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プロローグ

 真守は六華高校に通う生徒だった。

 その日の午後、真守がいる教室で物理学の教師が採点を終えたテストを生徒たちに返していた。名前を呼ばれて、真守は教卓の後ろに立つ教師の前に行き、テスト用紙を返してもらい、自分の席に戻ってテスト用紙をみつめた。点数は四十二点。いつも一生懸命にやっているつもりなのだが、学校の成績はあがっていかない。特に物理学は不得意だった。それなのに、両親は、真守に理系の大学受験を望んでいる。そこを選ぶことが将来性のある会社に就職ができると信じているからだ。

 だが、本当はもっとしなければならないことがあるはずだと、真守の頭の中で声が聞こえてきていた。でも、しなければならないこととは何なのか? 自分に問いかけても、答えをみつけることができない。いらつきだけが、頭の中に残ってしまう。

 ともかく、いまは余計なことを考える暇はないはずだ。真守は首を左右にふり、一度家に帰る。カバンを机の上に投げ出すようにおいた。壁に吊り下げていた手提げバッグをおろし、その中に塾で使うテキストとノート、それに文房具を入れた。バッグを脇に抱えて家をでた。

 塾がある所は、繁華街の店舗ビルの三階にある。バスにのり店舗ビルの近くでおりて、飲み物を買うためにコンビニに向かった。するとコンビニと隣にある八百屋の間にできている中通りに、隣クラスの男子生徒が三人の男たちに囲まれて連れ込まれていったのだ。

 聞こえなければ、よかったのだが、男たちの脅す声が聞こえてきた。真守の体は動き、中通りにむかった。中通りに入り込んだ真守はたかりの現場を見ることになったのだ。隣クラスの生徒は、自分の財布から、千円札を取り出して、目の前に立った男に渡そうとしていた。

「何をやっているんだ!」と、真守は声をあげた。

「なんだ。てめえには、関係ないこと だろう」

「そこにいる奴とは、友だちなんだ」

「友だちなのか。俺たちは、少しお金を貸して欲しいとお友だちにお願いをしているだけなんだよ」

「そうだぜ。お願いをして悪いかい。後で返すことを考えている」と、別の男は言っていた。男は笑い顔なのに目だけは笑っていない。

 真守がいることで、意を強くした隣クラスの生徒は千円札を渡さずにいる。

「友だちは貸したくないみたいだよ」と言って、真守は片手をあげると、隣クラスの生徒は走って真守の元にやってきた。

「さあ、行こう」と言って、真守は隣クラスの生徒と一緒に歩き出そうとした。

「ちょっと、待てや」

 三人の男たちは目をつりあげて、小走りでやってきた。

「ふざけた真似をしやがって」

 背の高い男が真守に殴りかかってきたのだ。そのパンチを真守はバッグを盾にして、うけとめた。それが面白くなかったのだろう。残っていた男の一人が胸ポケットからジャックナイフを取り出し、刃を出していた。

「なめるな」と叫んで、男は真守を刺してきた。真守は腰をさげて、ナイフの刃をよけた。だが、男は一歩踏み出し、真守の腹にナイフを突き刺したのだ。刃は鋭い、痛みが真守を襲った。ゆっくりと地面に向かって倒れていく。真守に友だちと呼ばれた生徒は大声をあげ、通りの人に真守を刺されたことを知らせていた。

「なんだ」

「どうした。どうした」と言う声がして。人が集まり出していた。

 だが、真守の意識は暗い中に落ちていく。

 そうだ。行くべき所にむかわなければならない。どこからか声がする。それが、真守の中から出てくる声だとは、真守も気づかないでいた。





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