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異世界と絆な黙示録  作者: 八神
第四章~秘密と覚悟と想いの行方~
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第57話:truth&outer

今回は世界観に関する説明なども多くあり、少し長くなってしまいました。本来ならこの説明は作中に散りばめて小出しにする予定でしたが、ミシュナを出して欲しいとの感想が非常に多かった為、今回は急遽ミシュナ回を1回増量させていただきました。他キャラとの絡みは……もう少しお待ちください。

「はーい、ルニ坊。今日は娘と一緒に来たわよ。焼酎出してー、この子にはジュースね。」


「何……娘だと?」


「……え、お母さん、マスターの知り合いなの?」


「あらあら? 貴方達こそ知り合いなの? ミウちゃんも良くこんな場所に入る気になったわねー。駄目よ、女の子が一人でこういう場所に入っちゃ。」


「別に一人で来てる訳じゃないけど……。」


「こんな場所とは酷い言われようだな……。」


 日が沈む前に帰る様にと言われていたらしいナナを家の近くまで送り、学園に居たシュナと合流したミシュナは、シュナに連れられるままに何とも見覚えのあるバーへと来ていた。ミシュナに取ってはかなり衝撃の事実だったのだが、どうやらシュナとマスターは知り合いだった様だ。……一体どんな繋がりがあるのか想像も出来ないが……とは言え、思い返してみれば納得してしまう出来事も何度かあった気がする。


「そういえば、マスターが司羽の編入手続きとか私のクラス操作したんだったわね……そういう事か。」


「ん? ああ、そういえば少し前に誰かを無理矢理学院に捩込んだ気がするわ。ルニ坊の知り合いだから気にしてなかったけど、あれツカ君だったの?」


「……職務怠慢、ちゃんとしなさいよ。そんな事だろうと思ったけど。」


 あっけらかんと言うシュナに対して、ミシュナはもう諦めていると言う様に溜息をついた。一方でマスターも、珍しい物を見るような眼でミシュナとシュナを見比べていた。


「……名前からして似てるとは思っていたが……まさかシュナの娘だったとは。」


「ふふっ、そーよー、私に似て可愛いでしょ? 既に心も体も売約済みだけどねー、ふふふっ。」


「お母さん、お願いだからそういう下品な事言うの止めてよ。大体私と司羽はまだ……。」


「まーまー、良いじゃない。今更他の子なんて考えられる程器用じゃないでしょう? あ、テーブル席借りるわね。」


「…………もう。」


「苦労するな。」


「ええ、それはもう。娘だもの。」


 ミシュナはシュナの一方的な物言いに対して諦めた様に溜息をつきながら、促されるままに席に着く。シュナはと言えば、ミシュナとマスターとのあまりと言えばあまりな会話にも意にかいした様子はなかった。


「それじゃ、早速だけど説明して貰おうかしら。ツカ君がなんでこっちにいるのか。それとも、ルニ坊が居たら困る?」


「マスターも大体知ってる事だけど……というか、何なのそのルニ坊って。マスターの名前?」


「………気にするな、シュナがそう呼んでるだけだ………それと、俺は少し店を開けるからゆっくりしていけ。」


「あら、そうなの? ふふふっ、じゃあ勝手に飲んでるわ。」


「もう……まぁ、いいけどね。」


 娘の自分ですら知らなかった二人の関係が気になったが、聞いた所で無駄だろう。それにミシュナは自分の母親の秘密の多さは良く知っていたが、自分に関係のある事なら隠さないのがシュナだ。シュナが何も言わない以上は聞いてはいけない事である………娘であるミシュナは、そう認識していた。………そして気を効かせたマスターが奥に引っ込むのを確認し、ミシュナは口を開く。


「司羽がこっちに来たのは少し前になるわ。正確な日時までは聞いてないけど、まだあれから半年に満たないくらいよ。随分色々あった気がするけどね。」


「……ふーん、半年前ねー。ミウちゃんに会ったのは?」


「来て直ぐよ。学院でちょっといざこざが有ってね……雰囲気も性格も結構変わってたけど顔を見たら直ぐに分かったわ。司羽の紅い眼は目立つし、何より気が完全に制御されてた。エーラで気を使う人なんていないもの。他人の空似かとも思ったけど、気配を消した私を察知して近付いて来た上に司羽って名乗るし……夢でも見てるのかと思ったわ。」


 あれは一種のテストだった。司羽ならば、むしろ気配を消している自分こそ目立って見えるだろうと思って、近くで気配を消してみたのだ。結果は案の定本人で、内心かなり緊張していたのだが。


「………まあ、司羽は私の事なんて覚えてないみたいだけど。」


「あらら、そうなの? ミウちゃん泣いちゃわなかった?」


「べ、別に……私だってそんなに自惚れちゃ居ないわよ。確かにショックだったけど、十年も前の話だし、私だって変わったわ。髪も背もあの頃より大分伸びたし、私なりに、次に会う時はって……だから……。」


