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#15 冒険者の素質

 さすがに俺たちもゴブリンキングが出てくるのは想定外だった。この巨体に俺たちの身長ほどの大剣を右手に軽々しく構えている様は、見るからに危険な相手であることがわかった。


「時間稼ぎなんてできるのか!?」


「あたしも初めて戦う。けど、中堅の冒険者パーティがこいつ相手に全滅した噂を何度も聞いてる。それくらい危険な魔物よ」


 ティアナはゴブリンキングからひと時も目をそらさず、剣を構えながら俺たちに語りかけている。


「アルト、妹のこと、頼んだわよ」


 なんで、ティアナは危ない状況になったときにいつも自分を犠牲にするんだ。

 俺はティアナのことを見捨てて町に逃げるなんてこと、絶対にしたくない。


「断る」


 俺は奴に杖を向けた。


「コールドバルカン全弾当てる。倒せはしなくても、致命傷にはなるはずだ」


「ゴブリンキングはランクDの魔物よ。こいつ一体で村を滅ぼせる力があるんだから。あたしたちが勝てる相手じゃない!」


「それを何とかするのが、仲間ってもんだろ。逃げる時も戦う時も一緒だ」


「お姉ちゃん一人で抱え込まないで、たまには私を頼ってよ」


 フィリアまで奴に杖を向けている


「あたしだって、二人が逃げたら逃げるつもりだったのよ。あーもう、仕方ないわね。やれること全てぶつけるわよ」


 俺たちは覚悟を決めてゴブリンキングと戦う。仲間を見捨てたくないのはもちろんだが、こんな奴を放置していたら村が滅びるまで時間の問題だと思ったからだ。


「ティアナ。詠唱までの時間は稼げるか?」


「もちろんよ。あたしを舐めないでよね」


 ティアナは先陣を切ってゴブリンキングの元へ。俺とフィリアは杖を構え、魔法陣を展開した。


「俺が祝詞のりとを乗せた大技を使う。フィリアは魔法が途切れないようにゴブリンキングに連続攻撃できるか?」


「私に任せて」


 フィリアは魔法陣から三本の氷の刃を顕現させた。


「アイスニードル」


 フィリアの放った氷刃は、空気を裂く音を立てながら奴の顔面めがけて一直線に飛んでゆく。奴は手に持った大剣を振り回し、氷の刃をはじき返した。


 だが、これでいい。ティアナの剣は、胴ががら空きになったゴブリンキングを、決して見逃さない。


「グオオオオオオオオオ!!!!!」


 天井が崩れそうになるほどの轟音を響かせる。効いてそうだ。


 魔法に祝詞を乗せた俺はとどめの一撃を食らわせる。


「コールドバルカン」


 おびただしい数の氷の弾丸をゴブリンキング一体めがけて発射する。その弾丸の周りは、白い空気が揺らめいていた。そして――


 ゴブリンキングに全弾命中させる。奴の脇腹は大きな傷跡があり、そこから赤黒い血が滴っている。しかし、顔面だけは大剣でかばっていて、無傷同然だった。


「こいつ、まさか知性が……」


 ゴブリンにスライム、果てはタイガーウルフだって、俺たちを仕留めるために行動をしてきた。しかし、ゴブリンキングは危険を予測して、大剣を盾代わりに扱っていた。


 奴がティアナめがけて大剣を振り回した。それは岩肌にあたり、脳に鈍く響き渡る音と共に破片がぼろぼろと崩れ落ちてきた。


 一撃でも食らったらただじゃ済まない。

 それでもティアナは大剣を振り切ったタイミングで、再度胴を斬りつけた。


 ゴブリンキングは悲鳴と共に、切りつけられた胴の方面目がけて大剣を振り下ろした。ティアナはひらりと距離をとってかわしたが、地面から土埃とともに岩の破片がぼろぼろと舞っており、威力の高さが見て取れる。


