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14 生還

 隠れ布をとったミーシャは、「お兄さま」と、声をあげてバーゼルのもとに走っていた。刺さった槍で壁に貼りつけられているバーゼルをミーシャは自分の力だけで下ろすことはできない。ダラムが近づき、両手に力を入れて、槍を壁から引き抜いた。バーゼルは床に音をたてて落ちていった。

 ナヨは、バーゼルに近づき、腰にさげてきたバッグから治療薬ポーションをとりだすと、バーゼルの左手の傷口が埋まるほどたっぷりと塗りこんでいた。次に焼けた顔の上にもポーションを塗りつけていたのだ。さらに胸に耳をあてて、心音を聞いていた。その後、胸に手をおいて心臓マッサージを行った。しばらくして、バーゼルは呼吸を始め、目を開けた。

「お兄さま、良かった」と言って、ミーシャは泣き出していた。ポーションのおかげで、バーゼルの左手の傷穴は塞がり出していたのだ。

「なんの。これしき」

 バーゼルは意識も取り戻していた。すぐにミーシャはダラムとナヨがバーゼルを助けるために、ここにきた話をした。

「有難い。本当に有難がたい」

 そんな時に、コロダ国の兵士たちがぞろぞろと入ってきた。

「王子、生きていてくれましたか!」

「バーゼルさま、ご無事でしたか! 良かった。ほんとうに良かった」

 そう言った兵士たちは泣き出し、腕をあげて涙をふいていた。

「アーサーさまの再来を迎えたいま、リュームと戦えるぞ」

 強気に言ってバーゼルは立ち上がろうとしたのだが、それはできなかった。すぐに、そばにいたミーシャとナヨはバーゼルを左右からささえていた。 

「王子よ。まずは、ここから轍退をして、治療にあたってもらわなければならない」と、ナヨは額に縦じわを作っていた。

「ここに来るだけでも、たいへんでござった。それを考えると。まず王子には無事に城から退去してもらわなければならない」と兵士たちのリーダーとなっている者が言っていた。ダラムは大きくうなずく。後で、知ることになったのだが、リーダーを担っていた男は、コロダ国の第四分隊の隊長クリスだった。  

「なんとしても、お兄さまを助け出してください」

 ミーシャは、そう言ってダラムを見つめてきた。ミーシャはダラムを信じきっているのだ。思わず、ダラムは額に三本の横じわをよせた。

「先にたって敵兵を相手にするから、その間に兵士の方々と一緒になってミーシャさまはバーザルさまを城の外に運び出してください」

 ミーシャはうなずき、「わかりもうした」とクリスは声をあげ、傷ついたバーザルをかこっていた兵士たちの顔を見廻していた。

「それでは、そこの窓にはられているカーテンを切り裂いておろしてもらおうか」と言って、ナヨはクリスにカーテンを指さした。すぐに、クリスは兵士たちとともに窓に近づきカーテンを引っ張りおろしていた。それを二つにおり簡易担架を作り、それにバーザルをのせて、四隅を四人の兵士で持っていた。

 それを見たダラムは、先にたって階段をおり出した。バーザルを運ぶ兵士たちたちがついてこられるように、少しゆっくりと歩いていた。バーザルたちの後ろにはミーシャとナヨがついてきていた。

 ついに塔の一階についた。ミーシャはバーザルの上に隠れ布をかぶせた。

「よし、行くぞ」と、ダラムは声をあげて、塔から外へ一気に飛び出していった。すると、塔の周りにいた敵兵たちはダラムを見て驚いていた。塔の中にダラムが入ったのを、敵兵たちは見ることができてなかったからだ。敵兵の中にいる魔人たちは魔法を使う。動きをとめる呪文や死の呪文を唱えてくる。だが、ダラムの動きはすばやい。呪文をかけ終える前に、その場所から離れてしまうので呪文はかからない。だが、自分以外の者たちに向かってかけられた呪文は防いでやらなければならない。前のダラムは、そんなことはできなかったのだが、今のダラムはかけられた呪文が飛んでくるのが空に絵が描かれたように見えるのだ。そこで飛んできた呪文の前にでて紋章がついた左手をあげる。それだけで、呪文を遮断することができるようになっていた。だから、ダラムはバーザルたちの脇を走って、彼らに向けて飛ばされた呪文を次々と受けてやっていた。ミーシャとナヨは協力をして、バーザルを追いかけ襲ってきた敵兵たちを倒し続けていた。そのおかげで、バーザルは味方の兵士たちに守られて城門から外に出ることができたのだった。 

