10刺客出現
ダラムは、修道院の中庭でミーシャと一緒に訓練を続けた。一方、ナヨはミーシャの願いを知るとそばについて剣の使い方の指導を始めたのだ。それは同時に、ミーシャの護衛をすることができる。一石二鳥だとナヨは思っていた。
ダラムの訓練は、自分の中にいるアーサーが命じているものだった。それはアーサーが青年だった頃に行っていた訓練と同じだった。
剣の素振りや構えを千回、腹筋、背筋運動も千回、さらに腕立て伏せ、指立て伏せも同じ数だけ行っていた。さらに、一日百キロの走行を始めていた。だがミーシャから離れて走るわけにはいかない。そこで塀で囲まれた修道院の中を何度も走り廻ることになったのだ。
その日、ダラムは、修道院の塀にそって十七回廻っていた時だった。
上背のある男が、ゆっくりと正門から入ってきたのだ。肌が白く頭の髪が金髪の男をダラムは過去の記憶の中に見たことがあった。北欧のバイキングだ。背負っている剣は長く大型で、重さも普通の剣よりは倍はありそうだった。
ダラムはすぐに男の前に立って、中に入ってくるのを阻止した。
「ここにどんな御用がおありかな?」
「剣士らしいな。それもかなり腕がたつようだ。ミーシャの護衛で強いのがいると聞いていたが、それはあなたのことかな?」
「ミーシャさまをお守りすることは、間違いなく俺の役目だよ。あんたは?」
「あなたをまず倒さないと、ミーシャを始末することはできないと言うことか。だが、死んでいく者に名乗る必要はないな」
そう言ったとたん、男は背中の剣を抜いて、たすき掛けに切り下ろしてきた。ダラムは、一歩下がって剣をよけ、ゆっくりと剣を抜いて上段にかまえた。そして、一歩前にでて一気に男の脳天目指して剣を振り下ろしたのだ。男は剣をあげて、ダラムの剣を受けた。だが、ダラムは修行を積んで体に筋肉をつけ出している。さらに剣技もレベルが上がっている。ダラムの剣を男は受けることができたのだが、落ちてきたダラムの剣は男の剣を砕き男の額を割っていたのだ。
額に大きな傷をつけられた男は恐怖に顔をゆがめていた。すぐに戦って勝てる相手ではないことを理解したからだ。転がるようにして男は門の外に出ていった。その後、後ろを振り返ることもなく、走り出し小さくなっていた。ダラムの剣を受けて額の傷にすませただけにした男は、かなりの腕の持ち主であることは間違いなかった。
ダラムから、敵の報告を受けたナヨは、「次があるな。ゼノン国は簡単にあきらめない。次の兵士を送ってくるぞ」と言っていた。
その日から、十日後。
馬にのった三人の男がやってきたのだ。この時は、修道院の窓から外を見ていたナヨが彼らを見つけ手をふってダラムに知らせてくれた。
ダラムは、修道院の玄関である出入口から出ていった。
男たちは、馬から下りると、三人は横に並んでやってきた。男たちの髪は背にかかるほど長く、麻ひもで頭の後ろで束ねていた。持っている剣は、ダラムの使っている剣とは違った。細身で弓なりなっていて、黒い鞘に納められていたのだ。それは、剣ではなく片刃の日本刀だった。確かに、彼らの顔は目が細く日本人を思わせる顔立ちをしていた。三人とも、すでに柄に手をおいていた。
「あんたらは、何者なのかな?」
「私らは、刺殺を頼まれた者ですよ。あなたがダラムと言われている方だな?」
「そうだよ。俺に名乗ることもできないのか?」
「死んでいく者に、名前を名乗ってもしかたがなかろう」
「同じセリフを前にも聞いたよ」
だんだんと近づいてくる三人はダラムの周りを囲むようにした時、一斉に彼らは刀を抜いていた。それは日本剣法で使われる居合抜きだった。三本の刀が、ダラムを一斉に襲ってくる。普通の剣士ならば、どれかの刀にふれ切られていたに違いなかった。だが、ダラムの体は柔らかく、動きはすばやい。ふられる刀すべてをよけていたのだ。
居合をよけられた三人は再び、鞘の中に刀を戻していた。その後、改めて三人の男たちは刀をぬいた。今度も居合で刀をふっていたのだが、やはりダラムはすばやく、刀をよけていたのだ。
男たちは、刀を再び鞘に戻したのだが、三度目に刀をぬいた時にはゆっくりと刀をぬいていた。そして、ぬいた刀を彼らは手でしっかりと握っていた。居合でダラムを切ることができないことが分かったからだ。
「これで、剣を交えることができるな」
ダラムは、自分の剣を握りなおすと、今度はダラムの方から、男たちに向かって剣をふっていた。男たちは、ダラムの剣を受けようとしたが、ダラムの力は強い。ことごとく、彼らは刀を手にしたままで切り倒されていた。
「ダラムのことは、ゼノン国で完全に知られてしまっているようだな」
ナヨが、そう言った時に、切られて倒されていた男の一人が、必死に目を開け口に角笛をくわえて鳴らした。最期のあがきだ。
すると、門の外にいた馬たちが走り出していった。ダラムを倒すことに失敗したことを馬が戻ったことで敵方に知られてしまう。前に逃げ出した馬を放っておいて、敵兵を呼びよせてしまったことをダラムは思い出していた。同じ過ちを繰り返すわけにいかない。ダラムは走り馬を追い出した。すぐに馬たちに追いつき、次々と馬の首を切り落としていた。馬たちはすぐに横倒しになって道路を転がり首から血を流していた。だが、一頭の馬の横に木箱に鳥を入れてつるしていたのだ。箱は壊れ、中にいた鳥は羽ばたき、空に飛たっていた。
「しまった。鳥がいるとは」
ダラムは口をへの字に曲げていた。