「………そうね。」


 ミシュナの次に続く言葉を察した様に、シュナは微笑んだ。直前までからかう様な事を言っていた癖にこれだ。こういう所が、狡いと思う。そして同時に憧れる。そんな複雑な思いを抱きながら、ミシュナは無理矢理に気持ちを押さえ込んだ。これでは話が続かない。


「司羽がこっちに来た方法を知ったのは、それから少し後の事だったわ。学院の行事で課外授業があるじゃない、その時よ。」


「課外授業………そういえばそんなの作ったわねー。それで、どんな方法で?」


 理事長としてあまりに雑な感想ではあったが、今は深く言う事は止めておく。とにかくまずは本題である。


「母さん、ルーンって子は知ってるわよね? 学院首席で歴代次元魔法使用の最年少記録を持ってる……次元の魔女。」


「次元の魔女? うーん………そんな捻りのないあだ名の子居たっけ?」


「あ、あだ名って………覚えてないの?」


 ルーンは今や学院の顔でもある存在だ。それを覚えていないとは……自分の母親ながら本当に理事長をしてるのか不安になる。それを除いてもルーンは目立つ存在だと言うのに。ミシュナは記憶を整理しながら、シュナに対して効果的な説明方法を考えた。そして、一つのイベントについてふと思い出した。


「………ほら、母さんが面白半分で開いた投票式のミスコンがあったじゃない。あれで一位だった子よ。」


「ミスコン……もしかして、ミウちゃんと同い年くらいで長い金髪の可愛い子?」


「そうよ、その金髪の子。」


 どうやら、やっとルーンの事を思い出したらしい。一体どういう記憶の整理の仕方をすればこんな覚え方をするのだろうか。


「……もう、なんでミスコンで思い出せて自分の学院の首席とか次元の魔女で思い出せないのよ。」


「だって興味ないもの。あの子が何と呼ばれようが、いくら世界に貢献しようが、私には関係ないしね。でも容姿は覚えてるわ、やたら可愛かったもの。モテるわけよねー。」


「……まあ、母さんから見ればそうなのかもね。」


 本当に興味がない様子のシュナに、ミシュナは呆れ半分、諦め半分の溜息をつく。シュナは軽くいってのけるが、ルーンの影響力は実際凄いものがある。次元魔法での功績に限らず、遠く離れた土地でも魔法を研究する職業の人間ならば知らない者はまずいないと言える。まだ学生の身分にも関わらず、これだけ有名になった魔法使いは珍しい。……だと言うのに、やはりシュナに取ってはただの女の子以上の認識にはならないのだ。


「それで、その子が何か関係あるの?」


「そのルーンが………司羽を向こうから喚んだのよ。次元魔法のワープトンネルを応用した世界間移動の魔法で………本人達は星間移動だと思ってるみたいだけど。」


「………何ですって?」


 そこで初めてシュナの表情が驚きに変わった。ミシュナも、シュナが本気で驚く顔を見るのは初めてで、寧ろその事に驚いてしまった。


「世界間移動……それ、本当なの?」


「嘘みたいだけど本当なのよ。あの子は自分の家族を作る為に、魔法で司羽を喚んだの。きっと私じゃ想像出来ないくらい、凄く苦しい想いをしたんでしょうね……母さんの言葉を借りれば、人が出来る範囲をとっくに超えているもの……。」


「そうね、人間では無理ね。少なくともあの子一人がいくら頑張っても世界を越えるのは不可能よ。世界の掟がそれを許さないわ。昔ミウちゃんにも言ったけど、人間の力じゃ世界の真理は曲げられない。人の力では『世界を越えられない』って真理を無視するには、世界よりも上位の力が必要よ。そして世界に囚われている存在では、決して世界より上位には成れないわ。だから人間に限らず世界にある全ては、世界の真理と共存するしかないのよ。」


「………うん。」


 真理。それはある意味では突拍子もない理論。シュナとミシュナが交わすこの会話の内容を理解できる人間は、この世界にどれだけいるのだろうか。ミシュナもそれを直接確かめたわけではない。それ以前に確かめる事が出来ない。それでもこの世界を覆う真理を、ミシュナはよく知っていた。昔からシュナに言われて来た事だ。シュナに言われたその言葉をミシュナは今まで信じて生きてきた。どんなに証拠や根拠がなくても、シュナの言葉には何故か重みがあったから。


「母さんが私に言った言葉はちゃんと覚えてる………人は自分の力では世界を越えられないっていう世界の真理。でも母さん、司羽はルーンに喚ばれて此処にいるの、それは事実よ。私は司羽を誰かと間違えたりなんかしない。それにナナの話では、私との思い出も覚えてくれてるの。」