 しかし、ゴブリンキングは大剣を抜こうとしたがその場を踏ん張るだけで動かない。大剣がはまったのか。


「チャーンス!」


 ティアナはここぞとばかりに胴を斬りつけるため、奴の元へとダッシュした。フィリアと俺は攻撃を途切れさせないよう、順番にアイスニードルを連射している。


 剣先がゴブリンキングに触れた、その瞬間だった。


 ティアナは奴の蹴りに打ち上げられ、空中を舞いながらフィリアのもとへと吹き飛ばされた。それは明らかにフィリアを狙っての攻撃だった。


「お姉ちゃんっ! すぐ、回復するからね」


「あたしのことはいいから、はやくゴブリンキングを――」


「フィリア、ティアナを頼む」


 俺はティアナを遮って、回復をお願いした。フィリアは杖を緑に光らせ、魔法陣を展開している。


「チェーンヒール」


 ティアナの顔色がみるみるうちに良くなっていく。さすがフィリアだ。

 よくここまで頑張ってくれた。今はゆっくり回復に専念してくれ。




 そして、お前。よくも、よくも仲間を傷つけてくれたな。

 この借りは、十倍。いや、二十倍にして返すぞ。


 俺は再度魔法陣を展開した。


「アイスニードル」


 ゴブリンキングの顔面を狙っているが、腕でかばっていて当てられない。俺はひたすらアイスニードルを撃ち続けた。決定打にならないことはわかっている。考える時間がほしいだけだ。


 祝詞を乗せた氷魔法でも持ちこたえたなら、やり方を変えるしかない。


 考えろ、考えろ、考えろ――


 視界の奥には氷刃に耐えながら剣を抜こうとするゴブリンキング。


 俺は周りを見渡す。そういえば、ゴブリンキングが剣を振り回した時に岩がぼろぼろ崩れていた。これを使えば――


 そうだ。風魔法だ。


「フィリア。これから風魔法を使う。慣れないせいで巻き込むかもしれないから、気を付けてくれ」


「わかった」


 フィリアはティアナの腕を肩にかけ、よろよろと後退した。


 よし。これなら最悪暴発しても味方への被害にはならない。


 俺はアイスニードルを撃ち続けながら、緑の魔法陣を展開し、風魔法の準備を始めた。


 風の魔法で、周りの岩ごと巻き込んで潰す。ゴブリンキングの巨体を持ちあげるには祝詞が必要だ。これで、顔面を守る腕ごと、風と岩の餌食になってもらう。



 疾風の精霊よ、か弱き我に力を――



 ゴブリンキングは大剣を抜くのを諦め、こっちに地響きを立てつつ走ってきた。

 だが、詠唱に祝詞を乗せる時間は残っている。



 風よ切り裂け、雲来の竜巻――



 俺は緑の魔法陣を大きく広げ、残っている魔力の全てを込めた。

 これでダメなら、仕方ない。



「ヘル・サイクロン」


 緑の魔法陣から出現した竜巻は、周りの岩の破片や小石、さらには動物の骨まで巻き込んだ。

 空間を引き裂く速さで奴の元へ突き進んだそれは、ゴブリンキングの巨体ですら持ちあげ、岩を全身に叩きつけながら、洞窟の天井へ頭を直撃させた。さらに、通り過ぎた竜巻はゴブリンキングを持ちあげることを放棄し、重力に従って奴は真っ逆さまに――


 地面に頭を打ち付け、大地を揺るがすほどの振動と共に土埃が舞う。さらに追い打ちをかけるように岩や骨がゴブリンキングの元へ落下し、やがて瓦礫に埋め尽くされた。




 ――やったか?


 俺は警戒を怠らず立ちすくんでいると、隣から声が聞こえた。


「ミドルサーチ。結果、魔物の反応無し」


 つまり、どういうことだ。


「アルトくん、ゴブリンキングを倒せた。本当にすごいよ」


 その言葉を聞いた俺は、その場にへたり込んだ。



多数ある作品の中から、この作品をお読みいただきありがとうございます。

少しでも「面白い」「良かった」と思っていただけたら

ブックマークや評価をしていただけるととても励みになります。


次の更新は 11月16日 10時頃の予定です。

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