第101話:どうかこの想いが響きますように(四)
「うわぁ……昼時だし凄い人だな。」
「そうね。司羽、もう一度さっきの写真見せてもらえる?」
「ああ。結構目立つ外見してるから、視界に入ればすぐ分かるだろうな。」
あれから数分後、エリィとレイレンが戻ってきたので早速二手に分かれて捜索を開始した。司羽とミシュナは本来なら街の案内役としてバラける方が効率が良いのだが、ミシュナの『絶対に嫌』と言う一言によりその案は却下されて、結局ミシュナと司羽、エリィとレイレンと言う組み合わせで捜索に望んでいる。
エリィ達はホール会場の周辺の大道芸を片っ端から探し、司羽とミシュナは目星を付けた人気スポットを回ると言う作戦だ。……その作戦をミシュナの口から伝えた時のレイレンとエリィの表情は非常に印象的だった。もう好きにしてくれと顔に書いてあった気がする。まあ何にせよ、割と的を射た作戦であることは二人も納得してくれたのだが。
「ふーん、やっぱり綺麗な子ね。」
「ああ……確か、さっきのショーでも見たな。ファイヤーイリュージョンのキューとか言ってたっけ。レイレンさんとペアでマジシャンしてた子だな。」
「ああ、あの子か。でもちょっと雰囲気違うわね。舞台の上ではちょっとクールな感じだったのに。」
「まあ芸人なんだし、その辺りはキャラ作りなんじゃないのか? 確かに写真を見ると別人かと思うけど……。」
レイレンから貰った一枚の写真をミシュナの目の前へと持っていき二人で観察する。レイレンとエリィの話だと名前はキューと言うらしいが、他の手がかりはこの貰った写真くらいなものだ。
その写真には活溌そうな金髪ポニーテールの浴衣美女が写っている。お祭り好きと言っていたが、その写真の中でもタコ焼きらしき食べ物を美味しそうに食べていて、綿飴とヨーヨーをぶら下げた完全武装状態。確か舞台では煌びやかな真紅のロングドレスを着ていて真剣な眼差しで炎を操っていたはずだが、その面影は何処にもなかった。
しかし、ミシュナはそんな部分に対しては興味が惹かれないようで、別の一部分に注目して凝視しているようだった。
「むぅ……この子も胸大きいわね……どうなってるのよ、あの動物サーカス。」
「……………。」
「……何かしら?」
「い、いや別に。でも、そんなに気にしなくても良いんじゃないか? ミシュはミシュっていうか……そんなに気にすることか?」
「あら心外ね。誰の為だと思っているの?」
ジト目で写真を宿敵の様に睨んだミシュナに若干怯んだ司羽だったが、ミシュナのその返しは正直意外だった。誰の為かと聞かれれば……ミシュナの事だし、大体想像はつくのだが。
「……俺の為? って、そんな趣味とか話した事なんてなんだろ。さっきも言ったけど、俺は別に大きさとかで区別したりは……。」
「ああ……やっぱり男って無意識なのね。司羽が私の胸でもちゃんとドキドキしてくれてるのは分かったけど、それと理想とはまた別問題でしょ。男の『なんとかは気にしない』って言うの、女の子は完全に鵜呑みにはしないわよ。」
「な、なんだよそれ。」
「司羽、ユーリアさんとかトワの胸良く見てるじゃない。私もルーンも気付いてるわよ? 勿論あの娘達も。」
「え゛っ。」
思わず変な声が出てしまった。いやいや、確かにそういう風に言われたのは初めてではないけれども。
「まあ……確かにルーンにも言われた覚えがあるけど……。」
「……ああいう視線って、本人は気付かなくても見られてる方は良く分かるのよ。更に言えば、司羽の事を良く見てる私達には特に分かりやすいわ。私やルーンが家だと素足なのとか、スカートばっかり履いてるのも、司羽が私達の脚を良く見てるからなのよ? 出掛ける時に一々履き替えたりするのも結構面倒なんだから、感謝してよ?」
「そう言えば、寒くなってきても家ではストッキングとか履かないよな……。」