「ええ、そうみたいね。ミウちゃんが言ってるのは、きっと全部本当なんでしょう。」


 シュナの手の平を返すような言葉に、今度はミシュナが驚く番だった。今、先程に不可能と言っていたにも関わらず、ミシュナの言葉一つで意見を変えるなんて予想外だった。……この世界の真理に関する事は、ミシュナが子供の頃に何度も聞かされた事だった。シュナが何故それを知っているのかはミシュナも聞いていないが……きっと聞いてもごまかされてしまうだろう。


「信じるの? だって今不可能だって……。」


「信じるも何も、事実なんでしょう? ミウちゃんがツカ君絡みの事で嘘をつくなんてそれこそ思えないもの。大体、娘の言う事を頭から疑う親なんて親じゃないわ。」


「………そ、そう。まあ信じてくれたなら話が早いわ。私も母さんから無理だって言い聞かせられてた事だったし、あの子が本当にそんな事したって最初は信じられなかったけど………でも、今は疑う余地はないわ。それは事実起こって、司羽は私の前に現れた。」


 シュナがあまりにストレートに信じるので、ミシュナは照れ隠しをするように視線を逸らしながらそう付け加えた。ミシュナは自分がこういうストレートな言葉に弱い事を自覚していたが、シュナも意図して言った訳ではないだろう。ミシュナが横目でシュナの様子を伺うと、暫く眼をつむって考え事をしながらおちょこに注いだ焼酎を呑んでいた。そして少しの間を置いて、シュナが新たに酒を注ぎながら言った。


「不可能な事を可能にした可能性は………いくつかあるわね。」


「矛盾してるわよ、それ。」


「あら、そんな事ないわよ。私はあくまで人間には無理って言っただけだしね。」


「……なにそれ、天使か悪魔にでも頼んだって言うの?」


「まっさかー、そこまで言わないわよ。天使と悪魔だって万能じゃないんだから。」


「……万能じゃないって……。」


 シュナのそれは、まるで天使や悪魔が存在しているかの様な言い方だ。いや、トワの様な存在もいる訳だし、もしかしたらいるのかも知れないが……あまり聞いてはいけない事な気がする。この事は忘れよう、精神衛生上良くない。


「簡単な話よ。例えばルーンちゃんとやらが元から人間じゃなかったり、人間を超えちゃってれば可能よね。そもそも前提からして違うんだから。人間やら何やらの力を超越した存在、所謂アウターって呼ばれる存在は結構居るのよ? ミウちゃんだって知ってるでしょう? 歴史の偉人の中にもたまにそう呼ばれるのが居るし。大体が普通の人間だけどね。数人は居るわ。」


「……それは、知ってるけど……ルーンがそうだって言うの?」


 アウターとは、人間や通常の生物を越えた存在の総称だ。寿命であったり、力であったり、越える部分に関してはそれぞれではあるが、確かに歴史の中にはそう言った存在が多数見られる。仙人と呼称される超寿命の存在や、魔法ではない特殊な力を身につけたスーパーマンの様な存在、人に害をなす異形の妖怪の伝承も多々ある。……しかし、殆んどが人に作られた神の様な存在だ。ルーンがそう言った存在であると言うのは実感がわかない。


「そんなに考え込まないの。あくまで一例よ? それに、私の見立てじゃ違うと思うけどねー。そんな簡単に人間辞められたら、今頃世界は大パニックよ。アウターの中でも真理を曲げられる存在なんてのは更にツチノコみたいなものだし、そんなのが現れたら私も気付くわよ。真理を捩曲げるとか完璧に世界の敵だもの。アマナだって馬鹿じゃないし、最近はアマツもこっちに居るしね。本当に真理が曲がったなら誰かしら気付くわ。……アマツと言えば、この前は店で会ったんでしょう?」


 この前とは恐らく、トワやユーリアと一緒に旅行に行った時の事だろう。ミシュナは自然と、あの時仕事を押し付けられたと愚痴っていたアマツの顔を思い出していた。


「ええ、少し前にね。旅行がてら色々と甘味を食べさせて戴いたわ。今回の事について意見を聞ければ良かったんだけど、トワとユーリアって人達も一緒だったから……。」


「ああ、言ってた言ってた。夢魔の女の子とメイドさんだっけ? 夢魔の子はやたらと気が正常化されてるからミウちゃんの使い魔かと思ったって言ってたわよ。」


「……残念ながら二人とも司羽の子よ。司羽の使い魔と、司羽のメイド。ルーンと司羽がデートするからって、その間に私が引き受けたのよ。」


「あらら、ツカ君そんなにモテるの? それにあんなに可愛い子とデートなんて、ミウちゃんが焦る訳よねー。」


「…………。」


「あら、ツッコミ無し?」


 司羽とルーンは本当はもう付き合っていて、焦るのも遅すぎるくらいなのだが、ミシュナはそれをシュナには言わなかった。と言うよりあまり言いたくない、絶対にその状況を面白がる筈だ。……とにかく、まずは話題を元に戻そう、話が進まなくなってしまう。


