第11話:課外学習(中編)
まさかの投稿出来ていない事実が発覚しました……。
待ってくれていた皆様申し訳ございませんでした。
「んで、これがお前の考えた作戦か……?」
「そうさ!! これならいくら鉄壁の装甲を纏おうとも隠す事は出来ないはずだ!!」
はぁ……、と口からは溜息しか出ない。普通リアの髪を見るだけでこんな事をここまで綿密に計画するか? と司羽は考え込んでしまった。ムーシェを見る目が若干変わったかもしれない。
「確かにそうかも知れないけど……覗きって、正気かよ?」
「ふぅ、貴方、最低ね。」
俺とミシュナは揃って毒付いた。だがムーシェは全く気にしていない。
さも当然と言う様に嘆息した。
「だって仕方ないだろう? ターゲットは先生に相談して皆とは違う時間に入る様にしているから、ミシュナにも確認してもらえないんだから。」
ムーシェはそう言って腕を組んだ。それは確かに正論に聞こえるし、それしか方法がないのは事実だが、ミシュナは軽蔑の視線を送るのをやめない。
ムーシェの評価は死んだな。
「別に確認は君にしてもらえば問題ないだろ? 女が女を覗いても危ない趣味の持ち主だと思われるだけだし。」
「ねぇ司羽? こいつ殺っちゃって良いかしら? 全身にナイフを1000本刺して何本目で死ぬか確かめたいから。」
ミシュナが本気の眼で俺に聞いてきた。頷いたら間違いなくやるな、これは。
ムーシェの顔が真っ青になったのも分かるが……うん、自業自得。まぁミシュナの発言には凄い威圧感と殺気があったし無理もない。
「だがまぁ、確かに他に方法もないしな……だが、それよりも……。おいルーン、そんな所で盗み聞きか? 怒らないから出て来いよ!!」
司羽が部屋の入口に向かってそう叫ぶと、ドアを開いてルーンが姿を現した。ムーシェは驚いた様な表情をしたが、ミシュナは気付いていた様でさほど反応を示さなかった。
「あれ、やっぱりバレてたの? まぁそれは良いとして、僕も協力するよ、その作戦♪」
「は………?」
司羽が惚けた声を出すとルーンは無邪気に笑った。悪戯がばれた子供がそうするような、ペロッと舌を出して楽しげに。
その瞳からは純粋な好奇心しか見られなかった。
「私も興味あるもん。それに司羽を連れて来たのがリアかもって思ってるんでしょ……? 疑いたくはないけど、私も十五歳くらいで銀髪の子は知らないし……。」
ルーンは少し声のトーンを下げて言った。司羽はルーンも同じ答えにたどり着いた事に感心しながらも、自分のせいで二人の関係が悪化したらと考えていた。ただでさえ二人がお化け屋敷から出て来てから様子が少しおかしい気がする。極微細な変化ではあるが……。
「大丈夫だよ。髪の色だけ確認すればいいんだから、司羽もそんなに心配しないで♪」
「だけど、ルーンなら髪の色くらい見せてくれるかも……。」
俺がそう言うとルーンは無理だと首を横に振った。ふむ、ルーンでも駄目か。やっぱり覗きしかないのかなぁ、最低な事だと自分の中で思っていた事を計画まで立ててやらんといかんのか。
「リアは見せてくれないと思うな。オバケ屋敷でも聞いて見たけどダメだった。」
「うーん、そうか……。」
俺がまだ悩んでいるとルーンはクスッっと笑って背中を叩いてきた。
「司羽は何にも心配しないで良いんだよ♪ とにかく作戦実行は1時間後ね? 僕は部屋に戻ってるから♪」
「あ、ああ」
そう言ってルーンは自分の部屋へと戻って行った。司羽は何かルーンに違和感の様な物を感じたが、それも一瞬で消えたので気に止めるのは止めた。
「まぁ取り敢えず。ミシュとルーンが確認係だな。頼んだぞ?」
「まぁ、やるだけやるわよ。協力を申し出たのは私だしね……。」
ミシュナはそう、少し不満そうにそう言った。そして、四人の覗き見作戦は始まりを告げようとしていた。
「問題はいかにリアに気付かれずに覗くかだけど……露天風呂じゃなくて室内だから結構難があるんだよね。覗き防止用に魔法結界を張ってるし。」
「だからこそ結界を張っている元を叩くんだよ♪ 多分私達の時と同じでここの旅館の人が見張ってる筈だから。そっと近付いて気絶させる。これが出来るのは司羽だけだよ。魔法だと気付かれるかも知れないしね。あくまで隠密行動だから。」