「ふふっ、好きな人に見られたいのは女の子なら皆一緒なのよ。」
「……………。」
ルーンが司羽の好みに合わせて服を選んでいるのはルーン自身からも仄めかされていたし、司羽も分かっていたのだが、まさかそこまで徹底していたとは……ミシュナにしても、今思うとかなり思い当たる節がある。それらは全て司羽の為だったと……。
「あら、本当に気付いてなかったのね。ルーンが司羽の趣味に合わせてる事くらい皆気付いてるわよ? あの子、外じゃ絶対肌の露出の多い格好しないもの。あんな風に無防備なのは家だけよ。」
「まあ、ルーンに関しては何度か言われたことがあるから、それなりに知ってたけど。ミシュナもそうだったのか……。」
「当たり前でしょ。貴方の好みだったらなんでも知ってるわよ。食べ物の好みも、女の子の好みも、どんなシチュエーションが好きなのかも。逆に苦手なものだって当然分かってるわ。」
「……なんか、凄いな。そこまで考えてくれてたなんて知らなかった。」
「それだけ司羽が好きって事よ。だから今のままで満足はしないわ。司羽が今の私の事を魅力的に思ってくれるのは嬉しいけど、伸び代がある内は妥協はしないのが女なの。……まあ、でも、今は今の私を可愛がって欲しいけど……ね?」
「……あ、ああ……。」
「ふふっ……。」
ウインクと共に甘えるような視線と声、これらも全て司羽の為に計算されつくしたミシュナの策略なのだろうか。だとしたら、本当にミシュナは司羽の事を知り尽くしているのだろう。もしそうではなかったとしても、司羽はそんなミシュナの魅力に抗うことが出来そうもない。
「さて、それはそれとして……司羽、どうするの?」
「どうするって……何が?」
「キューとか言う、その子の事よ。それとあの子達の劇団の事。何かあるんでしょう?」
「…………。」
何かあるんでしょう? と言われ、司羽は咄嗟に言葉が出なくなった。そう言ったミシュナの口調は、司羽と他愛のない世間話をする時となんら変わらず、司羽に何かカマを掛けている様子もない。その瞳は寧ろ、確信に満ちた色をしていた。
「……どういう意味だ?」
「隠さないで良いのよ。こんな事に首を突っ込むなんて、司羽らしくないもの。貴方が興味を持つのは近しい人が関係している事や、戦争や平和に関係する面白くもない事ばかりだもの。他人の会話に聞き耳を立ててまで、こんな人助けに無理矢理首を突っ込む程のお人好しじゃないわ。」
「面白くもないって……。それに俺さり気なく酷い事言われてないか?」
「事実でしょ? それに私、結構司羽に大事にされてる自覚あるわ。そんな私とのデートの時間なのに、他人の人助けに時間を割くなんて司羽らしくないじゃない。私の手を引いてまで話に入って行った時は驚いたわよ。」
そこまで言われて、司羽も観念した。やはりミシュナに隠し事は通用しないらしい。
「ああ、やっぱりあれ気付かれてたのか。なんか流れとノリで誤魔化せたかなと思ってたんだけど。」
「もう、当たり前でしょ。さっきも言ったけど、私は司羽にエスコートされてたんだから。あんなので誤魔化されないわよ。バカップルの演技は結構楽しかったけど、私はそこまで単純じゃないわ。」
「え、あれ演技だったのか?」
「…………ちょ……ちょっとだけ、演技じゃなかったけど……ああもう、それはいいでしょ!! ちょっとああいうの憧れてたの!! 司羽と人前でイチャイチャして見せびらかして見たかったのよっ!! ルーンのああいうの羨ましかったのっ!!」
「そ、そうだったのか。いや、うん、俺も結構楽しかったけどさ。」
「もう、話の腰を折らないのっ。」
羨ましかったと言われては、もうそれ以上追求する気にもならなかった。確かに、司羽の事が好きなのに目の前で毎日イチャイチャベタベタとされてはそういう欲求が溜まるのも無理はない。なんだが今更になって少し自重を覚えた方がいいのかとも反省してしまうが……きっと、ルーンの前では司羽のちっぽけな自制心などなんの意味も持たないだろうから無駄な気もする。
