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【1987年9月下旬】



 龍栖神社の古びた舞台には、欅や松の木々の間を通り抜けた涼やかな風が渡っていた。


 長く使われていない演舞台は、軽く補修をしたとは言え、あまりいい状態ではない。そこに立ったのは、白衣に青い袴の巫女服に身を包んだエルリアだった。金色の巻き髪と白い肌が不思議とはまっていて、姿勢の良さと相まって凛々しさが感じられた。


 同席しているのは、神社訪問組に加えて、近所の子ども達が中心となっており、親御さんも何組かやってきていた。神社側からは、神職の老人とご家族が参加している。


 ラジカセから流れ始めた雅楽の調べは、雨宮瑠夏が用意してくれたものだった。本人はあまり興味がないらしいのだが。


 鼓の音に合わせて、エルリアが流れるように動き出す。滑るように上体を安定させる足さばきで、一つ一つの動きを決めていく。


「綺麗……」


「ホントよねー」


 見惚れている紗良ちゃんに、わくわくしているらしい美羽ちゃん。表情は対照的だが二人の間の距離感は近い。だいぶキャラが違うのだけれど、仲はとても良いから不思議なものではある。


 エルリアの腕がすっと広がり、天へと祈りが捧げられる。その動きは、周囲の空気を巻き込むような威力が感じられた。


 神職の老人が、その光景を見つめている。その目からは、光るものがこぼれ落ちていた。


「ああ……、これだ……」


 絞り出すような声はやや弱々しく、老いの影がその体躯を包んでいた。


「ありがとう、ありがとう……。最後に、これを見せてもらえて、本当に……」


「最後だなんて。まずは、秋の祭りでお見せできれば」


「秋祭りか……、そうじゃな」


 頷く勢いがやや弱かったのが気になったが、肯定してくれたのは確かである。そして、子どもたちが見つめる視線には熱がこもっていた。


 エルリアの手が胸の前で収められる。響く穏やかな拍手に反応するように、演舞台の彼女は小さく息を吐き出した。



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