「完璧に犯罪者だな、これ……はぁ……。」
つまりは結界を張っている人に気付かれずに貧血に見せかけて気絶させる。その間、ムーシェは人払いの結界で目撃者が出ない様にする、その後リアに近付くのがミシュナとルーンと言うわけだ。まぁ完全に覗きと傷害を合わせてニ犯なのだが……今は気にするのは止めよう。
「……んじゃあ行ってくる。」
「ああ、結界は任せてくれ。」
司羽は風呂場前の角に背をもたれながら風呂場の前を見た。若い女性の様だが、どうやら内部を結界、外部を肉眼で警備しているらしい。司羽は視線がこちら側から外れたのを見計らい地を蹴った。
トンッ…バタッ。
「ざ、罪悪感が……。」
「はいはい、気にしないの。それじゃあ、その人起きない様に見ててね。起きたらもう一度意識刈り取っちゃってね?」
司羽は、俺がおかしいのか? 罪悪感を感じる俺がおかしいのか? と、自問自答しながらも言われた通りにその女性を見守る。それを見てミシュナとルーンは中に忍び込んだ。ルーンは妙に楽しんでいる様にも見える。
「ローブは此処にあるし、もう中に入ってるみたいだね……。」
「ええ、それじゃあ気配を消して行くわよ……これで私も犯罪者ね。」
そう言って、二人は浴場に繋がるドアに手を掛けて、少しだけ中を開いた。
「……あれ? いないわよ?」
「え、でももう結界張り出してたし、そんな筈は……。」
ルーンとミシュナが顔を見合わせて疑問の表情を浮かべる。するとミシュナの背中に手が伸びた。
トントン
「司羽、ちゃんと見ててって言ったでしょ? 誰か来たら大変じゃない。」
ミシュナは振り向かずに注意する。すると、手はルーンの方に。
トントン
「司羽、ダメだよ。リアは女の子なんだから……って……。」
ルーンが気付くのと同時にミシュナも気付き、同時に振り向いた。
『……覗きは、めっですよ?』
「リ、リア!?」
「気付かれてたのね……はぁ……。」
ルーンは驚き、ミシュナは溜息をついた。司羽も中の騒ぎに気付いた様で、心配になり入って来た様だ。
『もう、何でこんな事したんですか? ルーンにも素顔は見せられないのには理由があるって言った筈ですよ?』
「……ごめん……。」
ルーンがそう言って俯く。司羽の為とは言え、親友に対して裏切りに近い行為をしてしまった事について素直に反省した様だ。
「すまんリア、今回の責任者は俺だ。ルーンは俺が無理に協力させちまったんだ」
「ち、ちょっと司羽……!?」
『司羽さんが……ですか?』
ハッキリ言って自分の為に行動したのは自分だけだし、皆は協力してくれただけだ。司羽はそう思っていた
『司羽さん。私に説明して頂けますか?』
「本当に済まなかった……。」
『いえ、もう謝らないでください……。でも驚きました。そんな事が……そうですか、司羽さんはこの世界の人では………本当に、不思議な巡り会わせもあるのですね。』
リアは何かをしきりに頷き、そして考える様に俯いた。リアの筆談と言うのは、魔法で行われる物で、頭の中で口にしようと思った事が直接文章になるらしいのだが……。何だか、魔法に慣れた司羽にも、それが不思議な感じがした。
「リア……?」
『いえ、すいません。なんでもありません。ですが、私は銀髪ではありませんよ? なんなら確かめて見ますか?』
「良いのか?」
『はい、司羽さんもスッキリしないと思いますし…。私も司羽さんに協力したいですから。』
リアは頷くと司羽に身を寄せて少しだけローブの口を拡げた。司羽の眼には長く、そして水色に輝く髪が一瞬見えた。
『私は銀髪ではありません。でも、秘密……ですよ?』
「あ、ああ分かった。」
司羽はその時、リアが笑った様に思えた。顔が見えないので思えただけかも知れないが……。
「でもこれで降り出しよね。司羽、どうするつもり?」
ミシュナがそう言って司羽に視線を送ると、司羽より先に、ルーンが答えた。
「大丈夫だよ、見つかるまで私の家にいれば良いんだから♪ だから、ゆっくり捜そうよ♪」
「……ま、そうだな。急ぐ必要もないしな。」
「……まぁ司羽がそう言うなら私は何も言わないわ。」
司羽がそう言うとルーンは満足そうに頷き、ミシュナは溜息をつきながらそう言った。こうして、ムーシェ考案の覗き大作戦は無事(?)終了したのだった。