「それで、話を戻すけど。どうするの? そもそも何が司羽の興味を引いたの? まあ大体予想は付いてるけど。」
「ああ、さっきは適当に流してたし、正直キッカケでも無ければ本当に忘れちゃっても良いと思ってたんだけどさ。関われそうな事件が起きたみたいだったから、ついな。」
「あのペガちゃんやらって動物達の事かしら?」
「………なんだ、やっぱり分かってるのか。」
「私も気になったのは確かだもの。ただ、関わらないならそれでも良いと思ってただけ。あんな不思議な生物達の事よりも、司羽との時間の方が私には大事だもの。」
「それは……うん、悪かった。つい身体が動いちまって。」
「気にしないでいいわよ。だってもし私が嫌がったら、私を優先してくれたでしょ? 司羽はちゃんと私の気持ちを一番大事にしてくれたもの。」
「そうか。うん。」
ミシュナは全て分かっていたらしい。本当に最初から。……やはり、ミシュナ相手に余計な駆け引きや隠し事など、野暮なのだろう。全部今更の事だ。
「あの羽根の生えた馬やら、全身炎の生き物って本物の神話生物だよな。少なくとも俺は元居た世界で聞いた事があるんだが、見るのは初めてだ。この世界では珍しいで済むのか? それとも此処でも神話上の生物なのか?」
「少なくともエーラで普通に生息している生物ではないわね。一応作り物の物語の中に登場する程度には知名度がある生き物だけど、それでも現実に存在しているなんて誰も信じちゃいないわ。あの馬に生えた羽根も皆作り物だと思っているでしょうし、あの変幻自在な火の塊が生き物だと分かった客は私達だけでしょうね。まあ、気術士でもないと分かる筈もないけど。」
「……やっぱりな。だとすると、俺達は本物の神話生物のサーカスを見ちまったのか。あの料金じゃ安過ぎるくらいだな。」
「出してもらってなんだけど、もうちょっと払うべきだったかも知れないわね、ふふっ。」
「ああ、もう二度と見る事も出来ないだろうしな。こんなのは一生に一度あれば幸運だろう。あいつらも、二度同じ場所に来るような連中じゃないと聞いてるしな。」
「………あら、聞いてるって事は、知ってるの? あの人達の事。」
「知ってるって程じゃない。昔、聞いた事があるだけだ。」
そんな司羽の言葉にもミシュナは驚いた様子を見せなかった。しかし、その逆にミシュナの次の言葉によって司羽は驚かされることになる。
「世界を渡る奇術劇団。ペガサスやフェニックス、龍を始めとして、様々な生き物を連れて次元の壁を越える、世界線なきサーカス。次元の壁を越える事を世界に許可された、とても稀有な、笑顔を届ける旅人達……でしょ?」
「……なんでミシュがそれを知ってるんだ?」
「知ってるって程じゃないわ。私も昔、聞いた事があるだけよ。」
「聞いた? 誰に?」
「私の母親よ。無駄に色々教えてくれる、お婆ちゃんの知恵袋みたいな人なの。」
「……そうなのか、こっちじゃ割と有名な話なのかな。」
「ふふっ、そうかも知れないわね。」
司羽の驚いた顔に対して、ミシュナはクスクスと笑う。ミシュナは司羽の反応が、なんだかとてもおかしくて、愛おしく感じた。この話を聞いたのは、ずっと昔の事になる。きっと、司羽も同じくらい昔に聞いたのだろう。ミシュナは司羽から聞かなくても、その時の事がはっきりと分かる。
「司羽は、あの人達がそうだって思うの?」
「ああ、あのエリィとレイレンという女性。明らかにエーラの人間とは思えない。なんらかの強い力を持っている様だが、この世界とは異質なものだ。このキューって女性や、さっきのスタッフ達はそもそも人間じゃないな。恐らく、俺達が想像上の生き物だとしていた生物なんだろう。人の形をしているだけだ。」
「なるほどね。確かにちょっとおかしいものね。」