「それで話を戻すけど……ルーンがお母さんの言うアウターとかいう存在じゃないなら……他には?」


「んー、そうねー、それを可能にする力を持った協力者が居たとか、世界にやたら愛されてたから世界からの後押しがあったとか、世界に必要があったとか。まあそんな感じかしら、あくまで全部可能性だけどね。」


 適当に可能性を乱立させた風なシュナだったが、ミシュナはその中に良く理解が出来ないものが混じっていたのに気付いた。世界の後押し……まるで世界に意思があるような事を言う。


「世界からの後押しってどういう事? まさか世界に本当に意思があるっていうの?」


「ミウちゃんの言う意思とはちょっと違うけど……世界は概念であって生き物じゃないしね。まあ、俗に言う奇跡よ。神様の気まぐれとか、その手の物だって思えばいいわ。その奇跡が起こったのよ、可能性の一つとしてはね。」


「……そんな適当な……。」


「適当でもないわよ? 魔法だって昔は…………もう誰も覚えていないくらい昔には、馬鹿馬鹿しいって言われる時代もあった。でも今は世界の常識、そういう物なんだもの。ツカ君だってこっちに馴染めば考えも変わるわ、皆そうよ。常識になってない世界の常識なんていくらでもある。それを人が奇跡って言葉で一つにまとめる。いつだって人は、自分の頭や体で理解出来るもの以外を理解しようとしないわ。宗教における神様だって、人が理解出来る範囲で信仰してる。全知全能って言葉だって矛盾してるわ。人が知る事が出来る限りの全知を言っているに過ぎない、知識を超越した先にあるものを想定していない。」


「それは、まあそうかも知れないけど。……母さんの話は、やっぱり私には難しいわ。」


 こういう話をされては反論出来ない。答えのない問いに対して、何かしらの答えを出すのは簡単だが、証拠もなければ根拠もない。そう考えればシュナの言う通りなのかも知れない。人間は結局、自分の理解出来る事以外は排除したがるものなのだ。


「……結局母さんは、世界の力で奇跡が起こってルーンの魔法を成功させたって言いたいのね?」


「さぁ、どうなのかしら? ふふっ、自分から例を出しておいてなんだけど、私は世界がそんなに優しいなんて思わないけどね。ツカ君がこっちに来て喜ぶのなんてミウちゃんくらいだし。あくまで可能性の一つなんだから、気にしすぎちゃ駄目よ?」


「……何よそれ。」


 そう言って、結局シュナは自分で出した可能性を自分で潰してしまった。良くわからない理論をポンポンと挙げて、相手が納得しようとするとそれをぶち壊してしまう。そのやり方はまるで詐欺師だ。……そこまで考えて、ミシュナはやっと気付いた。


「……なんか母さん、さっきから私を虐めて楽しんでない? 元々母さんが私に聞いたんだから真面目に考えてよ!!」


「ふふっ、バレちゃった? ミウちゃんが可愛いからつい。」


「………もう、やっぱり母さんは真面目に考える気なんてなかったのね。最初から私をからかうつもりで誘ったんでしょ。」


 ミシュナは溜息をついてそう言うと、シュナからそっぽを向いてオレンジジュースの注がれたグラスに手を掛けた。折角こちらが真剣に話しているというのに、失礼な話ではないか。そもそも聞いてきたのもシュナからだと言うのに。ミシュナのそんな気持ちを察したのか、シュナは少しやり過ぎたかも知れないと反省しながら苦笑した。


「そんな事ないわよ? 真面目に考えても分かるわけない事だから、真面目になってないだけ。理由に関してはさっき言った通り色々考えられるから、きっとその内の一つなんでしょうね。」


「…………分かるわけないって、母さんに分からない事なんてあるの?」


「あらー、貴女もツカ君みたいな事を言うわねー。分かることは分かるけど、分からない事は分からないわよ。皆一緒、それが世界のルールなの。だから私は自分からそこを出るつもりはないのよ。今更世界に逆らうなんて、なんの得もないしね。世界もそれを承知してるから、世界が成り立つ。均衡って大事よー?」


「……母さんの言う事は難しいわ。」


「難しくなんてないわよ。この国にいる限りはこの国の法に従い秩序を護る。ただそれだけの事よ、それが世界って枠に広がるだけ。出来る事とやって良い事は別なのよ。」


 シュナはそう言ってケラケラと笑った。傍から見ればまるで酔っているかの様だが、ミシュナは自分の母親が酒に酔っている所を見た事がなかったし、シュナ曰く『私は酔わない』らしいから恐らく今も素面だろう。そのアルコールへの強さも少しは遺伝すれば良かったのにと思う。そんな事を思いながらミシュナは自分のグラスにビンのジュースを注いだ。


