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異世界と絆な黙示録  作者: 八神
第一章~隠れんぼ~
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第10話:課外学習(前編)

「はーい、2列に並んでゲートに入ってくださーい。」


 ミリクはそういうと、観光案内の指導員の様な格好をして旗をパタパタと振りながらゲートへ入る様に指示をした。ゲートの向こうにはもう旅館が見えているが、これももしかしたらムーシェが言っていた召喚魔法と何か関係のある物なのかもしれない。まぁ、今はそれは良いとして。


「課外学習の時ですらルーンは寝ているんだなぁ。ルーンを背負って学校に来るのが日課になっちまってるよ。」


「そうねぇ、でもしょうがないんじゃないかしら? だって司羽の背中って実際普通の布団よりも寝やすいわよ? 寝た私が言うんだから間違いないわ。揺れないように気をつけてくれてるんでしょ? ふふふっ、そういう所は素直に評価出来るわね。」


 ミシュはそういって笑ったが、自分としては特にそんなつもりもなかったので、何とも言えない。無意識にと言うならそれもむず痒い感じがするし。まぁ、ルーンを無理矢理起こすのも可哀相だし、快適ならそれはそれで構わないけど。


「俺自身は俺の背中で眠れないからそんな事言われてもなぁ……。」


「何当たり前の事を言ってるのよ。」


 ミシュにそう言いながら、俺はリアの方に視線を送った。……さて、何とかしてこの課外学習の間に正体を確認しないとな。


「司羽……どうかしたの? 顔が強張ってるわよ?」


「……いや、なんでもないよ。」


 後ろにいるムーシェに視線を送って俺はそう言った。


「ふぅん? まぁ、良いけどね……。」


 ミシュは少し不満そうにそう言って会話を区切った。なんで不満そうなのかは分からないが、ミシュはいつもそうだと言えばそうなので、取り合えず追求は止めておく。


「では中に入ったら向こうの添乗員さんから部屋割りを聞いて、荷物を置いたら旅館前に集合してくださーい♪」










「はーい、皆さん集合しましたね?」


 ミリクはクラスの人数を確認して満足気に頷いた。うーん、こういう所は結構先生っぽいんだけど……。


「えーっと、今から自由時間に入るんですけれど。皆は程よくはっちゃけて下さいね? 皆様の中にはそんな人はいないとは思いますが、昔他校の不良に一人残らず焼きを入れて、土下座させた人がいたんですよねー。ねぇ、シノハ先生?」


「あっ、あれはミリクに言い寄って来る奴等が……。」


「ふふっ、それでは解散♪」


 シノハの言い訳を軽く流してミリクがパンッと手を鳴らす。何というか凄く嬉しそうだ。恐らくこの場で一番楽しそうなのはミリク先生だろう。まぁ、それはいいとして。


「ねぇ司羽、何処行く? 私達は何回も来てるから何処でも良いけど。」


『はい、御任せします。』


「そんなこと言われてもなぁ、行きたい所かぁ……。」


 そう言って司羽は地図を見た。基本遊園地と同じ様な感じだな。アトラクションも元の世界とそう変わらない。旅館に遊園地が一緒に建設されているのはなんか変な感じがするけど。


「ミシュ、なんか行きたい所ないのか?」


「はぁ、なんで私に振るのよ……それじゃあ、あのオバケ屋敷でも行く? 定番の一つだし、そこにあるし。」


 ミシュの視線の方を見ると確かにオバケ屋敷らしき建物がある。だが結構デカいな。……それにしてもオバケ屋敷か、うん、まぁ別に良いだろう。他の二人も平気見たいだし。


「んじゃあオバケ屋敷からにするか。でも二人ずつ見たいだな、カップル用か?」


「あ、僕司羽とが良い!!」


 すかさずルーンが立候補してくる。まぁ分かってはいたけどな。


「そうだな。それじゃあ……。」


「あ、司羽は私と入ってもらえない? ちょっと怖いのよねぇオバケ屋敷。」


 そう言って苦笑するミシュ。オバケ屋敷見たいな家に住んでるって言ってたのにな……。と言うか発案者が苦手ってなんかおかしいな……。


『ルーン、私と入りましょう♪』


「うーん、怖いなら仕方ないかな………うん、一緒に行こうリア♪」


 ミシュナの発言にフォローを出したリアの意見を素直に受け入れ。ルーンはクスッっと笑うと、リアを連れて中に入って行った。うーん、今日はなんだか妙に聞き分けが良いな。


「ミシュ、それじゃあ俺達も……。」


「………はぁ、やっと二人で話せるわ。全く、苦手な物を自分で推すわけないじゃない。分かってるんでしょ?」


 又しても俺の台詞を遮ってミシュは言った。まぁそうだろうとは思ってたけどな。でもミシュが改まって俺に話ってのも珍しいな。何かあったのか?


