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9警護役本格化

 顔をあげると、ミーシャが見ているのに、ダラムは気が付いた。すでに食事を終えたミーシャは、驚いたように、いや少し冷めた目をしていたのだ。それに気づいたダラムも食べるのをやめ、顔を赤らめてしまった。

「食事はもういいかな? 約束じゃ。ミーシャの警護をしてもらうぞ」と、ナヨが声をかけてきた。

「どうすればいい?」

「ミーシャさまの部屋にすぐ駆けつけられるように、ダラムの部屋を隣に作りたいのじゃが。作っている暇がない。とりあえず、ミーシャさまの部屋とした処に長椅子をおいて、そこに待機してもらおう」

 ダラムはうなずいていた。それを見た後、ナヨは立ち上がり、そこにいた修道女たちと話をして、ミーシャの寝室としても使う部屋を決めて、そこに長椅子を運び込ませていた。その間に、若い修道女ビアンカが、ミーシャを食堂室から連れ出していった。新たな部屋に入る前に、体の汚れを落とし体を清めるためにミーシャを浴室に連れていったのだ。

 ミーシャの部屋と決められた部屋の出入口傍に置かれた長椅子にダラムは腰をおろしミーシャを待ち続けていた。

 やがて、ビアンカは部屋にミーシャを連れてきた。すでにミーシャは、修道女たちが着ているのと同じパジャマに着替えていた。ビアンカはミーシャを寝台に横たわせると、ダラムの所にやってきた。

「ダラムさまも、浴室にいき、体の汚れをとってください。これまで着ていた服を着替え室においてくだされば、後で洗濯をしておきますよ。それでは、ご案内をいたします」

 ビアンカが話をしている合間に、ナヨが現れた。

「ダラムがいない間、わしがミーシャさまを見守っておる」

 ダラムは軽くナヨにうなずいて見せ、ビアンカについて浴室にいった。そこで、体から汚れを落とし、浴室から出てくると、ビアンカが拭きタオルを手に待っていてくれた。タオルを使って、体から水分をとり、そこに置かれていた僧衣にダラムは着替えた。僧衣と一緒にナヨがくれた剣もおかれていたのだ。それはナヨの指示があったからに違いない。着替えが終わると、ビアンカは、ダラムをミーシャがいる部屋に連れていってくれた。

 ミーシャはベッドにいたが、上体を起こし、寝てはいなかったのだ。ダラムは、ベッドに近づき、「ご一緒させてもらいます」と言って、頭をさげ、長椅子に戻り、そこに腰をおろした。

 それを見ていたナヨは、「頼んだぞ」と言って、ミーシャの部屋からでていった。

 ここに敵兵はやってくるとは思えなかったのだが、頼まれた以上、寝ないでいるつもりでいた。ダラムがいるせいか、ミーシャも寝てはいない。これはまずいと思っているうちに、ダラムは眠り出していた。

 夢の中で、ダラムはアーサーに戻っていた。それも、若かりし頃のアーサーだ。

 走っていた。道のない山地の中を走っていたのだ。木々の間を縫い、低い藪であれば、その上を飛び越えていた。走るたびに胸の中にある心臓は、激しい動悸に脈うっていた。

 だが、突然、ダラムの前から山地が消えた。

 その代わり、誰かが剣をふる音が聞こえてきたのだ。その場所はダラムが長椅子で寝ている部屋だった。思わず、ダラムは、夢からいや眠りから覚めていた。

 目を開けると、ミーシャが王の剣を両手で握り、それを何度もふっていたのだ。

 ダラムは、長椅子から立ち上がり、ミーシャを見つめた。ミーシャもダラムが起きた事に気が付いた。

「ダラムさま、目がさめたようですね」

「どうして、素振りなど?」

「あなた方に迷惑をかけてばかりはいられない。王女であっても、戦えるようになっていなければならない。そういう世界に生きているのでしょう?」

「それは、そうだが」

「少しでも強くなって、父と母の仇を討てるようにならなければならない」

 そこまで言い終わると、ミーシャは剣を再びふり出した。今度は、ふるたびにかけ声をあげている。これまで声をあげなかったのは、ダラムが寝ていると思って遠慮していたからだ。

「俺も修行を始めさせてもらうよ」

 そう言ったダラムは、ナヨからもらった剣を手にすると、ミーシャに背を向け別の壁に向かって、剣をふり始めたのだった。

  

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