「はぁっ、母さんに聞けば答えが分かると思ってたけど、甘かったかしらね。」


「ふふっ、そうねー。甘いわー甘甘よ。」


「……もう、からかわれ損だわ。」


「ふふふーっ、望むならミウちゃんは可愛いまま居て欲しいわねー。」


 シュナの言葉に、また一つ溜息が漏れる。つまり自分は一生この人にからかわれて過ごすのだろうか、それは何ともストレスが溜まりそうだ。しかし、それが親子と言うものなのかも知れない。この分のストレスは、司羽で晴らすことにしよう。そんな事を考えながら自棄飲み(オレンジジュース)をしているミシュナに、シュナはクスクスと笑いかける。


「………ふふっ、悔しいのね?」


「何よっ、性格悪いわね。別に母さんにからかわれるのなんてもう慣れちゃったわよ。」


 何を今更と言うように、ミシュナは顔を逸らしてそう悪態をついた。もう慣れてしまって悔しいなどと思う感情すらなくなってしまっている。それはそれで嫌な気分だが。


「私のことじゃないわよ。」


「はぁ? じゃあなんなのよ。」


「勿論ルーンちゃんって子がツカ君を呼べた事よ……悔しいんでしょ? 私はツカ君の来た方法を聞いただけなのに、やたらと食いつきが良いんだもの。……本当は、認めなくなかったんでしょう? その子がツカ君を呼べたこと。」


「…………別に。」


 ミシュナはシュナと視線も合わせずに呟く。それが相手に肯定と取られてしまう行動だと分かっていても、ミシュナはシュナの方を見れなかった。ただ発言を拒否するようにチビチビとグラスに口をつける。


「魔法を使って、世界を越えてツカ君を呼ぶ、もしくはミウちゃんが直接ツカ君に会いにいく。その可能性は、私が昔に否定してしまったものよ。もし、私が世界の真理なんてものをミウちゃんに教えていなければ、違う結果になったかも知れない。」


「お母さんは関係ないわよ。私は気術士であって魔法使いじゃない、その事に誇りを持ってる。それに魔法は嫌いだもの。」


「でも、才能はあるわ。私の子供なんだから、私と同じ様な存在として生まれてきたかもしれない体だもの。……それに、魔法の才能はその人の清廉な想いに比例する、それが世界のシステム。だからミウちゃんが次元魔法や空間制御の魔法を極めようとしていれば、きっとルーンちゃんみたいに……ううん、もっと早く、同じ事が出来たはずよ。」


「………言ったでしょう、関係ないわ。ルーンはやって私はやらなかった、それが全てよ。それに母さんは言ったじゃない。才能とか、努力とか、人間にはそんなんじゃ越えられない壁があるって、それが世界の壁なんだって。母さんの言葉を借りるなら、司羽を呼ぶ一度だけだとしても、世界に認められたのはルーンなのよ。私が同じ事をしていたとしてもそうなったとは限らない。いえ、奇跡っていうくらいなんだから、そうならない可能性の方が……なんて、ルーンも私にそんな事思われたくないでしょうけどね、私は結局何もしてないんだもの。比べるまでもないわ。」


 シュナの言葉を遮るように告げられるミシュナの言葉に、シュナは思わず苦笑が漏れてしまう。先程まで誤魔化していた様に感じたのに、まるで誤魔化せていない。ミシュナの心情がわかってしまうのは自分が母親だからなのか、それともミシュナが分かり易いからなのか。どちらにしても、予想は当たっていた様だ。


「やっぱり、悔しいんじゃない。」


「…………。」


 言い返せない。いや、きっと言い返したくもないのだろう。もう幾度となく思った事だ。自分は不可能だと割り切って何もしなかった、ルーンはただ自分の望みに貪欲に必死になった。その違いが今の状況なのだと、何度自分に言い聞かせたか知れない。ナナに言われて、自分の気持ちを再確認した所でそこだけはずっと変わらないのだ。……だからもしかしたら、答えを知ることでルーンと自分の違いを知りたかったのかも知れない。もしくは………、


「あの子にしか出来なかった、だから私がやっても仕方なかったんだって、口実が欲しかったのかも知れないわ。みっともないわね、仮にそうだったとして何か変わるわけでもないのに。……もしそうだったら、仕方ないからって理由を付けられる気がしたのよ。私も司羽に好きだって言って良いように感じたの。」


「………そっか。」


 シュナはそんなミシュナの告白を否定しなかった。ただ頷いて、静かに見つめるだけ。


「私は何もしなかったのに、ルーンと同じだけの事を望んでもいいのかって考えちゃうのよ。いつもいつも、そればっかり。」


「……ミウちゃんは本当に真面目ね。」


「別にいいでしょ、私の性格だもの。そう簡単には直せないわ。」


 ふぅ、と溜息をつく。どれだけ決意を固めた所で、倫理よりも、恥じらいよりも、何より自分が何もしなかったと言う気持ちが邪魔をする。誰に迷惑をかけるとか、そういう話じゃないのだ。近づきたい気持ちと裏腹に、近づいてはいけないという気持ちが常にある。