「……だから、なんで胸を見てるんだ?」
「トワと言いさっきの子達と言い、人間じゃないと大きくなるのかしら。」
「いや、だからレイレンさんとエリィさんは人間……いや、なんでもない。」
もうこれ以上話が進まなくなるのも困るし、何よりこの話題は危険だ。もうそういう事にしてさっさと話を戻したほうが賢明だろう。と言うか、ミシュナの眼がちょっと怖い。司羽の為とか言いつつ、かなり私怨的な部分があるように感じるのは気のせいなのだろうか。
「えー、その、つまりだな。」
「あの子達が、次元を渡るノウハウを……司羽が向こう側に帰れるかも知れない技術を持ってるかもって事かしら?」
「察しがいいな、そういう事だ。あいつらが本当に次元を越える旅人ならって前提だが。」
「なるほどね。確かに、そういう意味なら私も気になるけど……実際にそんな技術、簡単に教えてくれると思う?」
「いいや、思わないね。こっちの人となるべく関わらないようにしてるって言ってたし、かなり警戒心の強い人達みたいだからな。」
先程のレイレンと言う女性の言葉からもそれは読み取れる。こちらの人間の手をなるべく借りずに自分達だけで解決する。その難しさを説明してもなお、彼女は考え方を変えなかった。そういう制約の下で活動しているからなのか、単純に自分達以外の存在に信用がないのかは分からないが、少なくとも簡単に情報を漏らすような者達ではないだろう。
「それじゃあ、どうするの?」
「別にどうもしないさ。」
「どうもしないって……次元を越えるノウハウが欲しいんじゃないの?」
そう言ったミシュナの瞳は、司羽の表情を探るような色をしていた。ルーンといいミシュナといい、こういう時の彼女達には何故か嘘や誤魔化しが通らない。その事を話したら、女の勘、もしくは愛の力だと笑われたが……本当にそれだけなのだろうかと勘ぐってしまう程に筒抜けになるので、もし浮気でもしようものなら即日バレて泣かれることになるだろう。
「確かにあったら便利かもな。気軽に里帰りも出来るし。」
「何それ、やっぱり故郷が恋しいの?」
「さっきも言ったけど、別に執着がある訳じゃない。確かに数日くらいは戻りたい気持ちがあるのは確かだけど、こっちにまた戻れる保証がないんじゃ行こうと思えないくらいには、こっちの世界の方が大事になってるよ。……って、この前そんな事を考えてたせいで、ルーンがまた次元魔法で星を渡る研究を再開しちまったみたいなんだよなあ。別に俺はそこまでしてくれなくても良いのに。」
「なんだ、やっぱりルーンの為なのね。ヒントくらい見つけられたら御の字って所かしら?」
「そんな所だ。まあ何も見付からなくても別に構いはしないけどな。ルーンも無理のない範囲でやってるし、俺に心配掛けないように目の届く範囲でしか実験しないし。」
「はいはい、相変わらずベッタリね。まあ、あの子なりに思うところがあってやってるんでしょうけど。」
「あ、悪い。」
「え? ……ああ、別に気にし過ぎないで良いわ。そうやって気遣ってくれるのは女の子として凄く嬉しいけどね。」
ついついデート中にルーンの事を話題に出してしまったが、特別ミシュナからマナー違反についての言及はなかった。それよりもなんだか先程から少しずつ機嫌が良くなっている気がする。勿論今日はずっと御機嫌にも見えるのだが……。
「まあそれはそれとして、後は単純な興味だな。昔に聞いた不思議な劇団が目の前に現れたんだ、ちょっとどんな奴らなのか話してみたくなるだろ?」
「ふふっ、そうね。なんだか思ってたのとは随分違って、可愛らしい面々だったけど。もっとイロモノっぽい集団を想像してたもの。」
「ああー、それは確かに。見た目はただのマジシャンやらピエロだもんな。……衣装は露出が多かったけどさ。」
「ふーん、司羽は私達が着るんじゃなきゃ、ああいうのもアリなの?」
「何故そうなる。最初から見えたんじゃ意味が……いや、なんでもない。」
