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異世界と絆な黙示録  作者: 八神
第二章~恋の矛先~
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第30話:頼ると言う事

本当は前回に付けるつもりだったんですが、何を思ったのか離してしまいました。

見難いでしょうか? もしそうなら意見を下さると嬉しいです。感想などもあまり頂けていないので、どのキャラが好きーとか言うのから、ここはこうした方が良い、というアドバイスまで、気付いた事など教えてくれると作者としては凄く嬉しいです。

「えっと、『どうしてもその願いを叶えたくて、それのせいで周りを巻き込んで傷つけたくないのなら、俺が手を貸してやる。』でしたっけ? 女の子との話し方が分からないとか言う割には中々の口説き文句じゃないですか、ねえ司羽様?」


「……………ま、まぁ確かにクサイ台詞だったとは思うけど……。結果的には良い方向に運んだと思わないか? ほら、あのままじゃリアも悩み続けていただろうし……。」


 リア宅の門を潜り抜け、数歩程度歩いた所で唐突にユーリアが不機嫌そうな顔で言ったのに対して、司羽はやっぱり来たかとでも言いたげな表情で視線を逸らした。ユーリアが不機嫌な理由は恐らく、先程のリア達とのやり取りの中で気に入らない点があったのだろう。司羽の反論を受けたユーリアは、案の定納得がいかないと言った風に唇を尖らせた。


「確かにそうかも知れません。でも私が気に入らないのはそれだけじゃないんです。リア様の事だって一人で分かった様な感じでしたし、どうせ聞いても教えて下さらないんでしょう? 秘密主義の司羽様は。」


「そりゃあな、俺自身リアの性格と行動から予想しただけで、俺が思っている通りの望みがあるのか分からないし、何も確証になる様な事を知ってる訳じゃないんだから、下手な事言う訳にもいかないだろう?」


「それは確かにそうです……けど………。前から思っていましたが、司羽様はなんでも自分だけで決めようとなさるんですね。今回の件で確信しました。」


「別に……俺はそんなつもりは………。」


「まあ、あまり自覚はないんでしょうけど。」


 ユーリアの言葉に反論する様に咄嗟に司羽はそこまで言って、ユーリアの寂しそうな瞳を見てしまい、その後に続く言葉を呑み込んだ。自分が何か間違った事をしたのだろうかと司羽は考えたが、どうしても理由が分からなかった。必要な時には周りにも意見を求めているし、今回の事だってリアに最終決定権はあるのだ。


「………私は別に今日司羽様の仰った事が間違いだなんて言っている訳ではありません。実際リアさんには何か望まれている事があった様ですし、司羽様の言っている現状への解釈もとても優れた物だと思います。私が今回の事に何か口を出す意味なんてないのかも知れません。」


「だったら……。」


 ユーリアの発言に司羽は多少ムッとした様子で答えた。何か間違いがあったのなら責められても仕方ないが、理由もなくそんな風に非難されたのではどうしようもない。だがユーリアは、そんな司羽の心情を見透かしたかのように言った。


「今、司羽様はこう思っているのではないですか? 間違いがあったのなら非難されても構わないけれど、そうでないなら自分が責められる謂われはないと。必要な時には意見も求めているから効率を欠く様な事にもなっていないと。」


「………ああ、そうだよ。」


「確かに、司羽様の言う通りなのかも知れません。私が正しいなんて大きな態度で言う事は出来ません。ですからこれは、半分以上私の我儘になってしまうと思います。」


 司羽はユーリアが自分の思っている事を言い当てたので、取り敢えず諦めてユーリアの言い分を聞くことにした。それにユーリア自身に我儘だと言われてしまえば司羽からは何も言えない。それ以前にユーリアにこんな表情をされては調子が狂ってしまうのだ。悲しげだが、信頼していると言う態度が伝わって来る、こんな笑顔をされたのでは。だから何か意見をするのはユーリアの意見を聞いてからでいいだろうと、司羽は思った。


「………先程も言った通り、司羽様は間違いをした訳ではありません。司羽様は御自分一人でリア様の為に策を考えて、リア様の心の内まで考慮して、それはとても凄いことだと私も思います。ですが、司羽様は一人に慣れ過ぎてしまっているのではないかと感じてしまうのです。だって、司羽様は誰に頼らずとも生きていける方だと思うから。勿論、知識が足りない時には誰かに聞くこともあるでしょう。手を借りる必要がある時は借りるでしょう。ですがそれは、誰かを信頼しての事ではなく、ただ単に必要だからでしょう? 効率を考えての事でしょう?」


「……………。」


 そこまで言われて、司羽にもユーリアの言い分が理解出来た。確かに、司羽には効率的になってしまう癖がある。あまり感情的になったりもしないし、自分でもそれを自覚していた。そしてだからこそ、このユーリアの指摘は、司羽の胸の奥にくるものがあった。反論する気も起きなかった。


「司羽様が私達を大切にしてくださる様に、私達だって司羽様を大切に思っています。まだ出会ったばかりの私ですら、そう思います。だって司羽様は本当に私の事を考えて下さっているんですもの。今日だって、わざわざ司羽様にとって必要がなかったネネさん達を議論の中に入れたのは、私との仲を回復させる為だったのでしょう? 私の心情を理解しての事か、私がまた何かの機会に攻撃される危険性を排除したいが為の事かは分かりませんが、どちらにしろ私の為の行為です。司羽様はそういう気の使い方をする方だって、もう分かってるんですから。」