「だから司羽に迫れってナナに言われても、なんだか踏み出せないのよ。正当に報われるべき人を無視したくない。だから私はせめて、あの子に認められたいのかも知れないわ。司羽の傍に居ていいよ、好きでいていいよって……。でないと、とてもあの子と並び立てないわ。一緒に司羽を愛するにしても、奪い合うにしてもね。」


「認められたい………か。」


 それは本来、恋愛対象である司羽に抱く気持ちなのかも知れない。人によっては相手と対等でいる事に安寧を感じる人もいるのだから。しかしミシュナの気持ちは、それとはまた違うものだ。ルーンという自分の出来ない事を成し遂げてしまった相手にまず認められたいという。本来ならばそれは、認められる筈もない事だとミシュナは分かっていた。自分がルーンの立場だとして、いきなり司羽を取っても良いかと言われれば認められないに決まっているのだ。だからそんな気持ちを持っていてはいけないと、ミシュナも思ってはいる。このままナナの言ったように、司羽と離れてしまうくらいならばいっそ我儘に動いてみたいと、そう感じる自分もいるのだから。


「ねえミウちゃん、そういえば今はツカ君と一緒に住んでるのよね? そのルーンちゃんも一緒に。」


「えっ……なんで知ってるの?」


「いやー、さっきミリクって教師にツカ君の事を聞いたら、ミウちゃんを含めた女の子いっぱい侍らしてルーンちゃんって子の屋敷に住んでるって聞いたから。」


「………ま、まあ概ね間違ってはいないけど。」


 間違っていないどころか、寧ろそのまんまだ。改めて言われると、もの凄く不潔な状況だが、もうそれに慣れてしまっているミシュナからしてみると微妙に肯定し難いものがある。というより、メイドや使い魔である二人はともかく、自分があそこに住んでいるというのは周りから見ればそのまんまの意味に取られてしまっても仕方がない。


「………ふーん、なるほどね。いつ頃から暮らしてるの?」


「私が住んでるのは司羽と再会した日からだけど……なっ、何よ、良いじゃない別に、色々と便利なのは事実なんだし……。」


「ふふふっ、別に悪いなんて言ってないわよー? ただ、ちょっと思うところがあってね。」


「何よ、それ……。」


 ミシュナはジト目で睨んだが、シュナは相変わらずクスクスと笑うばかりで、ミシュナの問いに答えようとはしなかった。このままでは気になるので追求しようかとも思ったが、シュナを追求したところで無駄だろうと直ぐに考えなおす。


「もう、なんなのよ、本当に。」


「気にしないの、ちょっと気になっただけよ。それよりミウちゃん、ちょっとだけ話を戻すけど……さっき言ってた世界の奇跡が本当に起こったのかとか、もしかしたらルーンちゃんなら知ってるかも知れないわよ?」


「……またいきなり、どういう事よ?」


「いや、確証はないけどね。本人だったら何か気付いた事もあるかも知れないわ。ルーンちゃんだってまさか成功するとは思ってなかった筈だもの、前例もなければ、世界間移動の理論もないくらいだしね。」


 確かに、こういうのは本人にまず聞いてみるのが一番いいかも知れない。とはいえ、なんだかルーンの行為にケチをつけるようであまり気は乗らないのが本音だ。ルーンの努力を、奇跡なんて言葉で片付けていいはずがない。


「お母さんの言いたいことは分かるけど……もういいわ。奇跡にしろ、ルーンの持ってる何かがあったにしろ、これは私なりに気持ちに向き合っていくしかないもの。そんな事ルーンに聞くの、あの子の努力に対する冒涜よ。」


「あら、そう? まあ私はどっちでも良いんだけどね。ツカ君がルーンちゃんの魔法で来たって事実さえ分かれば。そのくらいなら私達が対処するまでもないし、安心したわー。ツカ君もちょっと不器用だけど根は良い子だしね。」


 ミシュナの答えにいつも通りの含み笑いで返すと、シュナはそう言ってまたおちょこを煽る作業に戻った。本当に良く飲むと感心してしまう。自分ならば一口でアウトだろう。


「私達が対処って……そういえば、お母さんとかアマツさん達のそっちの仕事って全然知らないんだけど。聞いていいかしら?」


「んー、別に良いわよ。深く話すのは無理だけど。それに仕事って訳じゃないんだけどねー。使命だーなんて言って熱くなる子もいるけど、私はあれね、ボランティア? ぶっちゃけ手間でもないからどうでもいいんだけどね。内容はあれよ、バグ取り、デバッガーよ。主に世界の秩序を守ってるわ。」