「ふふっ、あははははっ!! 分かったわ、ちゃんと司羽の楽しみは残して置くわね♪」
「……………。」
そしてこれも、どうせルーンへと筒抜けになるのだろう。女子のネットワークというのは他人のプライバシーなどあってないようなものなのだから。特にルーンとミシュナの間では司羽の情報は共有情報になっている様だし。
「さてと、そういう事なら捜索の方は心配なさそうね。」
「ん? なんでそう思うんだ?」
「単純に信頼してるのよ。司羽の事だから、奇術の最中にでもそのキューって子の気の流れも記憶したんでしょ? それさえ分かれば、捜索は簡単よ。この大人数は私なら無理だけど、司羽なら見付けられるんでしょうし。」
「……本当に何度も驚かされるな。適当に見て回ったらついでに拾おうくらいの気持ちで考えてたんだけどさ。そう遠くに居るわけじゃないし。」
「司羽の考えなら分かってるって言ったでしょ? こんな面倒事に首を突っ込む時点で、ちゃんと保険を掛けておく筈だもの。じゃないと、私とのデートが女の子の迷子探しで終わっちゃうものね?」
「……まあ、そういう事だな。俺は別にお人好しじゃない、出来るからやると言っただけだ。」
「ええ、分かってるわ。それでも充分優しくて素敵だと思うけどね。司羽じゃなかったらそんな風に思わなかったでしょうけど。」
「あははっ、なんだそれ、結局はなんでも良いんじゃないのか?」
「ふふっ、そうね。司羽がやってたらなんでも格好よく見えちゃうんだもの、仕方ないでしょ?」
本当に、何処まで司羽の事を理解していると言うのか。心の内を読まれていると言われても納得してしまうくらいにミシュナの理解は完璧だ。だが何故かそれが嫌にならないのは、ミシュナが特別だからなのだろうか。ルーンと同じように自分を好いて居てくれるからなのだろうか。
「じゃあ、当初のプラン通り行きましょう? 迷子の子を追いかけながらのまったりデートも良いものよね。あ、でもまずはお腹が空いたわ。何か買って食べましょ。」
「ああ、昼時にちょうどいい時間だもんな。うーん、何処も混んでるけど、食べたいものあるか?」
「あーんって出来るのが良いわ。」
「それは判断が難しいな……。」
取り敢えず方針は決まって、まずは昼食に……と考えたのは良いものの、ミシュナ姫の第一希望は品目や味ではなく食べ方であった。もう此処まで来たら『あーんっ』くらいでは尻込みはしないが、微妙に範囲が広くて難しい。
「うーん、祭りといえば焼きソバ、お好み焼き……あ、タコ焼きって定番があったな。こっちでの定番なんて知らないけど。」
「そうねー……あ、タコ焼きがあそこにあるわね、私あれが良い。凄い混んでるけど。」
「確かに混んでるな………よし。」
「司羽、ダメよ。皆並んでるんだから、無理矢理人を操っちゃダメ。一緒に並びましょう?」
「……何故分かったんだ……。」
邪魔なら全員退かせば良いじゃないかと根本的かつ原始的な解決方法に行き着いた司羽は速攻でミシュナに嗜められてしまった。悪戯っぽく笑うミシュナの勘の鋭さはもはや超能力レベルだと思う。……もしくは司羽が実は凄く分かり易いだけなのかも知れないが。何にせよ……。
「これも、愛の力なのか?」
「ええ、愛の力よ。でもちょっと使い過ぎちゃったから、いっぱい補給させてね?」
「……あーんで補給出来るのか?」
「ぎゅってしながらね。直ぐに満タンになるわ。司羽に触れてないと5分でなくなるけど。」
「燃費悪いなあ、それ。日常生活じゃ使えないな。」
「ふふふっ、それは司羽次第じゃないかしら? ほら、並びましょ。こういうのもデートって感じするでしょう?」
ベタベタいちゃいちゃと燃費の悪い愛の力を補給しながら、ズラッと並んだタコ焼き屋の屋台に並ぶこの感覚。これは確かにデートっぽい、楽しい。ミシュナの言う通りズルはいけないなあと思う司羽であった。