし、あまり聞き耳を立てるのは良くないな。
俺は今後のお金のやりくりについて一人でシミュレーションをすることにした。
「残りの期間がこうで、今のお金がこれくらいだから――」
うん、なんとなく計画を練ることができた。
「アルト君、今いいかい?」
エドに呼ばれ、首を向ける。
「6人で受けた依頼、率直にどうだったかい」
「最初は戸惑いましたが、とても勉強になりました。参加できてよかったです」
「それならよかったよ。君たちは筋がいいから、きっと強くなれると思う」
Cランクの冒険者にここまで言ってもらえたのは嬉しい。もっと頑張ろう。そう思えた。
査定が終了したらしく、受付嬢が戻って来た。
査定額は6万リルだったらしい。
エドは受付嬢に軽く頭を下げ、俺たちに向き直った。
お金を数え、パーティメンバーに均等に振り分けていく。
「3日間お疲れ様。これが報酬だ。今日はちゃんと身体を休めてほしい」
エドは頭を下げ、最後の挨拶をした。
カルラは羽のついた帽子をかぶり直す。
「3人とも、とても筋が良かったわ。また機会があればよろしくね」
二人の挨拶を聞いたダッカスは、自分だけ黙っているわけにもいかなくなったのか、ばつが悪そうな表情をしていた。
「次もあれば頼む。あと、ウルフのステーキ、美味かったぞ」
「ダッカス、他に言うことあるでしょ。けれど、あたしからも。ステーキ、本当に美味しかったわ」
カルラはあきれ交じりにため息をついたが、そういう彼女もよほど気に入ったらしい。
ティアナもティアナで「またご馳走しますよ」とノリよく話していた。
色々あったけど、別れ際まであたたかい人たちだったな。
* ――――――
パーティを解散し、宿に向かう。ティアナとフィリアも一緒だ。
いつも取っている宿。毛先が首元で綺麗に揃えられている、黒くてさらさらの髪をした女性に受付をしてもらい、いつも通り一部屋借りた。
だんだん3人で同じ部屋をとるのにも抵抗がなくなってきた。良いことかもしれないし、良くないのかもしれない。
部屋についてからすぐ入浴を済ませた俺は、再び部屋に戻った。
夕食まで少し時間がある。
フィリアはベッドに腰を下ろし、読書をしている。一方でティアナはうつ伏せでベッドにダイブしていた。
紅く染まる外はしだいに色を落としていく。真っ暗になってしまう前に、俺は部屋に備え付けられた明かりの魔道具で、部屋に光をともした。
フィリアも夢中になって本を読んでいるし、このままだと目が痛くなってしまうだろう。
「ありがとう、アルトくん」
微笑むフィリアに俺は微笑みで返すと――
「ああああああああ!!!!!!」
突然大声を上げるティアナ。あまりの唐突さに、俺たちは思わず飛び跳ねてしまった。
「お姉ちゃん、うるさいよ」
「どうしたのさ。急に」
フィリア程強くは言えなかった俺は、ティアナに問いかける。
「稽古つけてもらう約束、するの忘れてた……」
おいおい……。
昨日、あんなに意気込んでいたのに忘れていたのかよ。
ティアナの雑さに俺は呆れ――
「あっ。俺もワイバーンの肝を返すの、すっかり忘れてた」
人のこと言える立場じゃなかった。
俺とティアナは二人で項垂れている。
一方フィリアは、目の前の本から視線を移すことはなかった。
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