「……別にそれだけって訳じゃないさ。あの二人のリアへの忠誠心だって見たかった。」


 司羽は自分が気付かれないだろうと思っていた考えが見透かされて、恥ずかしく思う所もあり、咄嗟にそう切り返し、ユーリアの瞳から視線を外した。それを聞いたユーリアは小さく笑うと、そのまま話を続けた。


「私は、効率や利害の上でしか誰かに頼る事や甘える事が出来ないのは凄く寂しい事だと思うのです。私ではもしかしたら役に立つ事は出来ないかも知れません。ですが私は、司羽様になんでも一人で抱え込んで欲しくないんです。今回の事に関わらず、きっと司羽様は誰かに自分の事を話すのが苦手な人なんだと思います。でも決してそれに慣れて欲しくないのです。いつか貴方が深く悩んでしまう事があった時、一人で結果を出して、不幸になって欲しくないんです。司羽様は自分よりも大事だと思う事を優先させて、自分の事を軽視してしまうでしょうから。」


「……そんな事はないぞ。」


「いいえ、絶対にそんな事あります!! さっきのネネさん達に対する態度だってそうです。リア様が後で後悔しない様に、他の人の意見を排除したのは司羽様らしいと思います。ですがその為にネネさん達の意見を完全に封殺してはネネさん達からの司羽様への印象が悪くなってしまいます。」


「いや、でもそんなの大した事じゃ………。」


 司羽はそう言いかけて、気付いた。司羽の失言を聞き取ったユーリアは、それ見た事かと司羽をジト眼で見つめている。どうやら反論はもう聞いてもらえないらしい。ユーリアは小さく嘆息すると、司羽に詰め寄った。


「ほら、直ぐそういう結論になっちゃうんです。私とリア様とトワ様が仲違いをしていた時もそうです、あの御二人ですから司羽様が私の為にした事だと理解してくださいましたが、あれではリア様とトワ様に分からず屋だと思われても仕方がないです。それとあの司羽様の御学友とその妹の時も同じです。あの時だって………。」


「ああ、もう、分かったよ!! 悪かったよ!! 確かに俺はそういう癖があるし、ユーリアの言ってた通りに考えてたよ!! ったく………。」


 失言の後、ユーリアに次々に罪状(?)を並び立てられて司羽はついに降参した。そして司羽は叫ぶ様にそう言った後、一つ溜息を吐いてから不機嫌そうな顔でユーリアの方を振り返った。なんだか先程の苛立ちも全て吹き飛んでしまった様だ。ユーリアはそんな司羽を見て、クスリと笑った。


「………ふふっ、なんだか司羽様って、意外と子供っぽい所もあるんですね? いままであんまり年下に見えなかったんですが、凄く新鮮な気分です。」


「それはどういう意味だ。俺が気取ってたとでも言うのか?」


「もう、何もそこまで言っていないじゃないですか。拗ねないでくださいよ。本当に子供みたいですよ?」


「…………はぁっ。」


 司羽は可笑しそうに笑い続けているユーリアに、続けてもう一度深い溜息を吐いた。そしてユーリアの笑い声が止んだ後、司羽が表情を覗き見ると、司羽がいつか見た、優しげで、慈しむ様な表情に変わっていた。


「昨日、ルーン様も仰っていました。自分は司羽様の事を何も知らないって。」


「ルーンがか?」


「はい。きっとルーン様も不安なのですよ、司羽様が自分に相談事を何もしてくれないのが。ですから、ルーン様の為にも、もっと私達を頼ってください。些細な事でも良いんです、一人で抱え込まないでください。私は司羽様の侍従なのですから、気を使われ過ぎると逆に困ってしまいます。」


「…………そう、なのか。」


「そうなんです。私はこう見えても尽くすタイプの女なんですよ?」


 司羽は、そう言って微笑んだユーリアに、なんだか毒気を抜かれてしまった。それにルーンにまでそんな風に思われて居たのかと反省した部分もある。これはもうユーリアの言い分を認めるしかないだろう。全面的に降伏である。そう考えを新たにした司羽は、ユーリアにその旨を伝えようとして、今二人の間に流れている沈黙に気付いてなんとも言えない気分になり、咄嗟の照れ隠しをしてしまった。


「じゃあ早速だけど、ユーリアの服を買いに行くぞ。選ぶのを手伝ってもらう。なんか替えの服なんて殆んどないみたいだし、そんなマントみたいな服じゃ家事もこなせないだろ。適当に買おうと思ってたんだけど、全然こういう服の事なんて分からないからな……。メイド服っぽいのでいいのか? リアの家の使用人はそんな感じだったけど。」


「………司羽様? それって結局私の為じゃないですか? まぁ服は必要ですし、仕事着を買っていただけるのは有り難いですけれど………。まぁ、司羽様らしいと言えばらしいですが。ちなみに、そのメイド服ってなんですか? 向こうの世界での使用人服の様なものですか? 私が作れる物ならば生地を買って自分で仕立てますけど。」


 司羽とユーリアはそんな話をしながら足を商業地区の方へと向けた。ユーリアは結局自分へ気を回してしまう司羽に内心で苦笑しながら、いつか、長い時間が掛かっても、司羽の事を知ることが出来ればいいと、そう思ったのだった。

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