「別に大した事じゃないんだけどね。司羽、さっきからあのリアって子の事気にしすぎよ? どうしたの?」


「………うーん、やっぱりバレてたか……そんなにあからさまだったか?」


「まぁね。なんだか気になっちゃったのよ。」


 しかし、ミシュに気付かれるとは……まだまだだな。でも良く気付いたな、不審に思われないようにしてたのに。


「もしかして、惚れたとか言うんじゃないわよね? 顔も見てないし、喋った事もないのに、私なら有り得ないわ。司羽、貴方何か私に隠してないかしら?」


 ………鋭いな。うーん、どうしたもんかなぁ。あんまり言い触らしていい事じゃあないが、ムーシェに言ってミシュに言わないのは何だか区別してしまっている気がする。とはいえ友人なんて地球では殆ど出来たことなかったから良くは知らないが。


「別に、って言ってもミシュは信じないんだろうな……。、まぁそれならどうせだし、ミシュにも手伝ってもらうか。」


「………手伝う……? 何かあったの? それともやらかしたの?」


 ミシュナは首を傾げて、微笑する俺を見つめた。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「ふうん、それはまた壮大な話になったわね……。」


 取り敢えずミシュには全ての事を話した。ミシュは俄かに信じられないと言う顔をしたが、こちらの真剣な顔を見て納得した様だ。ムーシェといいミシュといい、素直な友人を持ったものだと思う。だが実際に魔法を日常的に使っているからそういう魔法の可能性くらいは考えたことあるんだろうな。そういう意味ではここがそういう世界で助かった。


「取り敢えずそういうわけで、まずは最低でもリアの髪の色を確認しないといけないわけだ。正直協力してくれるとかなり助かる。」


「……なるほどね。まぁ筋は通ってるし、協力してあげない事もないわ。興味深い話だとも思うし。」


 司羽の説明を聞き終えると、ミシュはクスッっと笑ってそう言った。ミシュが協力してくれるなら風呂の時にでも見てもらえれば良いし、かなり楽な作業になるだろう。これは話して良かったと言える。


「ああ、そう言ってくれると助かるよ。」


「ええ、これで借り一つね。ふふっ……。」


ゾクッ……。


「……お、おーい、ミシュナさーん……?」


「ほらほら、私達も早くオバケ屋敷に入るわよ。………さーて、この借りは何に使おうかしら?」


「……いや、あのな? ここは友人の為に人肌脱いで無償でとか言うところじゃないのか……?」


「あら? まだ何かするとは言ってないわ。無償かも知れないし、何かあるかも知れないし。」


 げんなりする司羽に、ミシュナはクスクスと笑いながらそう言った。……これは絶対何かやらされるな……と、そう考えて若干鬱モードに入りながら、司羽は溜息をついた。そしてその隣には、嬉しそうに考え事をするという珍しいミシュナが始終付いていたのだった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








『ルーン、どうかしたの? さっきからなんだかおかしいけど。』


 先にお化け屋敷に入ったリアは、同じく先に入ったルーンに、少し心配そうな雰囲気を漂わせながらそう書いた。それにも理由がある。司羽達から離れ、オバケ屋敷に入ってからルーンの表情は一転した。明らかに先程の明るい笑顔ではない、何か暗い、別の感情が体中から出ている。そんな雰囲気が感じられた。


「ねぇ、さっきの司羽さ。リアの事見てたよね? 気付いた?」


『……そうなの? 私は特に気がつかなかったけど。』


 リアは暗闇の中では魔法で文字を発光させているが、相変わらずの筆談だ。その文字を見て、ルーンは何かを考え込むように黙り込み、俯いた。


『……もしかしてルーンは、あの人の事………司羽さんの事が好きなの?』


「うん、好きだよ。当たり前だけど、私達はもう家族だもん。一緒に住んで、一緒にご飯食べて、一緒に寝て。」


 ルーンは拳を握り締めて言った。リアの眼でも分かる、ルーンは自分の感情を明らかに隠そうとはしていない。今のルーンはリアが見たことがないくらいに苛立っていた。


『ルーン?』


「ねぇリア。なんでそのローブ付けてるの?」


 ルーンの瞳からはもう幼く無邪気な色は消えていた。リアにはその理由が全く理解できなかったが、自分に関係があるかもくらいには考える事が出来た。だが、今更このローブが気になったという感じではない気がする。


『ごめんね、ルーン。それは言えないの。』


「リア……。」


 ルーンは哀しげに親友を見つめた。リアとしては意味がわからない事だらけだ。


『本当にどうしたの? 私はルーンの好きな人を取ったりしないわよ?』


「そうじゃないの……ごめんね、何でもない。だから、此所で話した事は忘れて。」


『ならいいんだけど……。でも、何かあったなら直ぐに相談してね?』


「………うん、分かった。」


 ルーンはそう言って笑った。リアにはその笑顔が酷く哀しげに見えて、何も言う事が出来なかった。

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