 それでも敵兵は城の外まで追ってくる。ダラムは呪文をはじき飛ばしながら城門から出る時に荷車を城門の外に引き出してやった。すぐにナヨは柵戸を引いて城門を閉じた。そこにダラムは荷車を柵戸に押しつけ、柵戸を開けられなくしてやったのだ。これで城の中にいる敵兵たちは城から出てくることができない。 

 城の外に出るとダラムとナヨはそこにいた敵兵たちを引き受けて戦い出した。その間、コロダ国の兵士たちはミーシャやバーザルと共に逃げることができたのだった。

 城門の前にいた敵兵たちを倒し終えたダラムとナヨはゆっくりと歩き出していた。

 行くべき先は、わかっている。アリーナが行っている治療所だ。そこに、バーザルが運び込まれているのだ。

 そこには、たくさんの病室があり、以前から戦って傷を負ったコロダ国の兵士たちも治療を行っていた。治療は薬剤師トリプが行ってくれていたのだが、病室の一つに運び込まれたバーザルのけがをした顔を見たトリプは、思わず首を横にふっていた。

「左目は元に戻すことはできないかもしれませんな。ともかく命だけでも助かったことは、神のご加護があったと言えるかもしれません」

 トリブは、持っている薬のすべてを使いバーゼルの治療を始めてくれた。誰もがバーザルを見つめていたので、ダラムの額に脂汗が出だしていたことに誰もが気づかなかった。


 呪文を受け続けていた左手が焼けるように痛んでいたからだ。さすがに耐えられなくなった、ダラムはアリーナに頼んで、水を入れた木桶を持ってきてもらった。そして、水の中に左手を入れていた。

「あんたも、焼けどをしていたのかい?」

 そう言ったアリーナは、バーザルのいる病室から出て行った。しばらくすると、どんぶり一杯の雑草を採ってきてくれたのだ。それを木桶の中に投げ込んでくれた。始めはダラムも驚いていたが、しばらくすると、雑草から出てきた汁液に薬効があったのか、痛みが薄らいでいったのだ。思わず、ダラムの顔にやすらぎの色が浮かび出していた。

「効いてきたね。これはね、人の家のそばで、どこでも生えている草なのさ。庶民は、みんな誰もが知っている。手に傷がついたり、痛みを覚えた時には、これをもんで貼ればいいんだよ」

 その声を聞きながら、ダラムは背を壁にもたれかけさせていた。突然の眠気に襲われたのだ。いや、意識が別世界に吸い込まれていた。

 

 ダラムは、明るすぎる光を感じて辺りを見廻した。そこは白い部屋で、ベッドに寝ていたのだ。そのベッドには透明なカバーがかけられていた。これはプラスチックでできているのだろうか?

 あちらこちらに点滴の瓶が吊り下げられ、瓶につながる細い管がつけられていて、管先が自分の体に差し込まれているようだ。

 突然、透明なカバーの上から二つの顔がのぞいた。男と女。神さまと同じ顔だ。だが、神たちは声を出していた。いや、ここでは人だったのだ。

「先生、苦しそうですよ」と、女が言っていた。

「もう大丈夫ですよ。まずはアドレナリンとブドウ糖を増やしておきましたから。これで真守くんの体は元気づくはずだ」

 白い上衣を着た男がそう言っていた。真守に戻った意識は、男の顔をとらえることができた。黒ぶちのメガネをかけたその顔は、真守が通っていた高校の物理教師と同じだったのだ。

 何故、物理の教師がここにいる。教師の名前はなんといったのだろうか?

 思い出せない。頭が痛んだ。真守の意識は再び暗い闇に落ちていった。

 

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