「……アマナさんも言ってたけど、それだけ聞いても本当に謎ね。ちなみに今回だったら、どんな状況だったらお母さん達が動くわけ?」


「うーん、そうねー。動くって表現はあんまり相応しくないかもだけど。例えばー。」


 丁度司羽関係で少し興味が沸いた為か、ミシュナが適当に振った疑問に、シュナはちょっと考える素振りを見せてから人差し指を立てて、言った。


「ツカ君が自分の意思で、自力でこっちに来たなんて話だったら、ちょっと困ったわね。あの子ならやりかねないし。ツカ君がこっちに来たって聞いた時は、遂にやったかーって気持ちになったもの。もしそうならミウちゃんには悪いけど、ボランティアで無理矢理元の世界に返さないといけないし。違って良かったわ、ミウちゃんの恋を応援する母親としてもね。」


「でも……司羽は魔法使いじゃなくて気術士よ? いくら司羽が凄くても……。」


「そんなの関係ないわよ、アウターってのはそういうものなんだから。何が出来るようになってもおかしくは……。」


「………………。」


「あっ………いや、その……。」


 話の流れでシュナがさらっと言ってのけた言葉に、一瞬でミシュナの機嫌は最悪になる。シュナがそれに気付くのは、ミシュナの不機嫌オーラが辺りに充満し、鋭い視線がビシビシと突き刺さった後だった。


「………お母さん、司羽をアウターって言うのはやめてって言ったでしょう? 侮辱よ、それ。」


「あー、うん、ごめんねー。ミウちゃんの前で禁句なの忘れてたわ。でも私は別にツカ君を侮辱してるわけじゃないのよ……ほら、あの子がすっごく良い子なのは良く知ってるし。」


 睨みつけるようなミシュナの視線に対して、カラ笑いで返したシュナは自分の失言に気付いて酷く後悔した。わざとではないにしろ、ミシュナの数少ない地雷を踏んでしまった。しかもその中でも最大級の爆発力を持つ地雷だ。こうなるとミシュナの機嫌は中々戻ることはない。少なくとも今日は絶望的だろう。


「分かったから、もう絶対に言わないでね。……私、買い物して帰らないといけないからそろそろ行くわ。じゃあね、お母さん。今日はありがとう。」


「ええ、たまには帰ってくるのよ?」


「お母さんじゃあるまいし……一週間に一、二回は帰ってるわよ。それじゃあね。」


 ミシュナはそれだけ言うと、バッグを持ってスタスタとその場を立ち去った。そしてミシュナの姿が見えなくなり、バーを出た事を確認すると、シュナはそのままテーブルに突っ伏した。やってしまった、という表現がこれほどマッチする状況も中々ないだろう。


「………あれほど怒ったミシュナは初めて見るな。無表情だったが。」


「ルニ坊……盗み聞き? いい趣味じゃないわね。」


「誤解するな、今戻ってきたところだ。………アウターがどうのと言うのは聞いてしまったが。」


 店の奥から戻ってきたマスターはそう言うと、ワインボトルとワイングラスを二つテーブルに置いた。そろそろ焼酎のおかわりをもらおうと思っていたのだが、たまには気分を変えてワインも悪くない。気分転換でもしないと、やっていられない気分なのだ。といっても、今回のことは完全に自業自得なのだが。


「………はぁっ……地雷ブチ抜いちゃったわ。一ヶ月は家に帰ってこないわね、あれ。まあ私も普段家にいないから、どっちにしても中々会うこともないでしょうけど。」


「………本当に親子か?」


「あったりまえでしょ? あんな私に似て可愛いんだから……はぁっ。」


「……重症だな。」


 相当ダメージを受けているらしいシュナの傍に置いたグラスに、白ワインを注ぐ。注ぎ終わると、すぐさまシュナの手が伸び、グラスを一気に煽って飲み干してしまう。


「ぷはー、ほら、もっと頂戴。代金はアマナにつけとくわ。」


「それは払わないと言う事だろうが………まったく、司羽がアウターだと言うのはトワの素性を聞いた時にもしやと思っていたが……。」


「トワ……あー、夢魔の子だっけ。……でもそれ、ミウの前では禁句だからね。もう来なくなるわよ、あの子。」


「その様だな。とはいえ、俺もアウターやらお前たち真魔については良く知らないが、アウターと言うのは別に差別用語や侮辱の言葉ではないだろう。何故ミシュナはあんなに怒るんだ。」


 マスターは自分の分もグラスに注ぐと、先程までミシュナが座っていたシュナの対面へと腰掛けた。マスターが言った様に、アウターとは決して差別用語ではない。人を越えるような力を持った人間への畏敬の念を込めて使う事が多い言葉だ。しかし……、


「確かに一般的にはそういう風に使われるけど……私達の間ではそうじゃない。アウターって言うのは直訳すれば……道を外れた者、異常者って意味なのよ。力にしろ、心にしろね。」


「………異常者、か。」


「本来そういう意味で使われてたのが、歴史の中でアウターが美化される事で変わっていったのよ。人格破綻者でも、エーラへの貢献が凄かったりすれば英雄になるわ。今ではすっかり、アウターの意味は変わったけど。」


 シュナは遠くを見つめるような眼で、手に取ったグラスの中を見ていた。白ワインの注がれたグラスには、シュナ自身の顔が写っている。マスターはそんなシュナの行動に、何も言わずにグラスを傾けた。


「最近ではそうでなくても色々ごっちゃになってるけどね、真魔の事をアウターって呼ぶのもいるし。私達は別に気にしちゃいないけど。言葉の乱れって何処にでもあるわよねー。」


「……真魔か、アウターと呼ぶ気持ちも分かるな。最も、真魔の名を知らない者がそう言うのだろうが。」


「ええ、私達からしてみれば真理を曲げて当たり前、世界を越えて当たり前。元々そういう存在である私達に、人を超える辞めるもないんだけどね。まあその人達にしてみれば、畏敬の念を込めてくれてるんだろうと思うけどさ。別に私達はそれでどうするって事もないのよねー。」


 そう言って、今度はグラスをチビチビと傾ける。マスターからしても、なんでも一気に飲まれたらたまらないので、少しホッとしていた。


「しかし、異常者扱いとはな。確かにミシュナが怒るのも分かる。いくら言葉の意味が変わったとは言え、侮辱だと感じてしまうのも無理はない。」


「あら、何か勘違いしてない?」


「何がだ?」


 マスターが異常者という言葉を考慮してミシュナの気持ちに同調していると、シュナからそんな言葉が飛んできた。勘違いと言われても思い当たらない。


「ミウには悪いとは思ってるけど、私はツカ君を『そういう意味でのアウター』と言ったのよ。つまりは異常者って意味ね。私としては侮辱のつもりはなかったんだけど………駄目ね、完全にデリカシーに欠けてたわ。」


「………何を言っている。あいつは人格破綻者などではない。」


「ええ、分かってるわ。そんな人ならミウを預けようなんて思わないもの。私は人格破綻者って意味でツカ君をアウターと言った訳じゃない。……でもあの子は、ツカ君は間違いなくアウターなのよ。大きな力を持ってる事は明らかだし、目的の為には手段を選ばない冷酷さもある。……勿論、今は昔とは違うかも知れないけど、あの子の信念がそう簡単に揺らぐとは思えないわ。あの子はそれだけの事を経験してきたんだもの。」


 そう言ってマスターを見たシュナの眼は本気だった。一体誰の話をしているのかと、マスターにしてみればそんな感想を持ってしまう話だったが、シュナがこんな真面目な顔で冗談を言うとは思えなかった。それに、冗談だとすれば質が悪い。


「普段の司羽からは想像も出来ないけどな。」


「そりゃあそうよ、ツカ君は基本的に超絶良い子だもの。私やあの子達が手塩にかけて情操教育したんだからそれは間違いないわ。家事スキルも適度にあるし、女の子も大事にする、なんだかんだで人には優しくする子だし、お婿さんとしての条件は大体満たす様に皆で知恵を出したんだもの。」


「それについては良くわからないが、そこまで持ち上げた司羽をよくも異常者などと言えるものだな。」


「まあね、例えば恋人同士だって過保護になり過ぎてストーカーになれば異常者扱いされるでしょ? それと一緒よ。ちょっと良い子過ぎたのよ、ツカ君は。」


「………なるほどな。なんとなくは、分かった気もする。」


 シュナの良い子過ぎたと言う言葉が何を指すのかはマスターも分からなかったが、ニュアンスだけは伝わってきた。シュナも決して司羽の事を悪く言いたい訳ではないのだ。だから、この話はもうやめにしよう。


「とにかく、ミシュナの前でこの話題は駄目だな。肝に銘じておこう。」


「そうしなさい。他にもあの子にツカ君関連の冗談は結構通じないわよ? ミウもまだまだ子供だし、ああ見えてツカ君にデレデレだから。自分以外がツカ君の悪口言うのに耐えられないのよ。」


「そうなのか、普段見てる分には分からないが。」


「……そういえば、ミウとツカ君って良く来るの? ちょっと面白そうな話とかない?」


「……面白いかは分からないが良く来るからな、二人の話ならば結構ある。」


「ほうほう、勿体ぶらずに話しなさい。次の時にミウをからかうネタにするわ。」


 ミシュナが聞いていれば激怒しそうな事を言いながら、シュナはマスターに話を急かした。初めて司羽が来た時の話、その後ミシュナを連れてきた時の話、司羽が元の世界に帰ると思い込んでミシュナが自棄飲みするも、結局一口で倒れてしまった時の話。

 そしてこれは後日ミシュナがマスターから聞いた事だが、結局その後も延々と夜更けまで飲みながら話続けて、終わった時には酒瓶が二桁は空いていたのだが、結局シュナは何も払わず、にこやかにバーを後にしたのだと言う。



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